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ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


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19/22

【19話】大正の海で大はしゃぎ!?

もう。夏休みに入ってるのかな?

メイドに案内され、それぞれの部屋へ荷物を置く。

「ふぅ……」

ミアは荷物を下ろし、ほっと一息ついた。

窓を開けると、潮風が部屋の中へ吹き込んでくる。

「海の匂いだ……!」

遠くからは、波が寄せては返す音も聞こえてきた。

「もう待ちきれない!」

ミアは部屋を飛び出し、居間へ向かう。

そこには、琴音と伊集院がすでに待っていた。

「お待たせ!」

「準備はよろしいですか?」

伊集院が穏やかに尋ねる。

「もちろん!」

ミアは元気よく頷いた。

「それじゃあ、海水浴に行こう!」

三人は笑顔で別荘を後にし、夏の海へ向かって歩き始めた。

別荘を出ると、潮風が心地よく頬をなでた。

「海まで近いんだね!」

「ええ。この別荘は海水浴を楽しむために建てられたものですから」

伊集院が微笑みながら答える。

三人は水着の上に羽織った上着を脱ぎ、海水浴姿のまま浜辺へ向かった。

砂浜へ足を踏み入れると――

「わぁ!」

ミアは思わず声を上げた。

「思ったより人が多い!」

浜辺には家族連れや子どもたち、友人同士で訪れた人々が思い思いに夏の海を楽しんでいた。

黒い海水浴衣を着た女性たちや、水着姿で波打ち際ではしゃぐ子どもたちの姿も見える。

「夏休みですから、多くの方が海水浴に来られるんですよ」

琴音がそう言うと、ミアは辺りを見回した。

「へぇ……大正時代でも海水浴って人気なんだ!」

令和とは違う水着姿や海辺の風景に囲まれながら、ミアは目を輝かせるのだった。

浜辺へ出ると、琴音は持ってきたござを砂浜に広げた。

「ふぅ……気持ちいいね」

そう言うと、そのままごろんと横になる。

一方、伊集院は波打ち際まで歩いていき、静かに海へ足を浸していた。

「冷たくて気持ちがいいですわ」

その様子を見たミアは、きょとんと首を傾げる。

「……あれ?」

(泳がないの?)

令和の海水浴なら、海に来たらすぐ泳いだり、浮き輪で遊んだりするのが当たり前だった。

けれど、琴音はござの上でのんびりと潮風を楽しみ、伊集院も海に浸かるだけで満足そうにしている。

「二人とも、海に来たのに泳がないの?」

ミアが不思議そうに尋ねると、琴音は起き上がって笑った。

「海水浴は、海風を感じながらのんびり過ごすのも楽しみの一つなんだよ」

伊集院も頷く。

「長く海に入る方は、それほど多くありませんわ。景色を眺めたり、お話をしたりして過ごす方も大勢いらっしゃいますの」

「へぇ……」

ミアは辺りを見回した。

確かに、砂浜では家族や友人同士がおしゃべりを楽しみ、海に足を浸して涼んでいる人も多い。

(海水浴って、昔と今じゃ楽しみ方が全然違うんだ……)

「それじゃ、私は泳いでくるね!」

ミアは笑顔で駆け出した。

「えっ!? ミアちゃん!?」

琴音が声をかける間もなく、ミアは海へ飛び込む。

「わっ!」

大きなしぶきが上がる。

そのままミアは勢いよくクロールを始めた。

ザバッ、ザバッ――。

力強く腕をかき、水しぶきを上げながら、みるみる沖へ泳いでいく。

「す、すごい……」

琴音は思わず立ち上がった。

伊集院も目を丸くして、その姿を見つめている。

やがてミアは沖でくるりと向きを変え、再びクロールで浜辺へ戻ってきた。

「ぷはぁ!」

笑顔で海から上がるミア。

「気持ちよかったー!」

しかし、琴音と伊集院は言葉を失ったまま、ぽかんと口を開けていた。

「……ミアちゃん」

「はい?」

「そんな泳ぎ方……初めて見ましたわ」

「え?」

ミアは首を傾げる。

(あれ? クロールって普通じゃないの?)

