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第二の星で  作者: ぷりお
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本格化

「あの映像、民衆は食いつきました。」

豪華な装飾の施された廊下をセリウスと側近の男が歩く。

「敵前逃亡など、国民に知られるわけには行かんからな。」

セリウスは足を止めて、空に浮く戦艦数隻を窓から見つめる。

「この後は軍人に向けた演説か。新型はどうなんだ?」

セリウスは目配せをする。

「はっ、最終段階であります。」

即座に側近がタブレット端末を取り出し、そこにマシーンのホログラフィックが表示される。

「よし、インペネスに敵の攻撃で落ちたものがいたな。」

「シャキリ・シャクティ大尉でありますね。」

「生死は?」

「問題ありません。」

「奴に新型を回せ。」

咳払いをしてセリウスが呟く。

「しかし……」

「構わん。」

「了解致しました、牽引はいかがなされますか。」

「まずは軍人共の士気を上げなければ、物資補強に向かう艦隊に委任しろ。」

セリウスは再び歩き出す。

「はっ!」

そう答えて、男も足早についていった。


「総帥、こちらでございます。」

セリウスは目配せをして、壇上の裏に入る。

先程の下卑た歓声は起こらず、ただ静かだった。

壇上に足早に上がり、数多の軍人を見据える。


「この月のエルガー帝国は、地球と比べ明らかに資源と文明レベルで劣っている。それはなぜか、彼等は我々に大した文明レベルを与えず、数だけ増えてしまったからと言ってアッシスという鉄棺数機を押し付け、そして月への移住とデブリ清掃という雑務を押し付けたからだ。その結果がどうだ、地球の清い水や自然を食い潰し、今日に至るまで各国同士での小競り合いを絶えさせない。空の上での我々が命を賭けた隕石除去によって、のうのうと生き延びていることを知らずにだ!だから、我々は解放を行うのだ。手段を選べばしないのだ!なぜなら、自分達にはあの星が味方に付いていると地球人は勘違いをするからだ!」


「月のエルガー帝国で払拭できた、人種問題を奴等はいまだに解決していない。ましてやヨーロッパ圏では新星歴に至っても、貴族制などという旧世紀の埃を被った肩書きに固執する国もある。それが何を意味するか、最早説明する必要はあるまい。諸君らは解放者なのだ。星を特権で食いつぶし、他の生物の拠り所を奪う人類に引導を渡す天の使いなのだ!」

