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ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


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30/52

【30話】デパートに動物園!?

なんとか、ハイカラも30話まで作れました。皆さんのお陰です。

両親が外国へ戻るまで、あと数日。

その日の朝――。

朝食を終えたミアが居間でくつろいでいると、母親が声をかけた。

「ミア、今日は私たちと一緒に出かけない?」

「え?」

ミアが顔を上げる。

「どこ行くの?」

「銀座へ行きましょう」

「銀座?」

「ええ。あなたに新しい服を買ってあげたいの」

母親が微笑む。

「外国へ戻る前に、何か欲しいものがあれば買ってあげようと思って」

父親も頷いた。

「せっかくだから、ミアの好きなものを選ぶといい」

「本当に!?」

ミアの顔がぱっと明るくなる。

「うん。何でもいいの?」

「何でも、というわけにはいかないけどね」

父親が苦笑する。

「でも、遠慮しなくていいよ」

「やったー!」

ミアは嬉しそうに立ち上がった。

「じゃあ、どこのお店に行くの?」

母親が答える。

「銀座の松坂屋よ」

「松坂屋……」

ミアは少し考える。

「どんなところ?」

「銀座にある大きな百貨店よ」

父親が答える。

「洋服だけじゃなくて、いろいろなものが売っているそうだ」

「へぇー!」

ミアの目が輝く。

「大きなデパートなんだ!」

「ええ。きっとミアも楽しめると思うわ」

「楽しみ!」

ミアはさっそく出かける準備を始めた。

「どんな服にしようかな~」

そんなミアを見て、両親は顔を見合わせて微笑んだ。


ミアは出かける準備を終えると、玄関へ駆けてきた。

「お父さん、お母さん、まだー?」

「はいはい、今行きますよ」

母親が笑いながら玄関へ向かう。

「そんなに急がなくても大丈夫だよ」

父親も続いて外へ出る。

「だって、銀座のデパートなんでしょ?」

ミアは待ちきれない様子だった。

「どんな服があるのかなぁ」

「気に入ったものが見つかるといいわね」

「うん!」

三人は屋敷を出ると、銀座へ向かった。

街を歩いていると、ミアは周囲を眺めながら楽しそうにしている。

人力車が通りを走り、その脇を洋装の人々や着物姿の女性たちが歩いている。

「銀座って、やっぱり人が多いね」

「東京でも特に賑やかな場所だからな」

父親が答える。

「お店もたくさんあるし、外国の品物も多いそうよ」

母親も説明する。

「へぇー。じゃあ、珍しいものもいっぱいありそう!」

ミアは目を輝かせる。

しばらくすると、通りの向こうに大きな建物が見えてきた。

「あっ!」

ミアが足を止める。

「もしかして、あれ?」

父親が頷いた。

「ああ。あれが松坂屋だ」

「うわぁ……!」

ミアは建物を見上げた。

大きな建物に、たくさんの窓。

入口には多くの人が出入りしている。

「わあ、大きい!」

ミアは思わず呟いた。

母親が笑う。

「さあ、行きましょう」

「うん!」

ミアは両親の間を歩きながら、松坂屋の入口へ向かった。

そして――。

ミアにとって初めての、銀座の大きなデパートへ足を踏み入れるのだった。

松坂屋の店内に入ると、ミアは思わず目を輝かせた。

「うわぁ……!」

店内には、たくさんの商品が並んでいる。

洋服を扱う売り場には、色とりどりのワンピースや洋装が並べられていた。

「こんなにいっぱいあるんだ……」

ミアは棚やハンガーに並ぶ服を一着ずつ眺めていく。

「ミア、気に入ったものがあったら言ってね」

母親が声をかける。

「うん!」

ミアは楽しそうに売り場を歩き回った。

「これはちょっと大人っぽいかな……」

一着を手に取って眺める。

「こっちは……かわいいけど、ちょっと地味かも」

そして、別の服へ。

しばらく物色していたミアの足が、ふと止まった。

「……あっ」

目の前に、一着のワンピースがあった。

淡い色合いの生地に、胸元と袖に可愛らしい飾りが施されている。

派手すぎないのに、どこか華やか。

「かわいい……」

ミアはそっと手に取った。

「これ、すごく可愛い!」

母親が隣から覗き込む。

「まあ、本当ね」

「ねえ、お母さん。これ着てみてもいい?」

「もちろんよ」

ミアは嬉しそうに店員へ声をかけた。

「すみませーん。これ、試着してもいいですか?」

「はい、どうぞ」

ミアはワンピースを抱えて、試着室へ向かった。

父親はその様子を微笑みながら見ていた。

