表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/24

【15話】音のない映画で大興奮!?

今回は映画です。ミアの目を通して当時の映画館の様子を楽しんでください。

女学校の校門前。

「おはよう、ミアちゃん」

いつものように琴音が声をかける。

「あっ、琴音ちゃん! おはよ!」

ミアは笑顔で振り返る。

二人は並んで校門をくぐった。

「そういえば……」

琴音が少し嬉しそうに口を開く。

「喫茶店、大変なことになってるみたいだね」

「え?」

琴音が首を傾げる。

「何が?」

「何がって……新聞に載ったでしょう?」

ミアが笑う。

琴音も微笑みながら答えた。

「冷たいコーヒーを飲みに来るお客様が増えて、お店が毎日忙しいって、お父さんが言っていたわ」

「本当!?」

ミアの目が輝く。

「みんな、美味しいって飲んでくれてるんだ」

「ええ。それに……」

琴音は何か言いかけて、少しだけ笑った。

「なに?」

ミアが尋ねる。

すると琴音は、いたずらっぽく首を振った。

「あ、あとで話すね」

「えー、気になるじゃん!」

ミアが頬を膨らませる。

琴音は楽しそうに笑いながら、教室へ向かって歩いていった。


授業が終わり、昼休み。

女学生たちがそれぞれ昼食を広げ、教室が賑やかな声に包まれる。

ミアは待ちきれない様子で琴音の机へ近づいた。

「ねぇ、琴音ちゃん」

「なに?」

琴音が顔を上げる。

ミアは少し身を乗り出して言った。

「もうそろそろ、教えてよ」

「え?」

琴音が首を傾げる。

「朝の話! 何か言いかけてたじゃん!」

「ああ……」

琴音は思い出したように笑った。

「まだ気になってたの?」

「そりゃ気になるよ!」

ミアは頬を膨らませる。

「実はね……」

「うん」

ミアは身を乗り出す。

琴音は少し嬉しそうに話し始めた。

「この前の記者さんがね」

「取材のお礼にって、映画の券をくださったの」

「映画!?」

ミアの目が輝く。

「映画って、あの映画?」

「ええ。活動写真よ」

琴音が頷く。

「新聞社の方からいただいたみたいで、お父さんが私たちにもって」

「すごいじゃん!」

(大正時代の映画館ってどんな感じなんだろう!)

