【35話】ミア、日傘をプロデュース!?
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二週間後。
学校が終わると、ミアは女性記者と一緒に銀座へ向かっていた。
「今日はタカゲンに行くんだよね?」
「ええ。約束の日だからね」
「楽しみ~!」
しばらく歩くと、見覚えのある店が見えてくる。
「あっ、着いた!」
ミアが声を上げる。
二人は店の前で足を止めた。
「タカゲンだね」
「ええ。約束の日ね」
女性記者が頷く。
ミアは店の看板を見上げると、少し嬉しそうに笑った。
「どんな日傘ができたのかな?」
「楽しみね」
二人は店の扉を開けた。
「こんにちはー!」
店内にミアの明るい声が響く。
すると、まるで二人が来るのを待っていたかのように、店の奥から主人が姿を現した。
「いらっしゃいませ……いや、お待ちしていました」
「こんにちは!」
ミアが笑顔で挨拶する。
主人は頷くと、奥を指差した。
「約束の日傘が完成しました」
「ほんと!?」
ミアの目が輝く。
「ぜひ、見てください」
主人がそう言って奥へ向かう。
ミアと女性記者も、その後を追った。
店の奥へ進むと、そこには一本の日傘が置かれていた。
前回見たものとは、どこか雰囲気が違う。
主人が日傘を手に取ると、ミアへ差し出した。
「どうぞ。手に取って、見てみてください」
「うん!」
ミアは嬉しそうに日傘を受け取った。
「……あれ?」
ミアは日傘を持ったまま、首を傾げる。
「これ……」
「どうです?」
主人が尋ねる。
ミアは日傘を持ち直した。
「軽い!」
思わず声が弾む。
女性記者もミアの様子を見ながら、手帳を取り出した。
「前のものと比べて、どうかしら?」
「全然違うよ!」
ミアは驚いたように日傘を見つめる。
「これなら、ずっと持って歩いても疲れなさそう!」
主人は満足そうに頷いた。
「そうでしょう」
そして、日傘を開くようミアに促した。
「では、開いてみてください」
「うん!」
ミアは日傘を開いた。
そこには、前回とは違う工夫が施されていた。
「わぁ……!」
ミアの目が輝いた。
日傘の生地は、全面がレースになっていた。
しかも、ただのレースではない。
目の細かな花柄のレースが、傘いっぱいに施されている。
「めっちゃ可愛い!」
ミアは日傘を見上げる。
色は、鮮やかなピンクと上品な藤色。
二つの色が組み合わされた、華やかなコントラストになっていた。
「ピンクと藤色なんだ!」
ミアは傘を少し傾けながら、いろいろな角度から眺める。
「これ、めっちゃおしゃれじゃん!」
女性記者も思わず日傘を見上げた。
「前回とは、ずいぶん印象が変わったわね」
主人が頷く。
「ええ。ミアさんの言葉を参考に、軽さだけでなく、見た目にもこだわりました」
ミアは嬉しそうに笑った。
「なんか、私が言ったことが本当に日傘になったみたい!」
「その通りですよ」
主人は微笑んだ。
そこで主人が、少し期待するような表情でミアを見る。
「さて……」
主人が尋ねる。
「星はいくつかな?」
ミアは日傘を見上げたまま、少し考える。
「うーん……」
ピンクと藤色の花柄レースを眺める。
そして、ゆっくりと笑った。
「これは……」
女性記者も、ミアの答えを待つように手帳を構えた。
「★★★★★!」
ミアは満面の笑みで答えた。
主人は嬉しそうに頷くと、日傘を指差しながら説明を始めた。
「ありがとうございます。実は、この日傘にはいくつか工夫を施しました」
「工夫?」
ミアが興味深そうに聞き返す。
主人は柄の部分を持ち上げる。
「まず、心棒の中を空洞にしました。これだけでも、以前よりかなり軽くなっています」
「へぇ~!」
「そして、傘の骨には鋼鉄を使っています」
ミアは日傘を見つめる。
「鋼鉄って、重そうだけど?」
「ええ。しかし、強度があるので、骨を細くすることができます。結果として、全体を軽くできました」
「なるほど!」
主人はさらに、全面に施された花柄のレースを指差した。
「そして、こちらです」
「レース!」
「はい。目の細かなレースなので、日差しを遮りながら、風もある程度通します」
ミアは傘の内側を見上げる。
「だから、涼しく感じるんだ!」
「その通りです」
主人は満足そうに頷いた。
「前回、ミアさんがおっしゃった『レースなら風が通るのではないか』という言葉から、いろいろ試してみました」
「へぇ~!」
ミアは改めて日傘を見つめた。
「すごい……ちゃんと私の言ったことが入ってる!」
女性記者は、その様子を手帳に書き留めながら微笑んでいた。
一通り説明を終えると、主人は日傘をミアに差し出した。
「では、こちらを」
「ん?」
ミアが首を傾げる。
「この日傘、差し上げます」
「えっ!?」
ミアは驚いて目を丸くした。
「私に?」
