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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる  作者: 朝山 みどり


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42 村とダンジョン

 42 村とダンジョン



 ハーベスト村へ向かう馬車の中。


 ケイトは膝の上の書類をぺらりとめくっていた。


 マイクが呆れ顔で見る。


「休めばいいのに、なんで紙見てるんだ」


「確認です」


「なにを」


「村人の気持ちです」


「紙で?」


「村長さんが前に言ってました。農地が荒れるのは困るって」


 マイクが鼻を鳴らす。


「なるほどな」


「冒険者が増えると、一瞬景気は良くなりますけど」


 ケイトは窓の外を見る。


 春の畑が広がっていた。


 緑が風に揺れている。


「村が変わりすぎるんですよね」


「お前、そういうとこ妙に現実的だな」


「仕事柄、知ってますので」


 さらっと言われて、マイクは黙った。


 リンベルは、ふらふらと右に行ったり左に行ったり楽しげだった。


『村。畑。インプット』


「おもしろい?」


『うん』



 村へ着くと、村長が出迎えてくれた。


「おぉ、ケイトさん!」


「こんにちは」


「今日はどうされました?」


 ケイトは軽く頭を下げる。


「相談です」


 村長宅へ通され、素朴な茶が出された。


 しばらく世間話をしたあと、ケイトが本題を切り出す。


「ダンジョン目当ての冒険者相手に、商売をする気があるか聞きに来ました」


 村長が目をぱちくりさせる。


「商売?」


「宿、食事、雑貨、洗濯、いろいろです」


「儲かりそうですねぇ」と若い村人が言う。


 だが、年配の農家が腕を組んだ。


「でもなぁ……」


「はい?」


「畑のほうが大事だ」


 静かな声だった。


 別の村人も続ける。


「人手をそっちへ回したら、畑が荒れる」


「村が騒がしくなりすぎても困る」


「冒険者って、酒飲んで騒ぐだろ」


 マイクが肩をすくめる。


「まぁ、それは否定できねぇ」


 村人が嫌そうな顔をする。


「前に来た人たちは楽しくていい人でしたが、毎日あの人たちが来ると困ります」


 この意見に全員が首を縦に振っている。


 ケイトはうなずいた。


「わかりました」


「いいのかい?」


「はい。自分の暮らしは大事です」


 ケイトが、真面目な顔で答える。


「食料が安定してるって、すごいことです」


 年配の村人が少し驚いた顔になる。


「だから、村は今まで通り農業中心でいきましょう」


 ほっとした空気が流れた。


 するとケイトが紙を一枚出す。


「ただし」


 全員の顔が引き締まる。


「ダンジョン入口に、ギルドの出張所を作ります」


「出張所?」


「受付と簡単な管理です。冒険者が迷惑をかけたときもここへ訴え出てください。あと、屋台を許可します」


「屋台?」


 村長が首をかしげた。


「串焼きとか、スープとか、パンとか」


「屋台は村に迷惑をかけないよう管理します。村に迷惑はかけません。それと村のなかのダンジョン入り口は塞ぎます」


「それは助かる。なにか怖くてな」


「そうでしたか。もっと早く対処すべきでした。すみませんでした」


「いや、ケイトさんはよくしてくれてます。ありがとう。頼んでよかった」


「いえいえ、やりがいのある仕事でした」


『穴が怖かった。インプット』



 数日後。


 くるくる広場にケイトとマイクの姿があった。


 巨大な扉の前では、今日も研究者と冒険者が集まっていた。


 途中で止まった砂時計は、相変わらず静かだ。


 ケイトは共同の記録帳を確認する。


「今日も動いてませんねぇ」


「ほんとに止まったままだな」


 マイクが腕を組む。


 そこへ、にこにこした男が声をかけてきた。


「ケイトさん!」


 見覚えのない男だった。


 背中に大きな箱を背負っている。


「ポーションを売ってます」


「売れるでしょうね?」


「需要ありますよ!」


 男は拳で胸を叩いた。


 その時、がぁん!!


 ものすごい音が響いた。


 全員が振り向く。


 斧を持った冒険者が、巨大扉を叩いていた。


「くっそ! 開けぇ!」


 がぁん!!


 次の瞬間。


「うおっ!?」


 反動で後ろへ転ぶ。


 手首をかばいながらうずくまった。


「痛ぇぇぇ!」


 周囲が静まり返る。


 ポーション売りの男が、ものすごく自然な動きで近づいた。


「はいはい、こちら塗るタイプです。飲むタイプもあります」


「商魂たくましいですねぇ」


 ケイトが感心したように言う。


 マイクが真顔になる。


「いや、正しいだろ」


「昨日なんて、拳で殴って指折った人もいましたよ」


 ポーション売りが言った。


「なんで?またそんなことを」


 ケイトがあきれて呟いた。


「『ここが弱点だ!』って」


「扉に弱点なんてあるか!」


 誰かが叫んで、笑いが起きた。


 その横では研究者が砂時計を囲んでいた。


「回転数が足りないのでは?」


「いや、材質の問題かもしれません」


「今日もくるくるします?」


「もちろんです!」


 巨大砂時計を見ながら、誰かが腕まくりした。


 ケイトは少しだけ遠い目をした。


「禁止って言葉は存在しないってことですね」


 マイクがゆっくりと答えた。


「あぁ。そのようだ」


『おもしろい。インプット』


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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― 新着の感想 ―
いや、禁止って言葉通用しないで片づけないで、ちゃんと罰則与えましょうよ。 もし、村のほうに迷惑かけやつでてきたら、言葉通用しないで終われないでしょう。
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