琴音は鞄から小さな封筒を取り出した。

「券は二枚あるから、今度のお休みに一緒に行こう」

「えっ、いいの!?」

ミアは嬉しそうに身を乗り出す。

「もちろんよ」

琴音は笑う。

「行く行く!」

ミアは即答した。


その日の夕方。

ミアは学校から帰ると、玄関で靴を脱いだ。

「ただいまー!」

「おかえりなさい、ミア」

奥から優しい声が返ってくる。

おばあさんが、いつものように笑顔で迎えてくれた。

「今日は何か嬉しそうですね」

「分かる?」

ミアは嬉しそうに笑う。

「実はね、今度のお休みに琴音ちゃんと映画を見に行くことになったの!」

「まあ、映画ですか」

おばあさんは少し驚いた顔をする。

「はい。活動写真っていうんだって」

ミアは鞄から大切そうに券を取り出した。

「琴音ちゃんのお父さんがもらったものを、二枚分けてくれたの」

おばあさんは券を眺めると、ふっと微笑んだ。

「そうですか……」

「行ってもいい?」

ミアは少しだけ上目遣いで尋ねる。

すると、おばあさんは優しく頷いた。

「もちろんですよ」

「本当!?」

「ええ。ただし、琴音さんと一緒に、寄り道をせず気をつけて帰ってくること」

「うん! 約束する!」

ミアは嬉しそうに笑った。

「楽しんできなさい」

「ありがとう、おばあちゃん!」

その日の夜。

ミアは布団に入り、天井を見つめていた。

「映画かぁ……」

小さく呟く。

「映画なんて……前の時代でも、久しぶりだな」

ミアはふふっと笑う。

令和にいた頃は、映画を見る機会も少なくなっていた。

けれど、今は違う。

知らない時代の映画館で、どんな景色が待っているのか。

どんな人たちが、どんな風に楽しんでいるのか。

考えるだけで胸が弾んだ。

「楽しみだな……」

そう呟くと、ミアは目を閉じた。

次のお休みの日が待ち遠しくて仕方がない。

やがて、柔らかな眠りへ落ちていくのだった。


そして、休日の朝。

いつもより少し早く、ミアは目を覚ました。

「……今日は映画の日だ!」

思い出した瞬間、眠気はすっかり消えていた。

身支度を整え、鏡の前で髪を整える。

最後に手首の腕飾りを見る。

「これもつけていこうかな」

みんなで作った大切な腕飾りをつけ、ミアは笑った。

「よし!」

準備を終えると、玄関へ向かう。

「おばあちゃん、行ってきます!」

「はい、気をつけて行ってらっしゃい」

おばあさんは優しく微笑んだ。

「琴音さんと一緒だから安心ですね」

「うん! 楽しんでくるね!」

ミアは元気よく返事をすると、玄関を出た。

待ち合わせ場所へ着くと、そこにはすでに琴音の姿があった。

「琴音ちゃん!」

ミアが手を振る。

琴音は振り返ると、嬉しそうに微笑んだ。

「あっ、ミアちゃん」

「待った?」

「ううん。私も今来たところよ」

そう言いながらも、琴音の表情はどこか楽しそうだった。

「映画、楽しみだね!」

ミアが笑顔で言う。

「ええ」

琴音も頷く。

「私も活動写真を見るのは久しぶりだから、楽しみにしていたの」

「どんな感じなんだろうね」

ミアは目を輝かせる。

「今の映画とは違うのかな?」

「ミアちゃんは、もう見たことがあるの?」

琴音が不思議そうに尋ねる。

「あっ……」

ミアは一瞬言葉に詰まる。

「えっと……前にね、少しだけ」

慌ててごまかす。

琴音は首を傾げながらも、笑った。

「それなら今日は、違いを楽しめそうね」

二人は並んで歩き出す。

目指す先は、初めて見る大正時代の映画館。

二人が映画館へ着くと、入口には活動写真を楽しみに来た人たちが並んでいた。

「ここが映画館……」

ミアは建物を見上げる。

「なんだかワクワクするね」

「ええ」

琴音も笑顔で頷いた。

受付で琴音が大切そうに券を差し出す。

係の人が確認すると、券の一部を切り取った。

「どうぞ」

渡された半券を受け取り、二人は顔を見合わせる。

「これが半券なんだ」

ミアが珍しそうに眺める。

「記念になるね」

そして中へ入ろうとした時、ミアがふと思いついたように尋ねた。

「ねぇ、琴音ちゃん」

「なに?」

「飲み物は買わないの?」

琴音は少し驚いた顔をした。

「飲み物?」

「うん。映画見ながら飲むやつ」

ミアが言うと、琴音は少し考えてから笑った。

琴音は優しく言う。

「後でいいよ」

「後で?」

「そっか!」

ミアは納得したように頷いた。

二人は笑いながら、館内へ入っていった。

館内へ入ると、ミアは思わず足を止めた。

「……」

そこは、現代の映画館とはまるで違う空間だった。

大きなスクリーンが正面にあり、客席には木製の椅子が整然と並んでいる。

天井には大きな照明があり、開演を待つ人々の話し声が静かに響いていた。

壁には、これから上映される活動写真の絵看板が飾られている。

そこには出演者の姿や物語の場面が描かれ、映画の内容を観客へ伝えていた。

「へぇ……」

ミアは周囲を見回す。

(映画館って、こんな感じだったんだ)

やがて客席の前方では、楽士が準備を始める。

「音楽もあるの?」

ミアが驚く。

琴音が頷く。

「うん、ここは大きいから弁士以外にも楽団がいるんだよ。」

「へぇ……」

ミアは目を輝かせる。

スクリーンの前では、これから始まる物語を待つ人々の期待が高まっていく。

やがて館内の照明が少しずつ暗くなっていく。

ざわめいていた客席が静まり返った。

「始まるね」

琴音が小さな声で呟く。

ミアもスクリーンへ視線を向ける。

すると、白い画面に映像が映し出された。

「……」

物語が始まる。

しかし――

「……あれ?」

ミアは首を傾げた。

「音が出ない?」

スクリーンには人が動いている。

けれど、声が聞こえない。

(え? 故障?)

