49 ギルド支店にて
49 ギルド支店にて
王太子のロバートはアビゲイル――まだ、正式に婚約者とはなっていない――の頼みでリンベルを捕まえようとダンジョンに行くことにした。
騎士団長に護衛を命じてやってきたが、入ろうとすると冒険者によって止められた。
ダンジョン入口に新たに作られた支店の、支店長のカシクは、しっかりと準備して騎士団長を迎えた。
騎士団長――ジャイユールの後任。最近まで補佐をしていた男だ。名前をフィリップ・バンガードと言う。
受け付けのカシクに向かって「ダンジョンに入るのを止められた。前回からなんの改善も果たしていない。説明をしろ」
受付にいたカシクは顔も上げずに言った。
「予約は?」
「ない」
「では本日の面会枠は終了しております」
バンガードの眉がひくりと動く。
「我々は騎士団だ」
「はい、見てわかります」
カシクはさらさらと書類を書きながら答えた。
「それで、ご用件は」
「ダンジョンへ入る」
「却下です」
返事はあっさりだった。
バンガードが目を見開く。
「却下?」
「はい」カシクは引き出しから書類を取り出した。
「前回、説明したままです。もう一度説明が必要のようですね。よく聞いてください」
(練習の成果を見せてやる!)
「外部立入制限宣言権利証」読み上げながらを机に置く。
「未確認危険区域責任者認定書」これも読み上げながらを隣に並べる。
「調査区域指定責任者任命権限」ちょっととちったが、最後まで言えた。これも並べる。
「調査主体暫定登録証」これは、「外部立入制限宣言権利証」の下に置く。
「これらの決まりにより、現在の調査区域への立ち入りは制限されています」
バンガードが書類を見て、嫌そうな顔になった。
「騎士団だぞ」
「見てわかります」
「王国騎士団だ」
「それくらい、存じております」
「王国のために――」
「調査主体ではありません」
カシクは淡々と答えた。練習の成果だ。
声量も変わらない。表情も変えない。
ただ事実だけを述べている。
だから余計に腹が立つ。
「責任者を呼べ」
「ここにおります」
「ならば許可を出せ」
「決まりを超えることはできません」
「お前は何のためにいる!」
「受付です」
ロビーで冒険者が吹き出した。
バンガードの顔が赤くなる。
「危険区域なのだろう!」
「その通りです」
「ならば騎士団が――」
「危険区域だから制限されています。安全の為の配慮です。ご理解いただけますか?」
「なに?」
カシクは書類の一枚を指差した。
「未確認危険区域責任者認定書です」
そして静かに続ける。
「現在、責任者以外に管理権限はありません」
「騎士団だぞ!」
「そうですね。わかります」
「聞いているのか!」
「聞こえております」
カシクは羽ペンを置いて、ようやく顔を上げる。
「申請書を提出してください」
「許可される保証はあるのか?」
「わたくしにはわかりません」
「……」
カシクはさらに続けた。
「なお、無許可侵入は立入制限違反となります」
「違反したらどうなる」
「違反者の逮捕、懲罰を行使できる法にのっとり、拘束いたします。安全はなにより大事でございます」
「拘束?」
「はい」
「拘束はできますが、留置する施設がないので、手足を拘束した状態で王都のギルドまで運ばなければなりません。その場合、仕事をする冒険者への手当てを請求いたしますし、あなた方の食費なども請求いたします」
「ふざけるな!」
「いたって真面目に申しております」
「申請書を出されるのが一番早いかと存じますが」
「どこにある?」
「もちろん、王宮です」
「覚えてろ!」
バンガードは怒りの形相でギルドをでると、待っていた王太子とアビゲイルに説明した。
王太子は、「なにやっているんだ」とバンガードを怒鳴りつけたが、そのまま王宮に戻って行った。




