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ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


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25/27

【25話】大正時代の花火大会!?

夏の一大イベント花火です。

夜の江ノ島。

昼間まで多くの人で賑わっていた参道も、いつの間にか少しずつ静かになっていた。

それでも、海辺には花火を待つ人々が集まっている。

「すごい人……」

ミアは周囲を見渡した。

「昼間とは全然違うね」

「皆さん、花火を楽しみにしているのでしょうね」

琴音も人々の様子を眺める。

浴衣姿の女性。

家族連れ。

友人同士で談笑する若者たち。

皆、これから始まる夏の夜を楽しみにしていた。

伊集院が二人に声をかける。

「こちらへ。少し離れた場所の方が、よく見えるでしょう」

「うん!」

三人は人混みを抜け、海の見える場所へ移動した。

目の前には、夜の海が広がっている。

波が静かに打ち寄せる。

昼間とはまるで違う江ノ島だった。

ミアは海を眺めながら、ふと思う。

(令和の江ノ島とは、全然違う……)

同じ場所。

同じ海。

だけど、ここにはまだ自分の知っている時代の建物も、車も、電灯もない。

聞こえてくるのは、人々の話し声と波の音。

そして、遠くから聞こえる祭囃子。

「……なんか、いいな」

ミアがぽつりと呟く。

「何がですの?」

琴音が尋ねる。

「こういうの」

ミアは笑った。

「みんなで花火を待ってる感じ」

琴音も微笑む。

「ええ。私も好きですわ」

その時だった。

遠くから、

ドン……

という低い音が響いた。

「!」

三人が一斉に夜空を見上げる。

次の瞬間、夜空に大きな赤い花が開いた。

「わあ……!」

ミアが思わず声を上げる。

花火は赤一色。

夜空に大きく広がったかと思うと、ゆっくりと消えていった。

「綺麗……」

琴音が呟く。

だが、次の花火はなかなか上がらない。

ミアは夜空を見上げたまま待っている。

「……あれ?」

「どうしましたの?」

「次、まだかな?」

琴音はくすりと笑う。

「急いで打ち上げるものではないのでしょうね」

やがて――

ドン……

今度は黄色い花火が夜空に咲いた。

「わぁ……!」

周囲から歓声が上がる。

「たまやー!」

そんな声も聞こえてきた。

ミアは夜空を見上げながら、ふと気づく。

(令和の花火大会とは全然違う……)

次々と連続して打ち上がるわけではない。

一発上がっては、しばらく待つ。

そしてまた一発。

色も一つの花火の中で何色も輝くのではなく、赤や黄色、白など、一色の花が夜空に大きく咲く。

キラキラと細かく輝き続ける花火もない。

ミアは、静かに次の花火を待った。

すると――

ドンッ!

今度は大きな白い花が夜空いっぱいに広がった。

「……綺麗」

ミアは思わず呟いた。

(こうやって、一発を待つのも……いいかも)

現代なら、次々と打ち上がる花火に歓声を上げる。

けれど今は、一発の花火が上がるたびに、観客がその一瞬をじっくり見つめている。

ミアはそんな夜の江ノ島を、黙って眺めていた。

(百年前の江ノ島……)

(私、こんなところにいるんだ)

少し前まで、自分は令和の普通の女の子だった。

スマホを持って。

電車に乗って。

コンビニで買い物をして。

友達と笑っていた。

それなのに今は――

大正時代の江ノ島で、花火を見ている。

「……不思議」

「どうしましたの?」

琴音が隣を見る。

ミアは小さく笑った。

「ううん。なんでもない」

そして再び夜空を見上げる。

大きな花火が、夜空いっぱいに広がった。

その光に照らされながら、ミアは思った。

(この時代に来たのも……悪くないかもね)