ミアは思わず周りを見回す。

(機械のトラブルかな?)

しかし、周りのお客さんたちは驚く様子もなく、静かに画面を見つめている。

その時。

館内に優しい音色が響き始めた。

前方では楽士が演奏を始めている。

「……え?」

ミアが目を丸くする。

そして次の瞬間。

スクリーンの横に立つ人物が、よく通る声で語り始めた。

「さて、これから始まります物語は――」

弁士の声が館内に響き渡る。

ミアは驚いたように目を見開いた。

「……」

琴音が小さく笑う。

「どうしたの?」

「えっと……」

ミアはスクリーンと弁士を交互に見る。

「映画って……こういうものだったんだ」

琴音は不思議そうに首を傾げた。

「ミアちゃんの知っている映画とは違うのね」

「うん……」

ミアは笑った。

「でも……すごい」

スクリーンの映像。

楽士の音楽。

そして、弁士の語り。

すべてが一緒になって、一つの物語を作っている。

スクリーンに映し出されたのは、一人の小柄な男だった。

山高帽をかぶり、ちょびひげを生やしている。

少し大きめの上着に、だぶだぶのズボン。

手には細い杖を持ち、独特の歩き方で画面の中を歩いていた。

その姿が現れた瞬間、客席のあちこちから小さな笑い声が起こる。

「ふふっ……」

ミアも思わず笑ってしまう。

言葉はない。

けれど、動きだけで何をしているのかが不思議なくらい伝わってくる。

スクリーンの映像は白黒だった。

けれど、不思議だった。

弁士の語りが登場人物の感情を伝え、楽団の音楽が場面ごとの空気を作り出していく。

楽しい場面では軽やかな旋律。

慌てる場面ではテンポの速い演奏。

しんみりした場面では、優しい音色が流れる。

ミアは、いつの間にか白黒であることを忘れていた。

(あれ……)

映像に、本当に色がついているわけではない。

それなのに――

(なんでだろう)

弁士の声と楽団の演奏を聞いていると、画面の世界に色があるように感じる。

夕焼けの赤。

街灯の温かな橙色。

登場人物の服の鮮やかな色まで、頭の中に自然と浮かんでくる。

「……すごい」

ミアは小さく呟いた。

物語は、いよいよ佳境へ入っていった。

山高帽の男は、逃げるように走り回り、建物の上へ飛び移る。

細い足場を軽々と渡り、転びそうになりながらも絶妙なバランスで踏みとどまる。

客席からは「おおっ!」というどよめきが起こった。

ミアも思わず身を乗り出す。

「うわっ……!」

男はさらに高い場所へ駆け上がり、危なっかしい動きで飛び移った。

その瞬間――

(えっ、CG?)

ミアの頭に、現代の映画の感覚が反射的に浮かぶ。

だが、すぐにハッとした。

(いや、違う……!)

これは本当に人がやっている。

ワイヤーも、コンピューターもない時代。

それなのに、目の前の映像は信じられないほど迫力があった。

「すご……」

ミアは呆然と呟く。

隣の琴音も、思わず息を呑んでいた。

弁士の熱のこもった語りと、楽団の激しい演奏が重なり

やがて、物語は最後の場面を迎えた。

山高帽の男がいつものように歩き出すと、弁士の語りも静かに締めくくられる。

楽団の演奏がゆっくりと終わり、最後の音が館内に消えていった。

スクリーンの映像が途切れる。

一瞬の静寂。

そして次の瞬間――

パチパチパチ……!

