【11話】手作りおしゃれで人気者!?
俺はお洒落に無関心なのでAIにま任せます。
夕暮れの街を路面電車に揺られ、ミアと琴音は家へと帰ってきた。
「ただいま!」
玄関を開けると、奥からおばあさんが顔を出した。
「おかえりなさい。ご飯の支度できてますよ。」
ミアは笑顔で頷く。
「うん!」
夕食を囲みながら、ミアは今日あった出来事を話した。
三越の食堂で食べた料理のこと。
新聞記者の女性に声を掛けられたこと。
そして、小間物屋で見つけた綺麗なビーズのこと。
「まぁ……新聞に載るかもしれないなんて、大したものだねぇ。」
おばあさんは優しく笑う。
「でも、一番嬉しそうなのは、そのビーズの話をしている時だね。」
「あ……分かる?」
ミアは照れくさそうに笑った。
夕食を終えると、ミアはおばあさんの後片付けを手伝った。
「ミア、今日は疲れただろうにありがとうね。」
「これくらい大丈夫だよ。いつもお世話になってるんだから。」
片付けを終えると、ミアは自分の部屋へ戻った。
「さて……。」
部屋に入ると、机の上にそっと包みを置く。
小間物屋で買った、大切な材料。
ミアは嬉しそうに包みを開いた。
「やっぱり、かわいい……。」
ミアは机の上に並べた材料を眺めた。
色とりどりのビーズ。
細い組み紐。
そして、何色も揃ったカラフルなひも。
「うーん……。」
どんなものを作ろうか、しばらく考える。
「やっぱり、最初はこれかな。」
ミアが手に取ったのは、何本もの色鮮やかなひもだった。
「編み込んで……そこにビーズを入れたら……。」
現代で見たことのあるアクセサリーを思い浮かべる。
大正時代には、まだ今のようなアクセサリーショップはない。
でも、材料はちゃんとある。
ならば、この時代の素材で作ればいい。
ミアはひもを丁寧に編み始めた。
赤、青、黄色、淡い緑。
色の違うひもが重なり合い、少しずつ模様になっていく。
「結構、いい感じかも……。」
さらに小さなビーズを通していく。
一粒加えるたびに、ただのひもが少しずつ姿を変えていった。
やがて――。
「できた!」
ミアの手の中には、小さな色鮮やかなブレスレットが完成していた。
ミアは残ったひもを手に取った。
「これなら……。」
指先でひもを並べる。
一本ずつ丁寧に編み込んでいく。
「昔、こういうの作ったことあったな……。」
ふと現代での記憶がよみがえる。
友達とお揃いで作った編み紐の腕飾り。
今では懐かしい思い出だった。
「でも……。」
ミアは完成したものを眺める。
「大正の材料で作ると、なんか違って見える。」
現代のミサンガとは違う、この時代だけの可愛さがあった。
ミアは完成した編み紐の腕飾りを机の端へ置くと、次の材料を手に取った。
淡い色の布。
「次は……これかな。」
手に取ったのは、柔らかな色合いの布だった。
薄い桃色。
淡い水色。
優しいクリーム色。
「この時代なら、こういう感じも似合いそう。」
ミアは布の大きさを整え、丁寧に折り込んでいく。
現代の感覚では大きめのリボン。
でも、この時代の女性が身につけても違和感がないように、色は落ち着いたものを選んだ。
形を整え、中央を糸で留める。
最後に小さなビーズを飾ると――。
「できた!」
そこには、淡い色合いの大きなリボンが完成していた。
「うん……かわいい。」
思わず笑顔になる。
ミアは完成したリボンを手に取ると、部屋の隅に置かれた化粧台の前へ向かった。
鏡に映る自分の髪に、そっとリボンを合わせてみる。
淡い色の布が、黒髪の上で優しく映えた。
「映えるじゃん!」
鏡の中の自分を見る。
令和で見慣れていた姿とは違う。
でも、この時代の服装や髪型の中にも、自分らしいおしゃれは作れる。
「明日、琴音ちゃんに見せよう。」
そう呟くと、ミアは大切にしまった。
布団に入り、天井を見上げる。
「大正って……思ってたより楽しいかも。」
小さく笑いながら、ミアはゆっくりと目を閉じた。
次の日の朝。
障子の隙間から差し込む朝の光で、ミアはゆっくりと目を覚ました。
「ん……朝かぁ。」
布団から起き上がると、昨日作ったアクセサリーが目に入る。
「……やっぱり、かわいい。」
