【21話】大正鎌倉の大仏巡り!?〜時を巡る名所〜
今回のあれは、私も調べて初めて知りました。
長谷寺を後にした三人は、大仏へ向かって歩き始めた。
長谷寺から大仏までは、それほど離れていない。
鎌倉の静かな町並みを眺めながら歩いていると、ほどなくして大きな山門が見えてきた。
「着いた……!」
ミアは門の前で足を止めた。
しかし、そこで少し首を傾げる。
「あれ……?」
「どうしましたの?」
琴音が尋ねる。
「いや……思ってたより人が少ないなって」
ミアは周囲を見渡した。
令和の時代に訪れた時は、観光客で賑わい、写真を撮る人たちでいっぱいだった。
けれど、大正時代の鎌倉大仏の周りには、静かな時間が流れていた。
「同じ場所なのに、全然違って見える……」
三人は境内を進み、大仏の前へと向かった。
長谷寺では、大きな十一面観音菩薩像に圧倒されたミアだったが――
目の前に現れた姿を見て、再び足を止める。
「……大きい」
思わず、そんな言葉がこぼれた。
長谷寺の観音様も十分に大きく、静かな存在感があった。
しかし、青空の下に座る鎌倉大仏は、それとは違う迫力があった。
「これ……昔の人が作ったんだよね?」
ミアは見上げながら呟く。
「ええ。長い年月、多くの人に守られてきた仏様です」
伊集院が静かに答える。
(長谷寺の観音様もすごかったけど……)
(この大仏は、私がいた令和よりも前どころか、大正よりずっと昔からここにいるんだ……)
ミアはふと、不思議な気持ちになった。
自分が生まれるずっと前。
この時代の人たちよりも、さらに昔の人たちが作ったものが、今もこうして残っている。
「すごいね……」
思わず声が漏れる。
ミアが大仏を見上げていると、伊集院が穏やかに声をかけた。
「よろしければ、大仏の中にも入ってみませんか?」
「中に?」
琴音が驚いたように目を丸くする。
「仏様の中に入ることができるのですか?」
伊集院は微笑んで頷いた。
「ええ。胎内を拝観することができます」
琴音はもう一度、大仏を見上げた。
「外から見るだけのものだと思っていました……」
その様子を見て、ミアは少し笑う。
「私、知ってるよ。大仏の中に入れるんだよ」
「まあ……ミアさんはご存じだったのですか?」
「うん。でも、実際に見るとやっぱりすごいね」
三人は大仏の胎内へと入っていった。
暗く静かな内部を進みながら、ミアは周囲を見渡す。
(あれ……)
そこは、令和の時代に見たものと大きく変わっていなかった。
壁の形も、内部の雰囲気も、記憶の中にある鎌倉大仏の姿と重なる。
「不思議……」
ミアは小さく呟いた。
「どうしましたの?」
琴音が尋ねる。
「ううん……なんでもない」
ミアは大仏の内側を見上げた。
令和で見た場所。
そして今、大正の時代で見ている場所。
時代は違うのに、同じものを見ている。
(未来の私と、今ここにいる私が……同じ景色を見てるんだ)
そう思うと、不思議で嬉しい気持ちになった。
ミアは静かに笑った。
三人は大仏の内部をゆっくりと見て回った。
「すごかったね……」
外に出ると、ミアは思わず空を見上げた。
暗い胎内から出たことで、夏の日差しが少しまぶしく感じる。
目の前には、先ほどと変わらず大きな鎌倉大仏が静かに座っていた。
「中に入ると、また違った感じがしますね」
琴音が感心したように呟く。
「ええ。外から見る姿と、内側から感じるものは違いますからね」
伊集院が微笑む。
ミアはもう一度、大仏を見上げた。
令和で見た大仏。
そして今、大正の時代で見ている大仏。
どちらも同じ場所にあり、長い時間を越えて人々を見守っている。
大仏を見終えた三人は、境内を出て鎌倉の町へ戻った。
「少し小腹が空きましたね」
琴音の言葉に、ミアも頷く。
「うん、朝からいっぱい歩いたもんね」
すると、伊集院が店先に並ぶ菓子を見つけた。
「よろしければ、鎌倉名物をいただきませんか?」
そこに並んでいたのは、鳩の形をした焼き菓子だった。
「……え?」
ミアは思わず足を止める。
「これ……」
見覚えのある形。
令和の時代でも、鎌倉土産として知られているお菓子。