館内に大きな拍手が広がった。

「すごかったね……」

「ええ」

ミアと琴音も自然と拍手を送る。

ミアは、まだ胸が少し高鳴っていた。

白黒の映像だったはずなのに、頭の中には鮮やかな色のついた場面が残っている。

弁士の声。

楽団の演奏。

観客の笑い声や驚きの声。

そのすべてが一緒になって、まるで一つの舞台を見ていたようだった。

館内の照明が少しずつ明るくなる。 観客たちは満足そうな表情で席を立ち、口々に感想を話していた。

「どうだった?」

琴音が微笑みながら尋ねる。

ミアはまだ少し興奮した様子で頷いた。

「すごかった……! 今の映画と全然違うのに、なんか……」

言葉を探すように視線を上げる。

「みんなで一緒に見てるって感じがした」

琴音は嬉しそうに笑った。

「弁士さんの語りで、客席の空気が一つになるのよね」

「うん。笑うところも、びっくりするところも、全部一緒だった」

ミアはふと周りを見回す。

「それに、あの山高帽の人、動きがすごすぎた!」

「ふふっ、有名な活動俳優さんだからね」

「でも、何処かで見たような……」

ミアがふっと息をついた。

「……なんか、いっぱい笑ったから喉渇いちゃった」

「それなら――」

琴音が通路の方へ目を向ける。

「ちょうど売り子さんが来たみたい。何か買いましょうか」

見ると、白い前掛けをした売り子が、木箱を提げて客席の間を歩いていた。

「サイダー、ラムネ、冷やし飴――いかがですか」

「わぁ……!」

ミアは目を輝かせる。

(映画館の中を売り子さんが歩いてるんだ……!)

「ミアちゃん、どれにする?」

「うーん……せっかくだから、サイダー飲んでみたい!」

「じゃあ、私も同じものにしようかな」

琴音が売り子を呼び止めると、瓶入りのサイダーが二本渡された。

二人で感想を話していると、琴音がふと思い出したように言った。

「ねぇ、ミアちゃん」

「ん?」

「もう一度見る?」

「えっ、もう一回!?」

ミアは思わず聞き返した。

「うん。何回でも見れるよ。」

ミアは驚いた顔をする。

(映画って、一回見たら終わりじゃないんだ……!)

ミアは少し考えてから、ふっと笑う。

「うーん……でも、もういいかな」

「そう?」

「遅くなると、おばあちゃん心配するし」

ミアがそう言うと、琴音は優しく頷いた。

「そうね。心配をかけるのはよくないわね」

「でも、すっごく楽しかった!」

ミアは満面の笑みを浮かべる。

「また別の活動写真も見てみたいな」

「ええ、今度は違う作品を見に来ましょう」

サイダーを飲み終えると、二人は映画館を後にした。

外へ出ると、夕暮れの街には柔らかな橙色の光が広がっている。 行き交う人々の声や、路面電車の走る音がどこか心地よく響いていた。

「今日は本当に楽しかったね」

ミアが笑顔で言う。

「ええ。ミアちゃんがあんなに驚いてくれて、私も嬉しかったわ」

琴音がくすっと笑う。

「だって、映画に弁士さんがいるなんて思わなかったんだもん」

「ふふっ、また一緒に行きましょうね」

「うん!」

やがて分かれ道に差しかかる。

「じゃあ、ここで」

「気をつけて帰ってね、琴音ちゃん」

「ミアちゃんもね」

二人は手を振り合い、それぞれの家路についた。

ミアは夕焼けに染まる街を歩きながら、今日見た活動写真の場面を思い返す。 白黒の映像だったはずなのに、頭の中では不思議と鮮やかな色がついていた。

「また見に行きたいな……」

ミアは笑みを浮かべる。

そんな余韻を胸に抱きながら、ミアはおばあさんの待つ家へと帰っていくのだった。

今回は「大正時代の映画館(活動写真)」のお話でした。

当時の映画は、まだ音声が入っていない無声映画が主流で、スクリーンの横に立つ「弁士べんし」が登場人物のセリフや場面の説明をしていました。

さらに、映画館には楽士や楽団がいて、場面に合わせて生演奏をしていたそうです。 楽しい場面では軽やかに、緊迫した場面では激しく演奏されるので、観客は映像だけでなく「語り」と「音楽」も一緒に楽しんでいました。

また、当時の映画館では売り子が客席を回り、サイダーやラムネ、冷やし飴などを販売していたこともあったようです。 今の映画館とはかなり違う、どこかお祭りや芝居小屋に近い空気だったのかもしれませんね。

ミアが驚いていたように、白黒の映像でも弁士の語りと音楽によって、頭の中に色が浮かんでくる――そんな不思議な魅力が、昔の映画にはあったのだと思います。

ちなみに、山高帽にちょびひげの小柄な男……誰かを思い出した方もいるかもしれませんが、そこはご想像にお任せします(笑)。

次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