【20話】大正鎌倉の古寺巡り!?〜長谷寺で見た景色〜
今回は鎌倉の中でも作者が好きな長谷寺です。
食事を終え、三人は温かいお茶を飲みながら今日一日を振り返っていた。
「今日は本当に楽しかったね!」
ミアが笑顔で言うと、琴音も微笑む。
「ええ。海ではしゃいだのなんて久しぶりだったわ」
伊集院も湯飲みを置き、穏やかに口を開いた。
「明日は鎌倉をご案内します。長谷寺や大仏を巡ったあと、小町にも寄る予定です」
「やった! 楽しみ!」
ミアは目を輝かせた。
「きっと素敵な一日になりますわ」
伊集院が微笑むと、琴音は何かを思い出したように小さく声を上げた。
「あっ、そうだ。お父さんに手紙を書こう」
「手紙?」
「うん。無事に着いたことを知らせておきたいの。心配してると思うから」
「そっか!」
ミアは笑顔でうなずいた。
「じゃあ、私もおばあちゃんに書こう! きっと心配してるもんね」
「ふふ、それがいいわ」
三人は食卓を片付けると、それぞれ便箋と筆を用意し、大切な人へ思いを込めて手紙を書き始めた。
三人はそれぞれ手紙を書き終えた。
「よし、できた!」
ミアは満足そうに便箋を折りたたむ。
その手が、ふと止まった。
「あれ……」
「どうしたの?」
琴音が尋ねる。
「おばあちゃんの住所……知らない」
ミアは困ったように頭をかいた。
「スマホなら名前を押すだけだったから、一度も住所を覚えたことなくて……」
琴音は少し驚いたものの、優しく微笑んだ。
「大丈夫よ。おばあさまの住所なら知っているわ」
「えっ、本当!?」
「ええ。以前、お父さんが教えてくださったの」
琴音はペンを取り、封筒に慣れた手つきで住所を書き始めた。
「はい、これで大丈夫」
「ありがとう、琴音ちゃん!」
ミアは書き終えた手紙を封筒に入れようとして、住所を見た。
「……え?」
思わず手が止まる。
そこには、琴音が書いてくれた住所があった。
青山
その文字を見て、ミアは目を丸くする。
(青山って……今でもすごい場所じゃん)
現代で暮らしていた頃の記憶が頭をよぎる。
「ミアちゃん?」
琴音が不思議そうに声をかける。
「あっ、ごめん! なんでもない!」
ミアは慌てて笑った。
「ただ、綺麗な字だなって思って」
「ふふ、ありがとう」
琴音は嬉しそうに微笑む。
ミアは封筒を大切にしまった。
手紙を書き終えた三人は、明日の予定を話しながら、それぞれ部屋へ戻った。
ミアは布団に入ると、すぐに眠気に襲われた。
(今日はいっぱい遊んだな……)
海で泳いだこと。 スイカ割りで笑ったこと。 みんなで飲んだラムネの味。
楽しかった思い出が頭の中を巡る。
「明日は鎌倉……」
そう呟いたところで、ミアの意識はゆっくりと遠のいていった。
――翌朝。
「ミアさん、朝ですよ」
「……ん?」
聞き慣れない声に、ミアはゆっくり目を開ける。
そこには、いつものように穏やかな表情の伊集院が立っていた。
「朝食の時間です」
「えっ!? もう朝!?」
ミアは慌てて飛び起きる。
「昨日は海で随分とはしゃいでいましたから。よく眠れたようですね」
「うん……気付いたら寝てた……」
琴音も笑いながら声をかける。
「今日は鎌倉へ行くんでしょう?」
その言葉を聞いて、ミアの眠気は一気に吹き飛んだ。
「そうだった! 長谷寺と大仏、行くんだった!」
朝食を終えると、三人は出かける準備を整えた。
夏の朝の日差しが、別荘の庭を明るく照らしている。
「忘れ物はありませんか?」
伊集院が確認すると、琴音は小さくうなずいた。
「大丈夫です」
ミアも鞄を持ち上げる。
「よし、今日は鎌倉観光だね!」
昨日の海水浴の疲れは残っていたものの、楽しみな気持ちのほうが勝っていた。
別荘を出ると、三人は鎌倉の街へ向かう。
海から吹く風を感じながら歩く道は、東京とは違う静かな時間が流れていた。
「まずは長谷寺へ向かいます」
伊集院が案内する。
「長谷寺……どんなところなんだろう?」
ミアは期待に胸を膨らませた。
三人は鎌倉の町並みを楽しみながら、長谷寺へ向かった。
道を歩くと、古い木造の家々や小さな店が並んでいる。
東京とは違う、ゆっくりとした時間が流れていた。
「なんだか落ち着くね」
ミアは周囲を見渡しながら呟いた。