ミアは首を傾げた。

「二人はどんな泳ぎをするの?」

琴音と伊集院は顔を見合わせる。

「どんな泳ぎ……と言われても」

琴音は少し考えてから答えた。

「私は足が着くところで、ゆっくり水に浸かったり、手足を動かしながら進むくらいかな」

伊集院も頷く。

「泳ぐというより、水遊びを楽しむ方が多いですわ。沖まで泳ぐようなことは、まずいたしません」

「えぇ!?」

ミアは思わず声を上げた。

「クロールとか平泳ぎで競争したりしないの!?」

「きょうそう……ですか?」

二人は不思議そうに首を傾げる。

ミアは「あっ」と口を押さえた。

(しまった……また令和の感覚で話しちゃった)

二人にとって海水浴は、泳ぎを競う場所ではなく、涼んだり景色を楽しんだりする場所なのだと、ミアは少しずつ理解するのだった。

ミアはふと二人を見る。

「ねぇ、二人は泳げる?」

琴音は少し困ったように笑った。

「実は……私、泳げないんです」

「えっ!?」

ミアは驚いて目を丸くする。

伊集院も静かに頷いた。

「私も、泳ぎを習ったことはありませんわ」

「そうなんだ……」

ミアは改めて周りを見渡す。

確かに、浜辺にいる人たちも海に深く入る人は少なく、波打ち際で遊んだり、浮かんで楽しんだりしている人が多かった。

その時――

「あれ?」

ミアは砂浜の端に置かれた物に気づいた。

そこには、子どもが使っていたコルク製の浮き具が置かれていた。

「これって……浮き輪の代わり?」

近くにいた子どもの親に尋ねると、

「ええ、よろしければお使いくださいな。子どもは少し休ませていますので」

と笑顔で貸してくれた。

ミアはコルクの浮きを手に取る。

「へぇ……軽い!」

琴音と伊集院も興味深そうに眺める。

「これなら、泳げなくても海を楽しめるよ!」

「じゃあ、二人も一緒に海行こう!」

三人はゆっくりと波打ち際へ向かって歩き出した。

「わっ……!」

琴音は思わず声を上げた。

足元を揺らす波の感覚に、少し緊張している。

「大丈夫だよ。まずはこのコルクにつかまってみて」

ミアはコルクの浮きを差し出す。

二人は恐る恐る掴む。

「……浮いてる」

琴音が小さく呟いた。

「本当ですわ……」

伊集院も驚いたように海を見つめる。

最初はただコルクにつかまり、波に揺られているだけだった。

けれど、しばらくすると――

「なんか慣れてきたね!」

ミアが笑う。

「じゃあ、次は足を動かしてみよう!」

「足を?」

「そう! こうやって!」

ミアはコルクを掴んだまま、足をバタバタと動かす。

すると、少しずつ前へ進んでいく。

「わぁ……!」

琴音の顔が明るくなる。

「進んでいます!」

伊集院も驚いたように笑った。

「水の上を歩いているみたいですわ」

ミアは得意げに笑う。

「でしょ? こうやると楽しいんだよ!」

二人は初めて、自分の力で海を進む楽しさを知るのだった。


しばらく海で遊んだ三人は、浜辺へ戻ってきた。

「はぁ……楽しかった!」

ミアは砂浜に座り込み、大きく息を吐く。

琴音もござに腰を下ろした。

「海で遊ぶというのは、思った以上に体力を使うんですね」

伊集院も微笑む。

「でも、とても楽しい時間でしたわ」

三人は顔を見合わせて笑った。

すると、ミアが。

「……なんか喉乾いたね」

「確かに、暑いですものね」

琴音が頷く。

そこでミアは周囲を見回した。

「何か飲み物売ってないかな?」

浜辺の近くには、海水浴客向けの店が出ていた。

そこには――

「ラムネだ!」

ミアの目が輝く。

瓶の中でビー玉が揺れる、昔ながらのラムネ。

「これ、飲んでみたい!」

三人は店へ向かう。

「三本お願いします」

店の人からラムネを受け取ると、ミアは瓶を眺めた。

「すごい……本当にビー玉入ってる」

琴音と伊集院も興味深そうに見つめる。

その時――

「……あっ!」

ミアが声を上げた。

店の横に、大きなスイカが並べられていた。

「スイカ!」

夏の太陽を浴びた大きな緑色の果実。

「これも食べようよ!」

「ふふ、ミアさんらしいですわ」

伊集院が笑う。

三人はラムネと一緒にスイカも買うことにした。

「スイカも一つくださいな」

店のおじさんは大きなスイカを持ち上げた。

「はいよ。じゃあ、切ってあげようかね」

するとミアが慌てて手を上げる。

「あっ、切らなくて大丈夫です!」