思わず笑顔になる。
ミアは身支度を整えると、鏡の前に立った。
髪を整え、昨日作ったリボンをそっと髪につける。
大正の服装に、令和の感覚で作った小さなアクセサリー。
不思議なくらい馴染んでいた。
「よし!」
気持ちを切り替え、部屋を出る。
台所からは、朝食の準備をする音が聞こえていた。
「おはよう、おばあちゃん。」
「あら、おはようミア。よく眠れたかい?」
「うん! 今日も元気いっぱい!」
ミアが席につくと、温かな朝食が並べられていた。
朝食を囲みながら、ミアはいつものように箸を進めていた。
すると、おばあさんがミアの髪に目を向ける。
「ミア、その髪飾り……昨日買ってきたのかい?」
ミアは少し嬉しそうに笑った。
「あ、これ? 違うよ。」
「昨日買った材料で、私が作ったんだ。」
そう言うと、ミアは髪につけたリボンにそっと触れる。
「まぁ……自分で?」
おばあさんは驚いたように目を丸くした。
「器用なものだねぇ。色合いも綺麗だし、よく似合ってるよ。」
「ほんと?」
「ああ。ミアらしい感じがするね。」
その言葉に、ミアは少し照れながら笑った。
「ありがとう。」
朝食を終えると、ミアは食器の片付けを手伝った。
「じゃあ、行ってきます!」
玄関で靴を整え、外へ出る。
朝の街には、行き交う人の声や路面電車の音が響いていた。
ミアは髪のリボンにそっと触れる。
昨日までとは少し違う、自分だけの大正のおしゃれ。
「琴音ちゃん、どんな反応するかな。」
学校へ向かう道の途中。
校門の近くで、ミアは見慣れた姿を見つけた。
「あ、琴音ちゃん!」
「おはよう、ミアちゃん。」
琴音が振り返ると、すぐにミアの髪へ視線を向けた。
「……あれ?」
琴音は少し驚いた顔をする。
「そのリボン……昨日買ったの?」
ミアは嬉しそうに笑った。
「違うよ。昨日買った材料で作ったんだ。」
「えっ、ミアちゃんが?」
琴音は驚きながら近づく。
「本当に? すごく綺麗……。」
「でしょ? こっちも見て!」
ミアが腕を見せると、そこには色鮮やかな編み紐の腕飾りがついていた。
「これも作ったの?」
「うん。ビーズも入れてみた。」
琴音は腕飾りをじっと眺める。
「なんだか不思議……。今まで見たことない感じだけど、すごく可愛い。」
「へぇ……ミアちゃんって、こういうの作るの得意なんだね。」
「昔、友達と作ったことがあったんだ。」
「いいなぁ。私も作ってみたいかも。」
琴音は笑顔になる。
「じゃあ今度、一緒に作ろうよ!」
「本当? 楽しそう!」
二人は笑いながら、校門へ向かって歩き出した。
学校へ着くと、教室の中では何やら人だかりができていた。
「なんだろう?」
ミアが首を傾げる。
琴音も気になったように、人の集まる方へ視線を向けた。
二人が近づいていくと、女学生たちの声が聞こえてきた。
「まぁ……素敵ですわ。」
「とても綺麗……。」
「さすが伊集院さんですわね。」
人だかりの中心には伊集院がいた。
ミアが目を向けると、伊集院の姿はいつもとは少し違って見えた。
髪には、朝の光を受けてきらりと輝く、煌びやかな髪飾り。
細かな細工が施され、見るからに高価そうだった。
さらに手首には、美しい装飾が施されたブレスレットが光っている。
「……すごい。」
思わずミアの口から声が漏れる。
周りの女学生たちも、その姿に見入っていた。
「まぁ、なんて素敵な髪飾りですの。」
「きっと、とても高価なものですわ。」
「伊集院さんに本当によく似合っています。」
琴音が小さな声で言う。
「伊集院さんは、いつも素敵なものを身につけているね。」
ミアは頷きながら、伊集院を見る。
確かに綺麗。
大正のお嬢様らしい、上品で華やかな姿だった。
けれど――。
ミアは自分の髪につけた淡い色のリボンにそっと触れる。
高価なものではない。
昨日、自分で選んだ材料で、自分の手で作ったもの。
伊集院は、周りの女学生たちと話していたが、ふとミアの姿に目を向けた。
その視線は、ミアの髪についた淡い色のリボン、そして手首の編み紐の腕飾りへと移る。
「……あら。」
伊集院は静かに近づいてきた。