「気に入ったものが見つかったようだな」

「ええ」

母親も嬉しそうに頷く。

しばらくして――。

試着室のカーテンが開いた。

「どう?」

ミアが少し照れながら姿を見せる。

母親は思わず笑顔になった。

「まあ……よく似合ってるわ」

「本当?」

「ええ。とても可愛いわよ」

父親も頷く。

「うん。ミアによく似合っている」

「じゃあ、これにする!」

ミアは鏡の前でくるりと一回転した。

ワンピースの裾がふわりと揺れる。

「えへへ……」

その顔は、とても嬉しそうだった。

ワンピースを買うことが決まり、ミアは着ていた服に戻るため試着室へ向かおうとした。

そのとき――。

「……あっ」

ふと、隣の売り場に並んでいる商品が目に入った。

靴売場だった。

その中に、ミアの目を引くものがあった。

ブーツ。

「かわいい……」

ミアは思わず足を止める。

少し高さのある靴に、細かな飾りが施されている。

ミアはショーケースの前まで近づき、じっと眺めた。

「これ、いいなぁ……」

すると、父親がミアの視線に気づいた。

「欲しいのか?」

「え?」

ミアは一瞬、ブーツを見つめる。

そして、少しだけ迷ったあと、首を横に振った。

「ううん。これは我慢する」

「どうして?」

父親が不思議そうに尋ねる。

ミアはブーツを見ながら答えた。

「だって、ちょっと高そうだし」

「それくらいなら――」

「違うの」

ミアは笑った。

「これは私のお金で買いたいの」

「ミアのお金?」

「うん」

ミアは胸を張る。

「喫茶店のお手伝いでもらったお給料で買うの」

父親は少し驚いた顔をした。

「自分で働いて貯めたお金で?」

「そう!」

ミアは嬉しそうに頷く。

「自分で働いて買ったほうが、絶対大事にするでしょ?」

母親が微笑む。

「そうね……」

父親もブーツを見つめ、それからミアを見る。

「そうか」

そして、優しく笑った。

「じゃあ、そのブーツはミアが自分で買えるようになるまで取っておこう」

「うん!」

ミアはもう一度ブーツを眺めた。

「よーし。お仕事頑張らなきゃ!」

そう言って、ミアは試着室へ戻っていった。

その後ろ姿を見ながら、父親は小さく笑った。

「……本当に変わったな」

母親も頷く。

「ええ」

二人の顔には、娘の成長を嬉しく思う気持ちが浮かんでいた。

服を包んでもらい、買い物を終えると、ミアは両親と一緒に売り場を離れた。

「ミア、買いたいものはもういいのか?」

父親が尋ねる。

「うん! ワンピース買ってもらったし!」

ミアは嬉しそうに紙袋を抱えている。

すると父親が、ふと思い出したように言った。

「それじゃあ、せっかくだから屋上へ行ってみようか」

「屋上?」

ミアは首を傾げる。

「ああ。デパートの屋上に行けるそうだ」

「えー……」

ミアは少し困ったような顔をした。

「屋上なんか行っても、つまらなくない?」

「そうか?」

「だって、屋上でしょ?」

ミアは紙袋を抱え直す。

「何もないんじゃないの?」

父親は苦笑する。

「まあ、行ってみれば分かるさ」

「うーん……」

ミアはあまり乗り気ではない。

しかし、母親が楽しそうに笑った。

「せっかくだもの。少しだけ見てみましょうよ」

「お母さんも行くの?」

「ええ」

「じゃあ、行ってみようかな」

ミアは渋々頷いた。

「でも、ほんとに何もなかったらすぐ戻ろうね?」

「ふふっ、そうしましょう」

三人は屋上へ向かうため、エレベーターへと歩き始めた。

エレベーターが屋上に到着する。

チン――。

扉が開いた。

「ほら、着いたぞ」

父親に促され、ミアはエレベーターから降りる。

「……」

辺りを見回す。

屋上だから、当然何もないと思っていた。

ところが――。

「……え?」

ミアの足が止まった。

「ええっ!?」

屋上には、いくつもの檻が並んでいる。

そして、その中には動物がいた。

「動物!?」

ミアは目を丸くする。

「なんで屋上に動物がいるの!?」

「ははは。驚いたか?」

父親が笑う。

「どうやら、ここには動物もいるらしいぞ」

「動物もいるらしいぞって……!」

ミアは檻の中を覗き込む。

小さな動物が動き回っている。

さらに奥から――。

「ガオォォ……!」

低い唸り声が響いた。

「えっ……!」

ミアはびっくりして振り返る。

「今の何!?」

そして、その声のした方向を見る。

「……ライオン!?」

大きな動物が檻の中を歩いている。

「うそ……」

ミアは思わず呟いた。

前世の記憶が頭をよぎる。

令和のデパートの屋上といえば、カフェだったり、庭園だったりする。