「ん?」

おじさんは不思議そうな顔をする。

「その代わり……そこの棒、貸してもらえますか?」

「棒?」

おじさんは首を傾げながら、店の横に置いてあった木の棒を見る。

「これかい?」

「はい!」

ミアは嬉しそうに頷く。

琴音と伊集院も顔を見合わせた。

「ミアちゃん、その棒で何をするの?」

「ふふ、見てのお楽しみ!」

ミアはスイカを抱え、砂浜へ向かう。

浜辺へ戻ると、ミアはスイカを砂の上に置いた。

「じゃあ、始めようか!」

「始める……?」

琴音と伊集院は不思議そうに顔を見合わせる。

ミアは手拭いを取り出した。

「琴音ちゃん、目を閉じて」

「え?」

琴音が言われた通りに目を閉じると、ミアは手拭いで目隠しをする。

「よし、これで見えないね」

「はい……」

琴音は少し不安そうに答えた。

するとミアは木の棒を渡す。

「今から説明するね!」

ミアは二人を見る。

「目隠ししたまま、この棒でスイカを割るの!」

「スイカを……割る?」

伊集院が首を傾げる。

「うん! でも勝手に歩いたら危ないから、私が言う通りに動いてね」

ミアは指を立てて説明する。

「右って言ったら右に、前って言ったら前に進むの。もし危なかったらすぐ止まって!」

「なるほど……」

琴音は頷く。

「声だけを頼りに、スイカを探す遊びなのですね」

「そういうこと!」

ミアは笑顔で答えた。

伊集院は感心したように微笑む。

「面白い遊びですわね。海水浴に来て、このような楽しみ方があるとは思いませんでした」

周りの海水浴客たちも、珍しそうに三人の様子を眺めている。

「じゃあ、いくよ!」

ミアは少し離れた場所から声をかける。

「琴音ちゃん、まずは……右前!」

「右前ですね」

琴音は慎重に一歩ずつ進む。

砂の感触を確かめながら、ゆっくりと前へ進んでいく。

「そのまま、そのまま!」

ミアの声を頼りに、琴音は進む。

「もう少し右!」

「はい」

琴音が少し方向を変える。

「そこ!」

ミアが声を上げた。

「そのまま真っ直ぐ!」

琴音は緊張しながら歩く。

やがて――

「止まって!」

琴音の足元には、大きなスイカがあった。

「今、目の前にあるよ」

「本当ですか?」

琴音は目隠しをしたまま、少し驚いた声を出す。

ミアは笑顔で頷いた。

「うん! じゃあ、棒を振って!」

琴音は両手で棒を握る。

「えいっ!」

勢いよく棒を振り下ろす。

――バシッ!

砂浜に大きな音が響いた。

周りで見ていた人たちからも、小さなどよめきが起こる。

「どうなりました?」

琴音は目隠しを外そうとする。

ミアはスイカを確認して――。

「どうなりました?」

琴音が目隠しを外す。

ミアはスイカを確認した。

「おお!」

スイカの表面には、ほんのわずかだがヒビが入っていた。

「琴音ちゃん、すごい! ちゃんと当たってるよ!」

「本当ですか?」

琴音は嬉しそうに笑う。

「初めてなのに、すごいですわ」

伊集院も感心したように頷いた。

するとミアは次の人へ視線を向ける。

「じゃあ、次は伊集院さん!」

「私ですか?」

伊集院は少し驚いた表情をする。

「はい! 今度は伊集院さんの番!」

伊集院は少し迷ったあと、微笑んだ。

「では、挑戦してみますわ」

ミアは手拭いを取り出し、伊集院の目を優しく隠す。

「見えないですよね?」

「はい。何も見えませんわ」

「大丈夫。私がちゃんと声で案内するから!」

伊集院は棒を握りしめる。

普段は落ち着いている財閥令嬢が、子どものように真剣な顔をしている。

ミアは少し離れた場所から声をかける。

「伊集院さん、準備はいい?」

「はい。よろしくお願いいたします」

伊集院は棒を握りしめ、静かに立っている。

「じゃあ……左前!」

「左前ですね」

伊集院は慎重に一歩踏み出す。

砂の感触を確かめながら、ゆっくりと進んでいく。

「そのまま真っ直ぐ!」

ミアの声だけを頼りに、伊集院は進む。

琴音はその様子を見ながら微笑んだ。

「伊集院さん、真剣ですね」

「えへへ……」

ミアも楽しそうに笑う。

「もう少し!」

伊集院の足が止まる。

「そこです!」

ミアが声を上げた。

「スイカは目の前!」

伊集院は一度深呼吸する。

「では……参ります」

そして――

「えいっ!」

勢いよく棒を振り下ろした。

――バキッ!

