表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/23

【22話】大正の夏祭り!?〜ハイカラ少女が出会った飴細工〜

家の近所でも町内会の祭りをやり始めました。

祭りの会場へ足を踏み入れたミアは、目を輝かせながら辺りを見渡した。

「わぁ……屋台がいっぱい!」

提灯の明かりに照らされた通りには、さまざまな屋台が並んでいる。

甘い飴の香り。 焼き団子の香ばしい匂い。 楽しそうに笑う子どもたちの声。

「何から見ようかな!」

ミアはあちらこちらへ視線を向けながら歩き始めた。

「そんなに慌てなくても、お店は逃げませんわ」

琴音がくすりと笑う。

「でも、全部見たいんだもん!」

その様子を見た伊集院も、穏やかに微笑んだ。

「では、今日は心ゆくまで楽しみましょう。」

三人は賑やかな屋台の並ぶ通りをゆっくりと歩き始めた。

提灯の明かりに照らされた屋台。 楽しそうに行き交う人々。 賑やかな話し声。

しかし、ミアは何かを探すように周囲をキョロキョロしていた。

「あれ……ないなぁ」

「ミアさん、どうしたの?」

琴音が不思議そうに尋ねる。

「え?」

ミアは振り返った。

「さっきから何か探しているように見えるけど」

「あー、うん」

ミアは少し困ったように頭をかいた。

「お祭りといえば、まずアレかなーって思ったんだけど……」

「アレ?」

琴音が首を傾げる。

ミアは屋台が並ぶ通りを指差した。

「焼きそば屋さん!」

一瞬、琴音と伊集院の動きが止まった。

「やき……そば?」

琴音「そばを焼くのですか?」

ミア「えっ!?」

伊集院「聞いたことがありませんね」

「じゃあ、たこ焼きは?」

ミアはもう一度、屋台を見回した。

「たこ……やき?」

琴音は聞き慣れない言葉に目を丸くする。

「はい。タコを焼くのですか?」

「えっ、うん……そうだけど?」

「イカではなくて?」

琴音は本気で不思議そうな顔をした。

「なぜ、わざわざタコを……?」

ミアは屋台をもう一度見渡した。

焼き団子。 甘酒。 焼き餅――。

見慣れた祭りの屋台はあるのに、探していたものだけが見当たらない。

「……そっか」

ミアは小さくつぶやいた。

「どうしましたの?」

琴音が尋ねる。

ミアは苦笑いを浮かべる。

(ここ、大正だった……)

その一言で、すべてを悟った。

(焼きそばも……)

(たこ焼きも、まだないんだ……)