「その髪飾りと腕飾り……どちらでお求めになったものですの?」
突然声をかけられ、ミアは少し驚く。
「あ、これ?」
ミアはリボンに触れる。
「買ったんじゃないよ。昨日、材料を買って自分で作ったの。」
「ご自分で……?」
伊集院は少し意外そうな表情を浮かべる。
ミアは笑顔で頷いた。
「うん。好きな色を選んで、自分で組み合わせたんだ。」
伊集院はもう一度、ミアのアクセサリーを見る。
そして、上品な笑みを浮かべた。
「そうですの。」
少し間を置いて、伊集院は言った。
「庶民の方には、そのくらい素朴なもののほうがお似合いですわね。」
周囲の空気が少し変わる。
琴音が驚いた顔で伊集院を見る。
「伊集院さん……。」
しかしミアは、怒るよりも不思議そうに首を傾げた。
「そうかな?」
ミアは自分の腕飾りを見る。
「私は、これ結構気に入ってるけど。」
その言葉に、伊集院は少しだけ目を細めた。
ミアは自分のリボンを見つめながら、にこっと笑った。
「でもさ……これ、エモくない?」
その言葉に、伊集院は一瞬きょとんとする。
「……え?」
「え?」
「え、も……い?」
伊集院は不思議そうに首を傾げた。
「それは……何かの外国語ですの?」
ミアは思わず笑ってしまう。
「まあ、いいや。」
ミアは肩をすくめる。
「授業始まるよ。」
そう言うと自分の席に行く。
「ミアちゃんって、本当に変わってるね。」
琴音は笑いながら、その後を追う。
「そうかな?」
「うん。でも……そこが面白いところだと思う。」
二人はそれぞれの席についた。
やがて先生が入ってくると、教室の空気が静かになる。
「では、授業を始めます。」
女学生たちは一斉に教科書を開いた。
ミアも慌てて教科書を開く。
授業が終わり、昼休みになる。
ミアと琴音は机を寄せ、お弁当を広げていた。
「今日のおかずも美味しいね。」
ミアは嬉しそうに箸を動かす。
「ふふ、ミアちゃんはいつも美味しそうに食べるね。」
琴音も笑う。
二人は楽しく話しながら昼食を終えた。
「ごちそうさま。」
ミアが弁当箱を片付けた、その時だった。
「あの……。」
後ろから声が聞こえる。
振り返ると、同じクラスの女学生が立っていた。
「あ、えっと……ミアさん。」
少し緊張した様子で、こちらを見ている。
「どうしたの?」
ミアが尋ねると、女学生はミアの髪飾りへ視線を向けた。
「その……髪飾り、とても素敵だと思って。」
「これ?」
ミアはリボンに触れる。
「昨日、自分で作ったんだ。」
「えっ、自分で?」
女学生は驚いた顔をする。
「はい。とても綺麗で……私も、そんなものを作れたらと思って。」
琴音が微笑む。
「ミアちゃん、昨日からずっと作ってたんだよ。」
「すごいですわ。見たことのない感じなのに、可愛らしくて……。」
ミアは少し照れながら笑った。
「ありがとう。」
女学生は少し遠慮がちに、ミアへ尋ねた。
「もし……よろしければ、作り方を教えていただけませんか?」
ミアは一瞬驚いた顔をした。
「え? 作り方?」
「はい。とても素敵で……私も、自分で作れるものなら作ってみたいと思いまして。」
その言葉に、ミアの顔がぱっと明るくなる。
「もちろんいいよ!」
「本当ですか?」
「うん。こういうのって、自分で好きな色を選んで作るのが楽しいんだよ。」
琴音も嬉しそうに笑う。
「ミアちゃん、教えるの上手そう。」
「そうかな?」
「だって、すごく楽しそうに話してるから。」
ミアは完成した腕飾りを見る。
高価な宝石でもない。 有名なお店で買ったものでもない。
でも、自分で考えて作ったからこそ大切に思える。
「じゃあ、今度材料を持ってくるね。」
女学生は嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます。」
そのやり取りを見ていた周りの女学生たちも、次第にミアの方へ集まってきた。
「ねぇ、私も教えていただけるかしら?」
「私も作ってみたいです。」
「その腕飾り、とても可愛らしくて……自分で作れるなんて素敵ですわ。」
次々に声をかけられ、ミアは目を丸くする。
「えっ、こんなに?」
琴音は楽しそうに笑った。