先ほどより大きな音が響く。

「えっ!?」

ミアが駆け寄る。

スイカを見ると、大きなヒビが入っていた。

「すごい! 伊集院さん、かなり割れてる!」

「本当ですか?」

伊集院は目隠しを外し、驚いた顔でスイカを見る。

「偶然ですわ」

「いやいや、すごいよ!」

琴音も拍手をする。

「伊集院さん、初めてとは思えません」

普段は落ち着いた財閥令嬢。

しかし、遊びに夢中になっている姿は、いつもの雰囲気とは少し違っていた。

「じゃあ、最後はミアちゃんかな?」

琴音が言う。

「もちろん!」

ミアは笑顔で棒を受け取る。

「私が決める!」

三人の夏の遊びは、いよいよ最後の挑戦を迎えようとしていた。

ミアは棒を握りしめ、目隠しをする。

「よし……今度こそ!」

「ミアちゃん、頑張って!」

琴音が声をかける。

「ミアさんなら大丈夫ですわ」

伊集院も微笑む。

ミアはゆっくりと歩き出す。

「右……いや、少し左!」

「えっ、どっち!?」

ミアは思わず笑いそうになる。

周囲で見ていた人たちも、楽しそうにその様子を眺めていた。

「もう少し前!」

ミアは慎重に進む。

そして――

「そこ!」

琴音と伊集院が声を上げる。

ミアは棒を両手で握り直した。

「えいっ!」

思い切り振り下ろす。

――バキッ!

大きな音が浜辺に響いた。

一瞬、静まり返る。

そして……

「割れた!」

ミアが目隠しを外す。

そこには、見事に真っ二つになったスイカがあった。

「すごい!」

「おお!」

周りで見ていた海水浴客からも歓声が上がる。

初めて見る遊びに、子どもたちも目を輝かせている。

「面白い遊びだね!」

「もう一回見たい!」

そんな声まで聞こえてきた。

ミアは少し照れながら笑う。

「えへへ……楽しいでしょ?」

琴音と伊集院も笑顔でスイカを見る。

「じゃあ……食べようか!」

ミアは割れたスイカを見て笑顔になる。

「せっかく綺麗に割れたんだし、食べないともったいないよね!」

「ふふ、そうですわね」

伊集院も微笑む。

三人は砂浜にござを広げ、切り分けたスイカを並べた。

「いただきます!」

ミアは大きく一口かじる。

「甘い!」

冷たい果汁が口いっぱいに広がる。

「海で食べるスイカって、なんでこんなに美味しいんだろう!」

琴音も一口食べ、嬉しそうに笑う。

「本当ですね。暑い日に食べると、いつもより美味しく感じます」

伊集院も上品に食べながら頷いた。

「夏の海辺でいただくスイカ……素敵な思い出になりますわ」

三人は並んで座り、波の音を聞きながらスイカを味わう。

令和とは違う大正の夏。

けれど、海で遊んで、冷たいものを食べて、友達と笑う楽しさは変わらない。

ミアは青い海を眺めながら思った。

(昔も今も、夏って楽しいんだな)

読んでいただき、ありがとうございます!

今回は、ミアたちの大正時代の海水浴のお話でした。

現在では海水浴というと、泳いだり浮き輪で遊んだりするイメージが強いですが、大正時代の海水浴は、海で涼を楽しむことや、浜辺で家族や友人と過ごすことも大きな楽しみの一つでした。

当時の水着は、現在のように肌を多く出すものではなく、体を覆う形のものが一般的でした。 また、泳ぎを楽しむために、コルクなどを使った浮き具も利用されていました。

今回、ミアが行ったスイカ割りは、現代では夏の定番の遊びとして知られていますが、作中では令和の感覚を持つミアが、大正時代の浜辺で新しい遊びとして披露した形で描いています。

海で遊び、冷たいラムネを飲み、甘いスイカを食べる。 時代や道具が変わっても、夏を楽しむ気持ちは昔も今も変わりません。

大正の夏を、ミアたちと一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

また次回もよろしくお願いします!

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