「鳩サブレ……?」
ミアが呟くと、琴音が不思議そうに首を傾げた。
「ご存じなのですか?」
「えっ、あ、うん……有名だから!」
ミアは慌ててごまかした。
まさか、自分が未来で知っているお菓子が、もうこの時代に存在しているなんて思わなかった。
「すごい……」
ミアは鳩の形をした焼き菓子を手に取る。
令和で見たものと同じお菓子を、大正の鎌倉で食べている。
その不思議な感覚に、自然と笑顔になった。
鳩サブレで小腹を満たした三人は、ゆっくりと別荘へ戻ることにした。
「今日は本当にいろいろ見ましたね」
琴音が楽しそうに振り返る。
長谷寺の観音様。
静かな洞窟。
海を見渡す景色。
そして、大きな鎌倉大仏。
「うん、すごく楽しかった!」
ミアは笑顔で答えた。
令和で知っていた場所でも、大正時代に訪れるとまったく違う景色に見える。
人の数も、町の雰囲気も違う。
それでも、昔から変わらず残っているものもある。
ミアは今日一日の思い出を胸に刻んだ。
やがて三人は別荘へと戻ってきた。
「少し休みましょうか」
伊集院が声をかける。
「そうだね……今日はいっぱい歩いたもんね」
ミアは鞄の中に入れた鎌倉彫の小箱をそっと確認した。
大正の鎌倉で過ごした一日は、きっと忘れられない思い出になる。
夕方、別荘に戻った三人は少し休んだあと、夕食の席についていた。
「今日はたくさん歩きましたね」
琴音が温かいお茶を飲みながら微笑む。
「長谷寺も大仏も、本当にすごかった!」
ミアは今日の出来事を思い返しながら、楽しそうに話した。
すると、伊集院がふと思い出したように口を開く。
「そういえば……今夜、この近くで夏祭りが開かれます」
「夏祭り?」
ミアの目が輝く。
「行く、行く!」
琴音も嬉しそうに微笑む。
「お祭りなんて久しぶりですわ」
「決まりだね!」
ミアは笑顔で頷いた。
昼間は歴史ある寺や大仏を巡った三人。
そして夜は、大正の夏祭りへ向かうことになるのだった。
食事を終えた三人は、夏祭りへ向かう準備を整えた。
別荘を出ると、夏の夜の涼しい風が三人を包む。
「お祭りなんて楽しみだね!」
ミアは嬉しそうに歩いていた。
昼間の鎌倉は静かで、歴史ある寺や町並みをゆっくり楽しむ場所だった。
しかし、祭りの会場へ近づくにつれて、少しずつ様子が変わっていく。
遠くから聞こえる話し声。
夜店の明かり。
浴衣や着物姿で歩く人々。
「あれ……?」
ミアは周囲を見渡した。
「人が増えてきたね」
「ええ。皆さん、お祭りを楽しみに来ているのでしょう」
伊集院が微笑む。
先ほどまで静かだった鎌倉の町に、夏の夜らしい活気が広がっていた。
やがて三人は、夏祭りの会場へと到着した。
そこには多くの人が集まり、夜店の明かりが夏の夜を照らしていた。
浴衣や着物姿の人々。
楽しそうな話し声。
屋台から漂う甘い飴の香りや、焼いた団子の香ばしい匂い。
「わぁ……!」
ミアの目が輝く。
昼間の静かな鎌倉とは違う。
そこには、大正の人々が楽しむ夏の夜の風景が広がっていた。
「すごい! お祭りだ!」
ミアは嬉しそうに周囲を見渡す。
令和のお祭りとは違い、見慣れない屋台も多い。
「行こう!」
ミアが二人を振り返る。
琴音と伊集院は、そんなミアの様子を見て微笑んだ。
大正の夏の夜。
三人の鎌倉での思い出は、まだ始まったばかりだった。
今回は大正時代の鎌倉大仏を舞台にしました。
鎌倉大仏は鎌倉時代に造られた歴史ある仏像で、長い年月を越えて多くの人に親しまれてきました。
大正時代の人々も、現在と同じようにその姿を見上げ、訪れていたことでしょう。
また、大仏の胎内に入れることにも触れました。
時代が変わっても、同じ場所で同じ景色を楽しめるというのは、とても不思議で素敵なことだと思います。
そして今回登場した鳩サブレも、明治時代から続く鎌倉の名物です。
令和でも親しまれているお菓子が、大正時代にも存在していたことに、ミアも驚いたことでしょう。
大正の鎌倉と令和の鎌倉。
変わったもの、変わらないものを感じながら楽しんでいただけたら嬉しいです。