「鎌倉は昔から多くの人が訪れる場所ですから」
伊集院が説明する。
「歴史のある町なのですね」
琴音も興味深そうに辺りを眺めていた。
やがて三人の前に、長谷寺の門が見えてくる。
門をくぐると、境内には静かな空気が広がっていた。
木々の間から差し込む光。 聞こえてくる鳥の声。
三人はゆっくりと境内の中へ入っていった。
境内を進み、本堂へ入った三人。
その瞬間、ミアは足を止めた。
「……え?」
目の前に広がる光景に、思わず声が漏れる。
そこには、優しい表情を浮かべた大きな観音様が立っていた。
「大きい……」
ミアは見上げたまま動けない。
(鎌倉は修学旅行で来たことがあるけど……長谷寺って初めて来た)
大仏や鶴岡八幡宮は覚えている。
でも、こんなに大きく、静かな存在感を持つ観音様があるとは知らなかった。
「すごいでしょう?」
琴音が微笑む。
「うん……なんか、圧倒される」
いつもの元気なミアも、思わず声を落とした。
伊集院は静かに手を合わせる。
「長い年月、多くの人に大切にされてきた観音様です」
ミアはもう一度、観音様を見上げた。
観音様を拝んだ三人は、本堂を後にした。
「すごかった……」
ミアはまだ余韻が残っているように呟く。
「長谷寺には、まだ見どころがありますよ」
伊集院が案内する。
三人が進んでいくと、そこには岩壁にぽっかりと開いた入口があった。
「ここは……?」
ミアが覗き込む。
「弁天窟です」
「洞窟!?」
その言葉を聞いた瞬間、ミアの目が輝く。
「行ってみたい!」
琴音は少し不安そうに入口を見る。
「中は暗そうですけど……」
「大丈夫。みんなで行けば怖くないよ!」
ミアが先に歩き出す。
ろうそくの明かりに照らされた岩の壁。
外の明るい境内とは違う、ひんやりとした空気。
三人は静かに洞窟の中へ入っていった。
「涼しい……」
ミアが小さな声で呟く。
壁には仏様が祀られており、ろうそくの明かりが静かに揺れていた。
「なんだか神秘的ですね」
琴音も周囲を見渡す。
「昔から多くの人が訪れてきた場所です」
伊集院が静かに説明した。
ミアは暗い洞窟の中を歩きながら、不思議な気持ちになっていた。
(大正の鎌倉……本当に来ちゃったんだな)
三人はゆっくりと洞窟を後にした。
洞窟を出た三人は、境内の奥へと進んでいった。
「こちらから景色が見えますよ」
伊集院が案内する。
階段を上った先には、鎌倉の町並みと海が広がっていた。
「わぁ……!」
ミアは思わず声を上げる。
青い海。 遠くまで続く町並み。
現代の鎌倉で見た景色とは違い、そこには大正の時代の静かな風景が広がっていた。
「綺麗ですね……」
琴音も景色を眺めながら微笑む。
「昨日遊んだ海も、ここから見るとまた違って見えるね」
ミアはしばらく景色を眺めていた。
そして、ふと思う。
三人は景色を楽しんだあと、次の目的地へ向かうことにした。
「次は、大仏ですね」
伊集院の言葉に、ミアは笑顔になる。
長谷寺を後にした三人は、大仏へ向かう道を歩いていた。
道沿いには小さなお店が並んでいる。
「少し寄ってみませんか?」
伊集院が声をかける。
そこは鎌倉のお土産を扱う店だった。
店先には、木彫りの置物や工芸品、小さな飾り物が並んでいる。
「かわいい!」
ミアは目を輝かせた。
その中で、ひとつの小箱に目が留まる。
「これ……素敵」
手のひらほどの大きさの、可愛らしい鎌倉彫の小箱だった。
細かな彫刻が施され、落ち着いた色合いが美しい。
「おばあちゃんへのお土産にしようかな」
ミアは小箱を大切そうに手に取った。
「きっと喜ばれますわ」
琴音が微笑む。
店員に包んでもらった小箱を、ミアは大事に鞄へしまった。
「よし、次は大仏だね!」
三人は鎌倉の町を歩きながら、次の目的地へ向かうのだった。
今回は大正時代の鎌倉ということで、長谷寺を舞台にしました。
長谷寺は奈良時代から続く歴史あるお寺で、十一面観音菩薩像で知られています。
境内からは鎌倉の町並みや海を眺めることができ、季節ごとに違った景色を楽しめる場所です。
また、境内には弁天窟という洞窟もあり、静かで神秘的な雰囲気を味わうことができます。
現在の長谷寺とは少し違う大正時代の景色を想像しながら、楽しんでいただけたら嬉しいです。