軍人達は大声を上げ、左腕を掲げる。



「デリッド艦長。出航、いつでも行けます。」

「よし、あとは新型だな。」

デリッドと呼ばれた男は少し振り返り、窓に視線を戻す。

「我々の艦が地球に降下し、補強物資を搬入する間、帝国の増援が地球へ降下いたします。」

デリッドの側近の男が言う。


ーー新型牽引、繰り返す…ーー


艦内にアナウンスが流れ、ブリッジから確認できる整備室に機体が搬入される。


「オーライ!オーライ!そこで止めろ!」

誘導灯を持ったメカニックが指示を出す。

アッシス二機が機体を支え、新型を直立させた。

黒と紫が混ざった装甲。横のセルヴスより若干小回りではあるが、刺々しい外装をしていた。

「これか。」デリッドはブリッジから降りて、新型を見上げる。小型といっても、12メートルの巨体だった。

「はい。」側近の男が答え、メカニックに指示を出す。

「武装が多いな。」

「取り外せますが……」

デリッドの顔色を伺うようにした。

「現場にやらせろ。」

エレベーターに乗り込み、ブリッジへ戻る。

セルヴスのパイロットの兵士たちもデリッド艦へ乗り込んだ。


ーーデリッド艦隊、出航用意。繰り返す…デリッド艦隊…ーー


「ルナクスエンジン、点火。異常なし。」

デリッドのやや前に座るオペレーター達が点呼を行う。

「発進いつでも行けます。」

1人が一際高い椅子に腰掛けたデリッドに振り返る。

「帝国国旗に向け、総員敬礼!」


デリッド艦隊が地球へ降下を開始した。

それに続いて、2隻の戦艦が降下を始めていた。


朝日が海を照らしていた。孤島に建設されたアネストはオーストラリア付近に建設されているから、物資搬入の心配は少ない。ただ8月だというのに冷えるのが問題だ。

ヴァレンはくしゃみをしながら目を覚ました。

体はマシーンであるからか疲れがない。違和感もなくなっていた。

アネストは朝から騒がしかった。


「地球に降下してくる戦艦!?」

ジーネンが叫ぶ。オペレーターの肩にガッと手が置かれ、寝不足の顔をしていた。

「はい、大気圏を突破中と偵察隊から。」

「懲りずに何度も…!」

ジーネンは別のモニターに視線を移す。

後ろにいたクリスとクストも何か話していた。

「ニューカレドニアに来るのか?」

クストがオペレーターに声をかける。

「経路を見るとそのようです。反応は一隻ですが。」

「アダムは出せない。クスト少佐、イブと共に頼めるかしら。」

ジーネンが振り返り、クストを見据える。

「やれます。ガベルはテラーストュートに回収されましたから、実質解体でしょ。我々がやるしかない。」

「ではよろしく。イブ起きているわね。」

ジーネンはインカムを持って指示を出し始めた。


館内でアナウンスが響き、アダムが廊下から顔を出す。

パイロットスーツを見に纏ったイブが走ってきた。

「出るのか?」アダムが聞こえるように叫ぶ。

「朝からうるさい、見ればわかるはず。」

イブは少し足を止めて振り返る。

「俺も行く!」アダムは部屋から飛び出して、走ろうとしたが首を掴まれる。

クストだった。

「アダム・ヴァレン君。君のタイタスは損傷しているから無理だよ。」

クストがニヤリとしながら言う。

「ガベルのがあるでしょ!」

アダムは手を振り切ろうとするが、離せない。

「私が乗るのよ、寝てなさいな!」

壁に投げつけられて、2人は駆けていった。

「くそっ、早く修理してくれよ!」

アダムは誰もいない廊下でぼやいた。


ブリッジに人影が2つ入る。その後にさらに2人がやってきた。

クレーンが忙しなく動き、女性が来る。

「このパレード用のもの、武装は済んでるね?」

クストがメカニックに声をかける。

「済んでいますが、性能は低いですよ。」

「乗れれば良いんだ、早く行ってくれ。」

クストはメットを被りハッチを閉じる。

モニターが展開され、横にイブの赤いタイタスが映る。

「イブ准尉は行けるな?」クストがモニターに声をかける。

「問題ありません。」イブのタイタスがこちらを向く。

「いちいち動かんで良い。」クストは呟いて、メカニックの誘導に従う。

モニターに2人の男のコックピットが映る。

「ガクハ、ディレスか。」クストは2人の名前を呟きながらコンピューターを操作する。

「少佐、イブ准尉につきます。」

片方の男が言う。

「頼むぞ、そのための我々なのだからな。」

返事を待たずにモニターを切ってカタパルトに足を乗せる。

「クストレギン少佐出るぞ!」

下からどうぞ!と声が掛けられる。

右斜め上の信号機を見つめ、ブザー音とと共に発進が始まった。



「大気圏突入。冷却サポーター起動。」

オペレーターの男が逐一確認し、様々な報告が一斉に行われる。

「新型を小型シェルターに格納しろ。」

デリッドが側近の男に声をかける。

「…なぜです。」

「いいからやるんだ。」

「はっ。」

側近が格納庫に向かう。


「大気圏突破まで、3.2.1……突破。」

オペレーターの男の首が若干震えていた。

「反重力エンジン起動。」

デリッドはその後ろ姿に声をかける。

「反重力エンジン…起動しました。」


艦内に敵機襲来を告げる警告が流れる。

「待ち伏せをしていたか。」

デリッドがため息をつき、砲撃用意を告げる。

「迎撃部隊を出しますか!」

「当たり前だ、黙って落とされるのか!」

「了解!」

オペレーターの男が艦内に出撃命令を出し、ブリッジ横の格納庫が慌ただしく動き出した。

「新型はシェルターに入ったか。」

呟いて、パイロットの出撃準備完了をオペレーターが告げる。

「中佐、新型持ち込み完了いたしました。」

パイロットのコックピットが映し出される。

「よし、トーガンだな。そのまま補給物資も牽引しろ。」

「私がですか!」

「そうだ、インペネスに届けろ。」

「……はっ、ご武運を。」

通信が切れる。 

「弾幕を張れ、援護する!」


ーーハッチオープン、繰り返す……ーー


「新型を持ってくのか!」