「ミアちゃん、人気者だね。」
「いやいや、ただ作るのが好きなだけだよ。」
ミアは照れながら答える。
でも、集まった女学生たちの表情は本当に楽しそうだった。
「どんな色を選んだらいいかしら。」
「私は淡い色が好きです。」
「私はもう少し明るい色にしてみたいですわ。」
それぞれが自分の好きなものを想像している。
「じゃあ、今度一緒に作ろうよ!」
ミアが笑顔で言うと、女学生たちも笑顔で頷いた。
ミアの周りに集まる女学生たちを、少し離れた場所から見ている者たちがいた。
伊集院の取り巻きの女学生たちだった。
「……楽しそうですわね。」
一人が小さく呟く。
「ええ。あのようなもの、自分で作れるなんて知りませんでしたわ。」
別の女学生も、ミアの手元にある腕飾りを見つめる。
「でも……伊集院さんがお持ちのものとは、また違った魅力がありますわね。」
その言葉に、周りの女学生たちは頷いた。
「私も少し、作ってみたい気がします。」
しかし、伊集院の前では素直に言い出しにくい。
いつも高価なものに囲まれている伊集院。
その彼女の前で、庶民的な手作りのものに興味を示すことに、少し戸惑っていた。
その様子に気づいたミアは、笑顔で声をかける。
「あれ? みんなも興味あるの?」
突然話しかけられ、女学生たちは少し驚く。
「え……。」
「よかったら一緒に作ろうよ!」
ミアはいつもの調子で笑った。
「好きな色を選ぶだけでも楽しいよ。」
その明るさに、女学生たちの緊張が少しほどける。
ミアは、少し離れた場所にいる伊集院へ気づいた。
「伊集院さん。」
突然名前を呼ばれ、伊集院は顔を上げる。
「……私ですの?」
「うん!」
ミアは手招きをする。
「伊集院さんも一緒に作ろうよ。」
周りの女学生たちが少し驚く。
伊集院に気軽に声をかける人など、今まであまりいなかったからだ。
「ですが……。」
伊集院が迷っていると、ミアは悪気なく続けた。
「だって伊集院さん、お金持ちなんでしょ?」
周囲が一瞬静まる。
琴音が「あ……」という顔をする。
しかしミアは気にせず笑った。
「だったらシルバーとか使ったら絶対映えるよ!」
伊集院は目を瞬かせる。
「……シルバー?」
「うん。伊集院さんの雰囲気なら、キラキラした感じより、上品な銀色とか似合いそう。」
思いがけない言葉に、伊集院は少し黙る。
今まで自分に近づいてくる人は、家柄や持ち物を見る人ばかりだった。
けれど、目の前の少女は違う。
身分ではなく、ただ「似合うもの」を考えている。
伊集院は少しの間、ミアの顔を見つめていた。
いつもなら断っていたかもしれない。
手作りのアクセサリーなど、自分には縁のないものだと思っていた。
けれど――。
目の前のミアは、本当に楽しそうだった。
「……せっかくのお誘いですもの。」
伊集院は小さく微笑む。
「お願いしますわ。」
その言葉に、周りの女学生たちが少し驚く。
「伊集院さんが……?」
ミアはぱっと笑顔になる。
「やった!」
「じゃあ、どんな色が似合うか一緒に考えよう!」
伊集院は少し戸惑いながらも、ミアの明るさに引っ張られるように輪の中へ入っていく。
高価な宝石でもない。
有名なお店の品でもない。
けれど、そこには今まで伊集院が知らなかった楽しさがあった。
昼休みの教室に、小さな笑い声が広がっていく。
令和から来た少女が持ち込んだ新しいおしゃれは、少しずつ大正の女学生たちの心を動かし始めていた。
今回は、大正時代の女学生のおしゃれについて少し紹介します。
大正時代は、着物だけでなく洋風の文化も少しずつ広がった時代でした。
女学生の間では、袴姿に革靴を合わせる「ハイカラ」な装いも人気になり、髪型や髪飾りなどで個性を出す女性も増えていきました。
また、百貨店の登場によって、都会では洋風の小物や装飾品を見る機会も増えていきます。
現代のようにアクセサリーショップがたくさんある時代ではありませんでしたが、髪飾りやブローチ、帯留めなど、小物のおしゃれを楽しむ文化はありました。
高価なものだけではなく、自分で工夫して身につける楽しさも、昔から変わらないおしゃれの一つだったのかもしれません。