まさか、屋上に本物の動物がいるなんて――。

「すご……」

ミアの顔が、みるみるうちに笑顔になっていく。

「お父さん! お母さん! 見て!」

「ふふっ。そんなに驚くものなの?」

母親が笑う。

「だって、屋上に動物がいるんだよ!?」

ミアは興奮したように答える。

「こんなの、初めて見た!」

「それなら、ゆっくり見ていきましょうか」

「うん!」

ミアは嬉しそうに頷く。

「屋上なんてつまらないと思ってたけど……」

ミアは目の前の動物たちを見つめる。

「全然つまらなくないじゃん!」

ミアはすっかり屋上の動物たちに夢中になっていた。

「かわいい~!」

檻の中の動物を眺めたり、餌を食べる姿を見たりしているうちに、時間がどんどん過ぎていく。

「ミア、あっちにも何かあるぞ」

父親が指差す。

「ん?」

そこには、子供たちが遊んでいる遊戯場があった。

「わぁ!」

ミアの目が輝く。

「遊べるの!?」

「そうみたいね」

母親が微笑む。

ミアはさっそく遊戯場へ向かった。

簡単な遊具で遊んだり、他の子供たちと一緒になって楽しんだりする。

「お父さん、見てー!」

「おお、気をつけるんだぞ」

「大丈夫だって!」

ミアは笑いながら遊び続ける。

動物を見て、遊戯で遊んで――。

気がつけば、ミアは汗ばむほど夢中になっていた。

「ふぅ……!」

ベンチに腰を下ろしたミアは、少し息を弾ませながら屋上を見渡した。

「楽しかったぁ……」

隣に座った母親が笑う。

「そんなに楽しかった?」

「うん!」

ミアは満面の笑みを浮かべた。

「服も買ってもらえたし、動物も見られたし、遊べたし……」

そして父親を見る。

「今日、最高!」

父親はそんな娘を見て、嬉しそうに笑った。

「それなら、連れてきた甲斐があったな」

ミアは空を見上げた。

銀座の街並みを見下ろす屋上。

その景色を眺めながら、ミアは今日という日を心から楽しんでいた。


松坂屋を出る頃には、空が少し赤く染まり始めていた。

三人は銀座の街を並んで歩き、帰路につく。

ミアは今日買ってもらったワンピースの入った紙袋を、大事そうに抱えていた。

「今日は楽しかったなぁ」

「そうね」

母親も嬉しそうに笑う。

しばらく歩いたところで、父親がふと口を開いた。

「ミア」

「ん?」

「お前は……寂しくないのか?」

「え?」

ミアが父親を見る。

「私たちが外国へ戻ったら、一人になってしまうだろう?」

父親は少し心配そうな顔をしていた。

「昔のお前なら、私たちと離れるのを嫌がったんじゃないかと思ってな」

ミアは少し考えた。

そして、笑った。

「大丈夫だよ」

「本当に?」

「うん!」

ミアは元気よく頷く。

「だって、おばあちゃんがいるもん」

母親が優しく微笑む。

「それにね――」

ミアは少し得意そうに続けた。

「友達もいるから!」

「友達?」

「うん。琴音ちゃんもいるし、学校には他にも友達がいるし」

ミアは楽しそうに話す。

「それに、喫茶店のおじさんもいるし、毎日けっこう楽しいよ」

父親は黙ってミアの横顔を見つめた。

「だから大丈夫」

ミアは笑顔で言った。

「お父さんとお母さんが外国にいても、ちゃんと元気にやっていけるよ」

母親は少し目を細めた。

「……そう」

父親も、ゆっくり頷く。

「そうか」

そして、少し寂しそうに笑った。

「それなら、私たちも安心して帰れるな」

「うん!」

ミアは大きく頷いた。

「だから、お仕事頑張ってね!」

「ミアもな」

「もちろん!」

夕暮れの銀座を、三人は並んで歩いていった。

ミアの手には、新しいワンピース。

そしてその胸の中には――。

この街で見つけた、大切な居場所があった。


今回は、ミアが両親と一緒に銀座の松坂屋へ出かけるお話でした。

大正時代の百貨店は、現在のデパートとは少し違った楽しみ方ができました。

松坂屋銀座店では、大正14年(1925年)に屋上動物園が開設され、ライオンや虎、ヒョウなどの動物が飼育されていたそうです。

銀座のデパートの屋上に本物の動物がいる――。

現代の感覚で考えると、ちょっと驚いてしまいますね(笑)

現在のデパートの屋上というと、カフェや庭園などを思い浮かべますが、当時の百貨店は買い物だけではなく、屋上の遊戯施設や動物園なども含めて、家族で一日楽しめる場所だったようです。

ミアも現代の感覚で「屋上なんてつまらない」と思っていましたが、実際に行ってみたら大興奮。

大正時代のデパートには、令和のミアが見ても驚くような楽しみがあったのでした。

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