令和では当たり前だった祭りの定番は、まだこの時代には存在していなかったのだ。

「そういうことかぁ……」

ミアは少しだけ残念そうに笑った。

焼きそばもたこ焼きも諦めて屋台を眺めながら歩き始めた。

「せっかくだし、大正のお祭りを楽しもう!」

そう気持ちを切り替えたその時だった。

「あっ!」

ミアの足がぴたりと止まる。

「どうしましたの?」

伊集院が尋ねると、ミアは一軒の屋台を指差した。

「見て、あれ!」

屋台では、職人が小さな鋏を器用に動かしながら、透き通った飴を次々と形作っていた。

鳥や兎、金魚――。

まるで生きているような飴細工が、提灯の明かりを受けてきらきらと輝いている。

「わぁ……すごい!」

ミアは思わず目を輝かせた。

「飴細工ですわね。」

伊集院も感心したように見つめる。

「食べるのがもったいないくらいきれい……!」

「どれにしようかな……」

ミアは屋台に並ぶ飴細工を眺めながら、真剣な顔で悩んでいた。

鳥や動物、花の形をした色とりどりの飴。

その中で、ミアの目に留まったものがあった。

「これ!」

指差した先には、小さな金魚の飴細工があった。

透明な飴で作られた尾びれは、まるで水の中で揺れているように見える。

「かわいい!」

ミアは嬉しそうに受け取った。

「ミアさんらしい選び方ですわね」

琴音が微笑む。

「琴音は何にするの?」

「私は……」

琴音は少し迷ったあと、一つの飴細工を手に取った。

「こちらにします」

そこにあったのは、可愛らしい兎の形をした飴だった。

「琴音っぽい!」

「そうでしょうか?」

琴音は少し照れながら笑った。

そして伊集院は、静かに屋台を眺めていた。

「伊集院は?」

ミアが尋ねる。

伊集院が選んだのは、凛とした姿の鶴だった。

「鶴ですか……素敵ですね」

琴音が感心する。

「長く続く縁起の良いものですからね」

三人は屋台の並ぶ通りから少し離れ、人の流れが少ない場所へ移動した。

祭りの賑やかな声が少し遠くなり、提灯の明かりだけが優しく周囲を照らしている。

「じゃあ……いただきます!」

ミアは金魚の飴細工を眺めた。

「本当に食べるのもったいないなぁ」

そう言いながらも、そっと口に運ぶ。

パリッとした甘い飴が、口の中で溶けていく。

「おいしい……!」

ミアの顔がぱっと明るくなる。

琴音も兎の飴細工を大切そうに眺めたあと、少しずつ味わう。

「見た目だけではなく、味も楽しめるね。」

「うん!」

伊集院も鶴の飴細工を手に取り、静かに味わった。

「職人技ですわね。」

三人は人々の笑い声を聞きながら、夜の鎌倉の祭りを楽しんでいた。


金魚の飴細工を食べ終えたミアは、満足そうに笑った。

「おいしかった!」

すると、次の瞬間――。

ミアの視線が、再び屋台の並ぶ通りへ向いた。

「……」

「ミアさん?」

琴音が不思議そうに尋ねる。

ミアはゆっくりと立ち上がった。

「まだ見てない屋台、いっぱいあるよね?」

その目は、先ほどまでとは違っていた。

好奇心に火がついたミアを、もう誰にも止められない。

「行こう!」

「え?」

琴音が驚く。

「せっかく、お祭りに来たんだもん! 全部見たい!」

ミアは屋台から屋台へと歩き始めた。

焼き団子。 お煎餅。 甘い菓子。 昔ながらの飴。

「これ何?」

「こっちは?」

次々と興味を示すミア。

琴音は思わず笑ってしまう。

「先ほどまで焼きそばがないと残念がっていた方とは思えませんわ」

伊集院も穏やかに微笑む。

「ミアさんは、本当に食欲旺盛ですわね。」

大正の夏祭り。

ミアの食べ歩きは、まだ始まったばかりだった。

屋台を眺めながら歩いていたミアは、ふと周囲を見渡した。

「……あれ?」

「どうしましたの?」

琴音が尋ねる。

ミアは屋台の店主たちを見ながら首を傾げた。

「いや……なんか思ってたのと違うなって」

「何がですの?」

「もっと怖そうな人が多いのかなって思ってた」

ミアは小声で呟く。

けれど、目の前にいるのは――

飴を器用に細工する職人。 笑顔で菓子を売るおじさん。 子どもに優しく声をかける店主。

そこにいたのは、祭りを支える普通の商売人たちだった。

「なんだ……普通にお祭りを楽しませてくれる人たちなんだ」

ミアは少し感心したように笑った。

珍しい屋台を眺めながら歩いていると、人混みの中で誰かが近づいてきた。

祭りの賑わいに紛れるように、男はそっとミアの後ろへ回る。

ミアは飴細工や屋台に夢中で、まったく気付いていない。

「次はあれ食べてみたい!」

そう話している時だった。

「おい!」

突然、低い声が響いた。

ミアが振り返ると、近くの屋台のおじさんが一人の男の腕を掴んでいた。

「何してやがる」

男の手には、ミアの財布が握られている。

「えっ……?」

ミアは驚いて自分の鞄を見る。

「あれ……?」

いつの間にか取られそうになっていたことに気付く。

「祭りはみんなが楽しむ場所だ。そんなことをする場所じゃねえぞ」

男は屋台のおじさんに腕を掴まれ、一瞬ひるんだ。

「ちっ……!」

周囲の視線が集まったことに気付くと、男は慌てて手を振りほどいた。

「待て!」

おじさんが声を上げる。

しかし男は人混みの中へと紛れ、そのまま逃げていった。

「大丈夫かい?」

屋台のおじさんがミアに声をかける。

「え……?」

ミアは状況が飲み込めず、きょとんとしていた。

「今、財布を取られそうになってたんだよ」

「えっ!?」

ミアは慌てて鞄を確認する。

「全然気付かなかった……」

琴音も心配そうにミアを見る。

「危ないところでしたわね」

屋台のおじさんは苦笑した。

「祭りは人が多いからな。楽しい場所だけど、気を付けな」

「はい……ありがとうございます!」

ミアは頭を下げた。

さっきまで怖いイメージを持っていた屋台の人たち。

けれど目の前のおじさんは、祭りを楽しむ人たちを守る、優しい商売人だった。


その後、ミアたちは再び祭りの中へ戻っていった。

飴細工の次は、焼き団子。 香ばしい匂いに誘われて足を止めたり、珍しい菓子を見つけては目を輝かせたり。

「これも初めて見る!」

ミアの好奇心は、最後まで止まらなかった。

琴音も普段とは違う祭りの雰囲気を楽しみ、伊集院も二人の様子を穏やかに見守っていた。

提灯の明かり。 人々の笑い声。 夏の夜風。

令和では当たり前だった祭りとは違う。

けれど、そこには昔から変わらない、人が楽しむ温かさがあった。

「今日は本当に楽しかったね!」

ミアは満足そうに笑った。

大正の鎌倉で過ごす夏の一日は、忘れられない思い出になった。

――

こうして、三人の大正鎌倉の夏祭りの夜は終わった。

今回は大正時代の夏祭りを舞台にしました。

現在のお祭りでは定番となっている焼きそばやたこ焼きですが、これらが屋台で広く親しまれるようになるのは、もう少し後の時代になります。

そのため、ミアが探していた屋台が見つからなかったのも、大正時代ならではの出来事です。

当時の縁日や祭りでは、飴細工、菓子、玩具、お面など、現在とは少し違った屋台が並んでいました。

特に飴細工は、職人が目の前で飴を動物や花などの形に作り上げる、昔ながらの技でした。

時代が変わるにつれて、お祭りの屋台も少しずつ変化しています。

しかし、人が祭りを楽しみ、珍しいものを見つけて笑顔になるという部分は、昔も今も変わらないのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