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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる  作者: 朝山 みどり


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61 そうか! 北なんだ

 61 そうか! 北なんだ


 ちょうど季節は冬へ向かうところだった。


 街道を北へ進むにつれ、風は日に日に冷たくなっていく。


 朝になると吐く息が白くなり、馬たちの鼻息も湯気のように空へ昇った。


 ある大きな町へ到着した日のことだった。


 馬車から降りたケイトたちに、ノウス国の大使が穏やかな笑顔で声をかけた。


「これから先はさらに寒くなります。この町で防寒着を仕立てませんか?」


 大使は通りの先を指さした。


 石造りの立派な店が並んでいる。


「この町は織物と仕立てが有名なのです。お二人には快適に過ごしていただきたいですから」


 リンベルはケイトの肩の上でこくりとうなずいた。


「大使、いい人。インプット」


「ははは」


 大使はリンベルに丁寧に頭を下げた。


「ありがとうございます」


「どうだ?」


 マイクは店の看板を見上げながら言った。


「たぶん、コートそのものが違うと思うぞ」


「そうです!」


 大使は嬉しそうに身を乗り出した。


「わかっていただけましたか!」


「そんなに違うんですか?」


 ケイトが首をかしげる。


(寒さも暑さも結界で防げるから、必要ないけど……一人薄着なのも周りが気を使うよね)


「ええ。寒い地方の職人が作る防寒着は別物です」


「それならお願いします」(暖かい格好をしているのも大事よね)


 ケイトがそう言うと、大使は満足そうにうなずいた。


 店に入ると、すでに準備が整っていた。


 どうやら貸し切りらしい。


 店員たちが一斉に頭を下げる。


「ようこそお越しくださいました」


 すぐに念入りな採寸が始まった。


 肩幅、腕の長さ、首回りなどは当たり前。


 次々と寸法が取られていく。


「腕を少し上げてください」


「はい?」


「こちらを向いて腕を横に伸ばしてください」


「はい! これってドレスのようですが……」


「ここの防寒着は体にしっかりとくっつき、なおかつ動きが楽ですので、これだけの採寸が必要です」


「そうですか?!」


 採寸が終わると、店主が布見本を広げる。


「お勧めはこちらです」


 深みのある赤。暖かそうで上品な色だ。


 ケイトは少し迷ったが、


「そうですね。これにします」と決めた。


 さらに店主は当然のように言った。


「普段着も必要ですね」


「え?」


「もっと、北へ行かれるのでしょう?」


「はい」


「では今のお召し物では寒いです」


 店主は断言した。


 その後も「こちらも」「これも」「これも必要です」


 と勧められ、気づけば何着も注文することになった。


 すべて終わった頃には、ケイトは少し疲れていた。


 マイクはとっくに注文が終わってのんびりと待っていた。


「北の寒さって……防寒って大変なんですね」


「そうですね」


 大使はにこにこしていた。


「完成まで五日ほどかかります」と店主が頭を下げる。


「五日ですか」


「はい」


「じゃあ、この町でのんびりできるな」


 マイクが言った。


 ケイトもうなずく。


「そうだね」


 宿へ戻る途中、冒険者ギルドの看板が目に入った。


「あ」


 ケイトが立ち止まる。


「せっかくだし行ってみる?」


「そうだな」


 マイクも賛成した。


「その土地のギルドを見るのも勉強になる」


「インプット」


 リンベルも賛成らしい。


 三人はそのままギルドへ向かった。


 扉を開くと、時間も時間だから静かだった。



「なんか安心するね」


 ケイトが笑う。


 掲示板を見ると、薬草採取があった。


 倉庫整理もある。


 荷物運びもある。


 どれも見慣れた依頼だ。


 ところが、一枚だけ妙な依頼書があった。


 ケイトは足を止める。


「ん?」


 マイクも横から覗き込んだ。


 そこにはこう書かれていた。


『神殿のタペストリーの洗濯』


 二人は顔を見合わせた。


「カーテンならわかる」


「ああ」


「でもタペストリーって洗うの?」


「知らん」


 マイクも首をひねる。


 リンベルも依頼書を見つめた。


「洗うの?」


「わからない」


「わからない。インプット」


 三人の意見が一致した。


 ケイトは依頼書を見つめる。


 そして言った。


「気になる」


「だな」


「インプット案件」


 リンベルも一緒になって言う。


 ケイトは受付へ向かった。


「この依頼、受けます」


 受付嬢は少しほっとしたような顔になった。


「ああ、ありがとうございます!」


 その反応に、ケイトとマイクは同時に首をかしげた。


(なんだろう)


(なんかありそうだな)


 タペストリーを洗うなんて普通じゃない。


 普通じゃないから、楽しみだった。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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