「はい。今回の試作品です」
主人は笑顔で頷く。
「ミアさんには、いろいろと貴重な意見をいただきましたから。そのお礼です」
「えー! いいの!?」
ミアは日傘を両手で受け取る。
「やったー!」
嬉しそうに日傘を眺める。
ピンクと藤色の花柄レースが、店内の明かりを受けて可愛らしく見えた。
「めっちゃ可愛い! 大事に使うね!」
「ぜひ、使ってみてください」
女性記者も微笑みながら言った。
「これなら記事の写真にもぴったりね」
「ほんと!?」
ミアは日傘を胸元に抱える。
そして、ミアは少し考えると、ふと思いついたように言った。
「そうだ!」
主人がミアを見る。
「今度は、折りたたみの傘があったら便利だね!」
「折りたたみ?」
「うん!」
ミアは頷く。
「小さく折りたためる傘なら、鞄に入れて持ち歩けるじゃん」
「なるほど……」
「急に雨が降ってきても、傘を持ってたら安心でしょ?」
主人は腕を組み、考え込む。
「小さく収納できる雨傘……」
ミアは笑顔で言った。
「絶対便利だと思うよ!」
主人は苦笑しながら、
「また無理難題を言いますね」
「えー、そう?」
ミアは首を傾げる。
主人は困ったように笑いながら、腕を組む。
「傘を小さく折りたたむ……簡単なことではありませんよ」
「でも、できたら便利じゃん!」
「確かに……」
主人はそう呟くと、ふと笑みを浮かべた。
「まんざらでもない話ですな」
「でしょ?」
ミアも嬉しそうに笑った。
二人は主人に挨拶をすると、店を後にした。
「今日はありがとうございました」
女性記者が頭を下げる。
「こちらこそ。ぜひ、記事をよろしくお願いします」
主人も笑顔で見送った。
「じゃあ、またね!」
ミアも手を振る。
二人は銀座の街を歩きながら、今日のことを話していた。
「素敵な日傘をもらえてよかったわね」
「うん! めっちゃ気に入った!」
ミアは嬉しそうに日傘を眺める。
しばらく歩いたところで、女性記者が足を止めた。
「私は新聞社に戻らないといけないから、ここで失礼するわね」
「うん。今日はありがと!」
「こちらこそ。記事ができたら、また知らせるわ」
「楽しみにしてる!」
二人はそこで別れた。
ミアは一人で家へ向かって歩き出す。
ミアが家に着くと、玄関の前に祖母が立っていた。
「あら、お帰りなさい」
「ただいまー!」
ミアは笑顔で駆け寄る。
祖母はミアの手に持っているものに気づいた。
「あら、それは?」
「これ? 日傘!」
ミアは嬉しそうに日傘を広げて見せる。
「今日ね、お店の人からもらったの!」
祖母は日傘を見つめる。
「まあ、素敵な日傘ね」
「でしょ?」
ミアは得意そうに笑った。
「しかもね、これ、私の意見を聞いて作り直したんだよ!」
「まあ……」
祖母は驚いたように目を丸くする。
「ミアが?」
「うん!」
ミアは嬉しそうに頷いた。
そして祖母の手を見ながら、ふと何かを思い出したように言った。
「そうだ、おばあちゃん」
「なあに?」
「持ってみる?」
ミアは日傘を祖母に差し出した。
祖母は日傘を受け取ると、手に持ってみた。
「あら……軽いわね」
「でしょ!」
ミアは嬉しそうに笑う。
「前のはちょっと重かったから、お店の人が軽くしてくれたんだよ」
祖母は日傘を開いて、花柄のレースを眺める。
「まあ、綺麗ね。ピンクと藤色だなんて」
「気に入った?」
「ええ、とっても」
するとミアは、にっこり笑った。
「じゃあ、それ、おばあちゃんにプレゼント!」
「えっ?」
祖母が驚いてミアを見る。
「いいのかい?」
「うん!」
ミアは頷く。
「おばあちゃんに使ってほしいの。軽いから、きっと使いやすいよ!」
祖母は日傘を大切そうに握る。
「まあ……ありがとう、ミア」
「えへへ。いっぱい使ってね!」
祖母は嬉しそうに微笑んだ。
ミアは布団に入り、今日の出来事を思い返していた。
日傘をもらったこと。
そして、それを祖母にプレゼントしたこと。
「喜んでくれてよかったな~」
ミアは小さく笑う。
しばらくすると、ふと別のことを思いついた。
「そういえば……」
ミアは天井を見つめる。
「傘にアクセとか付けたら、もっと映えそうだな……」
そんなことを考えながら、ミアは目を閉じた。
「……明日、考えてみよ」
やがて、ミアは深い眠りについた。
今回登場したレースの日傘は、創作だけではありません。
大正時代には、レースや刺繍を施した婦人用の日傘が実際に作られていました。大正10年頃には「レース加工日傘」という記録も残っています。
今回のピンクと藤色の花柄レースは、当時の日傘を参考にした創作です。
ちなみに、ミアが思いついた「折りたたみ傘」も、発想自体は古く、日本では明治時代に折りたたみ式の傘が作られていました。
現代では当たり前のものも、こうして歴史をたどると面白いですね(笑)。