夜空に咲いた花火は、しばらくして静かに消えていった。


花火が終わった。

余韻の残る夜空を眺めながら、三人は江ノ島駅へ向かって歩き始めた。

「綺麗でしたわね……」

琴音がぽつりと呟く。

「うん!」

ミアもまだ興奮が冷めない。

「思ってたよりずっと良かった!」

伊集院が懐中時計を見る。

「そろそろ急いだ方がよさそうですね」

「え?」

「江ノ電の時間がありますから」

「あっ!」

ミアは慌てて歩き出した。

「終電なくなったら大変じゃん!」

「終電……?」

琴音が首を傾げる。

「えっと……最後の電車!」

「なるほど」

三人は少し早足になる。

夜の江ノ島に、三人の足音だけが響いていた。


三人が別荘へ戻ると、玄関にはメイドが立っていた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま!」

ミアが元気よく答える。

「花火はいかがでしたか?」

「すっごく綺麗だった!」

ミアは興奮した様子で答えた。

するとメイドが、後ろに置いてあった箱を持ってくる。

「実は、お戻りになったらお楽しみいただこうと思いまして……」

「?」

メイドが箱の蓋を開ける。

中には、何本もの花火が入っていた。

「花火!?」

ミアの目が輝く。

琴音も驚いたように覗き込む。

「まあ……まだ花火があるのですか?」

「はい。こちらは皆様でお楽しみいただけるよう、準備しておりました」

伊集院が微笑む。

「それはいいですね。せっかくですから、少し楽しみましょう」

「やったー!」

今度は、自分たちの手で楽しむ花火だ。

夜の庭に、三人の笑い声が響き始めた。

ミアは一本花火を手に取った。

令和で見るものとは、少し形が違う。

(昔の花火って、こんな感じなんだ……)

三人は縁側から庭へ下りる。

まずは伊集院が一本の花火に火をつけた。

シュッ――

小さな火花が、細く静かに噴き出した。

「わぁ……!」

ミアが目を輝かせる。

大きな打ち上げ花火とは違う。

小さな火花が、手元でぱちぱちと弾けている。

「綺麗ですわ……」

琴音も嬉しそうに眺めている。

ミアは自分の花火にも火をつけた。

シュッ……

赤い火花が夜の庭に広がる。

「なんか、こっちはこっちでいいね」

「ええ」

琴音が頷く。

「先ほどの花火は皆で空を見上げて楽しむものでしたけれど、こちらは自分の手元で楽しめますもの」

「確かに!」

三人はそれぞれ花火を手に、しばらく夢中になった。

やがて火が小さくなり、最後の火花が消える。

ミアは燃え尽きた花火を眺めた。

「……今日、花火いっぱい見たね」

琴音が微笑む。

「ええ。とても素敵な一日でしたわ」

伊集院も夜空を見上げる。

三人は最後に、線香花火を一本ずつ手に取った。

先端に火をつけた。

小さな火が赤く灯る。

やがて、細い火花が静かにこぼれ始めた。

パチ……パチパチ……

昼間の江ノ島。

海の幸を食べたこと。

江島神社へ続く長い石段。

夕暮れの海。

そして、夜空いっぱいに咲いた花火。

今日一日の出来事が、ミアの頭の中を流れていく。

ミアは線香花火を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……どんなことがあっても」

琴音と伊集院がミアを見る。

「私は今日のこと、忘れないからね」

小さな火花が、ぱちぱちと弾ける。

ミアは少しだけ寂しそうに笑った。

(もしかしたら……私はまた、令和に戻るかもしれない)

(そうなったら、ここで過ごしたことも、全部夢みたいになっちゃうのかな……)

けれど、忘れたくはなかった。

琴音はミアの横顔を見つめ、優しく微笑んだ。

「ええ……私も忘れませんわ」

「……琴音ちゃん」

伊集院も静かに頷く。

「私もです」

二人の言葉を聞いて、ミアは笑った。

「そっか……」

三人は再び線香花火へ目を戻した。

小さな火花が、夜の庭で静かに揺れている。

やがて――

最後の火花が、ひとつ。

また、ひとつ。

そして小さな赤い玉が、ぽとりと落ちた。

夜の庭に、静寂が戻る。

ミアは消えた線香花火を見つめた。

それでも、その夏の夜の記憶だけは、いつまでも消えなかった。

今回の舞台は、夏の江ノ島と花火です。

大正時代にも、花火は夏の楽しみの一つとして親しまれていました。

現在の花火大会のように、次々と連続して打ち上げる「スターマイン」などはまだ一般的ではなく、一発ずつ間を置いて打ち上げる花火が中心でした。

また、現在のように一つの花火の中で何色もの光が変化したり、細かな光がキラキラと広がったりする花火も少なく、赤や黄色、白など、比較的単純な色合いの花火が夜空に大きく開く――そんな素朴な美しさがありました。

作中では、ミアが現代の花火大会との違いを感じながら、一発一発をじっくり眺める場面として描いています。

そして最後は、縁側で線香花火。

大きな花火を見た後に、手元で小さく弾ける花火を楽しむ。

そんな昔の夏の夜を、ミアたちと一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

次回も、鎌倉編の続きをお楽しみください。

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