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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる  作者: 朝山 みどり


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57 ばれたぞ!

 57 ばれたぞ!


 ギルドの喧騒の中、騎士団長は受付に座っているさえない雰囲気の男を相手に、傲慢な態度で捲し立てていた。

 その横で、部下の騎士は団長のやり取りに付き合う風を装いながらも、全神経を背後の席に向け、声をひそめて話し合う冒険者たちの会話に耳をそばだてていた。


「――黒と金のおさげは確実だ。ケイトも確かに見たと言っていた」


「だけどよ、あっちのエリアは魔獣が弱すぎるだろ。いくらなんでも手ぶらで帰るのは辛いぞ」


「だが、ビリーがあのウサギを捕まえたんだ。俺も見せてもらったが、あれはなかなかに可愛いぞ」


「あぁ、研究者が言ったとか? あの丸っこい魔獣が成長したら、あのウサギになるんじゃないかって噂だ」


「最初からウサギを捕まえてもいいよな」


「それが、ウサギはなんか、反応がなくて、飼ってもおもしろくないとか。可愛いけど、そんだけだって」


「噂じゃ、研究者はあの丸いのを飼ってるそうだな」


「ウサギになるか見てるんじゃないか?」


「ジェイ。それは本当だと思うか?」


「噂は噂だからな。でも、今日は帰りにあの丸いのを連れて帰ろうかと思ってるんだ」


「なにを食うんだ?」


「わからない、研究者のやつ、口を割らないんだ」


「そうか、意外にせこいな。今度、くるくる広場に誘ってよく話してみるかな」


 くるくるの名前が出ると彼らは一斉に笑った。


「あそこはあそこでおもしろい場所だよな」


「……それにしても、おさげのほうは、これだけ総出で探しても一向に手がかりが掴めねぇな」


「俺は、もう少し奥の階層まで行ってみようかと思ってる」


「おさげダンジョンの奥かぁ。広いからな。学者先生は奥へ行きたがっているな」


「ジェイ。俺も一緒に行ってもいいか?」


「あぁ、目が多い方が見つけやすいだろう。行くか」


 椅子を引く音が聞こえ、男たちは立ち上がると、そのままギルドの重い扉を押し開けて出て行った。


 有力な手がかりを掴んだ騎士は、未だに受付と不毛な口論を続けている団長へ声をかける。


「団長、入れるなら行きましょう。ダンジョンが待っていますよ」


「……フン、仕方のない受付だ。おい、行くぞ!」


 団長は受付の男を睨みつけると、大股で歩き出した。




 冒険者ジェイたちの後を追うように、ロバート率いる護衛の騎士団は、整然と隊列を組んでダンジョンへと足を踏み入れる。


 ダンジョンに入ると、予想外の石畳だった。えっと思ったが、前を行くジェイたちを見失わないように、歩調を会わせてついて行く。


 途中、右側に道が分かれているが、ジェイたちは見向きもしないで歩いて行く。


「ここだな」の声と共に彼らは、進んで行った。


 ある程度進んだところで、前方の冒険者たちが足を止めた。そこはちょっとした広場になっている。


 ジェイと呼ばれた男が、周囲を見渡しながら指示を出す。


「今日は、いつもより念入りに探そう。ケイトとリンベルが出会ったって辺りを中心に捜索するぞ」


 男たちは神妙な面持ちで一斉にうなずいた。


「以前、ここにリンベルが現れた時は、思わず手が剣にかかったからな。あの時のことは忘れねぇよ」


「そうみたいですね。俺たちも報告書を読ませてもらって、感動しましたよ」


「笑ったぜ。神殿のやつら、祈りはじめてよ」


 一人がつけくわえた。


「なにかと言うと、祈るよね」


 そう言って冒険者が笑っていると……


 後ろから様子を伺っていた騎士団長が、胸を張り、いかにも偉そうな足取りで彼らの前に進み出た。


「先に行きたいのだが、よろしいか?」


 あからさまに威張った口調で、見下すように言い放つ団長。


 ジェイは一瞬、不愉快そうに眉をひそめたが、すぐに厄介払いをするような顔で肩をすくめた。


「……どうぞ。お先に」


 冒険者たちはあっさりと道を譲り、左右に広がって道を開けた。


「フン、賢明な判断だ」


 団長を先頭に、騎士団は堂々と彼らの間を通り抜けていく。


 騎士たちの胸の内には、抑えきれない優越感が満ち溢れていた。


 ギルドマスターの部屋で聞いたあの報告。ギルドはあれを明らかにしていない。


(こいつらは、自分たちが探している『目的のモノ』が、すでにこの先に飛んで行ってしまったとも知らないのだな……)


 哀れな冒険者たちを心の中で嘲笑いながら、騎士団は確信に満ちた足取りで、ダンジョンの奥へと進んで行った。



 騎士団が進むにつれて、足元がぬかるんできた。


 これこそが、ここの欠点なのだ。冒険者は「おさげ蛇」を探している。


 もちろん、ダンジョンの危険さは知っているから周囲を警戒しているが、ここ程度の魔獣はたいしたことない。


 だから、魔獣に警戒するより「おさげ蛇」に意識が向いてしまい、足元がおろそかになってしまう。なんてことない歯が立派なネズミに嚙みつかれたりなんてことが続いて、誰も調査をしてくれないのだ。


 そしてギルドマスターのジンクスによると、ぬかるみの向こうには、遺跡があるのだ。


 だから、マスターはじっと考えていた。ここは騎士団を使いたい……


 ケイトが騎士団を締め出した時は、ちょっと困ったが、本当にうまくものごとが噛み合った。


 騎士団には便宜をはかってやりたいなと、マスターは思っている。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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