重たい音を立てているセルヴスにアッシスが声をかける。

雑音混じりの通信が響く。

「そうだ、牽引する。」

その後ろに四機が続く。

「私はインペネスに向かう。すまん……盾になってくれ。」

トーガンが後ろの4機のセルヴスに振り返った。

「「はっ!」」

5機が射出された。


「新型、あれ…?」

「いえ、あれは従来のモノです。」

男の片割れが呟く。

イブとクスト達は固まって、粒状のものを見上げていた。後ろには巨大ではあるが、先の2隻には見劣りする戦艦が降下していた。

「見えない。」イブが不満気に呟く。

「計器だけには頼ってるからよ。」クスト機がイブ機の肩に手を置く。

「イブ准尉、ヘッドアップディスプレイをお使いください。」

一列後ろにいた男が言う。


「これかな。」コンピューターを操作し、モニターの視界がクリアになる。

イブのタイタスが目元のカメラを拡張する。

「うん、敵機補足。数は……」

「5よ。」クストが焦ったそうに呟く。

「5、ジーネン館長に連絡を。」

イブは一列後ろの男に声をかける。

「アネストに告げる、敵機5と敵艦1。繰り返す…」

「少佐、頭数は負けています。」

ガクハが不安そうに呟く。

「いい年した男がナヨナヨと。少女が冷静で、貴様がドンと構えずどうするか!」クストは苛立ったように怒鳴る。


何かが飛来してくる音。

「鳥じゃない、攻撃…!」

イブの声を合図に散開した。


「あの感じは新型でない。お荷物がいるから、その中にいるのね。」

クストは呟いて機体を上昇させる。


「トーガン隊長、敵機です!」

トーガンの1番近くにいる兵士が叫ぶ。

「よし、上昇してきたのは一機だな!」

トーガンが機体を前進させようとすると、引き止められる。

「通信です、トーガン少尉はこのままインペネスへ向かわれたしと……。」

「了解、ガルーラついてこい!」

「……!僕ですか!」

ガルーラと呼ばれた若い少年は驚いたように声を上げる。

「そうだ、こい!」

トーガンは機体を加速させ、ガルーラはそれに続く。


「逃げるか!」クストは機体を加速させようとしたが、弾丸が道を塞いだ。

モニターの回転と共に、座席の向きも変わる。

肩に担いだバズーカを発射した。


「少佐、アネストが…!」

イブがモニター端から叫ぶが無視をする。

敵は散開し、敵艦に弾が掠めた。


「うわぁ!」デリッド艦のオペレーターが叫ぶ。

「弾を掠めただけで、騒ぐな!あの蝿一機に集中すればいい!」

デリッド艦が攻撃を開始した。


散開した三機の内一機がクストの背後に周り、バズーカを放つ。

「仕返しか、洒落臭い!」

機体の両のふくらはぎにあるバーニアを蒸し、平行にする。

そのまま機体をバズーカの空気跡がある場所に降下させ、根元に突撃をかける。

「一度攻撃した部分に、直ぐには攻撃を重ねられんだろ!」

近接武器のメイスを取り出して、セルヴスの胸を潰した。

「我々がそこにいるから、お前達もそうなんだ!」

機体は爆発し、衝撃に任せてクストは残りの二機に向かう。

「イブ准尉、逃げた二機を!」

ガクハが爆発した。ディレスはそれに巻き込まれ、片足を失って墜落していった。

「邪魔な男達!」イブは叫んで鎌を持ち直す。

「あのでかい荷物持ちがやった!」

操縦桿を下げ、機体を前進させる。


廊下が騒がしい。

「何事だ!」

シャキリは救護室から顔を出す。

「我が軍の新型をインペネスに受領する作戦が……」

「上でやってるのか!」

部屋に視線を返す。

アシュクは泣き疲れて救護室のベッドで眠っていた。

「1番健康な奴がスヤスヤと!」シャキリは舌打ちをして救護室を飛び出す。

「大尉、まだ動ける体じゃ……」

マッタドが声をかける。

「このまま寝るだけで良くなるのか?」

そう言いながら廊下を駆け出す。

「はぁ。」

マッタドは溜息をついた。


「なにっ!」

イブの前に敵艦が降下する。

昨日の敵艦もこちらに近付いてるのが見えた。

「帰ってきた…館長!」

弾幕を避けながら、イブが通信をする。


「わかっています。…さらに2隻降下しているのか!」

ジーネンがオペレーターの報告を聞いて青ざめる。

「クストに連絡を!」

廊下が騒がしく、アダムがまた司令室に飛び込んできた。

「あなたは何度言えば、ここに入るなと!」

ジーネンが叫ぶ。

クリスが眉間に青筋を立てて黙っていた。

「俺も出ます。」

「無理よ、部屋にいなさい。」

ジーネンは突き放す。

「タイタスが動かなくても、あのプロトなんとかに乗れるんだろ。」

アダムの言葉にジーネンがハッとした。


整備室の封鎖ブロックをジーネンは開く。

重々しい扉が自動で開き、一機の機体が吊るされていた。

上空の振動がこちらに伝わり、その度にメカニック達が怯えたような声を出す。

「これがプロトデル・テルよ。」ジーネンはそれを横目にしてアダムに声をかける。

プロトデル・テルと呼ばれたその機体は連結ワイパーにその鋭利な肩を吊るされて、小型の顔と腕が垂れており、細い腕の周りには砲台が4連で装備されていた。足はコマのように集約されて存在していなかった。


「これは飛べるんですか?」アダムが呟く。

「飛べる。足そのものを無くし、反重力ユニットをタイタスの3倍装備しているから出力もある。」

ジーネンがマシーンの下に潜りながら答える。

専属のメカニックがマシーンのコンピューターを弄り始めた。

「武装は?」アダムは腕に視線を移す。

「人類初のビーム兵器が使えるわ。ただ使いすぎると腕ごと焼き切れるし、ビーム粒子は地球の大気を汚染する。」

「そんなもの…!」

「この星に少しの犠牲を払わせなければ勝てないのよ。」

ジーネンは顔を見せずに答えた。


アダムの前にクレーンが用意される。

「乗ってくれ、強化人間。敵艦の増援がくる。」

レッカーに乗った従業員が言う。

「こいつ一機で戦況が変わりますか?」

アダムがジーネンを見据えて怪訝そうにする。

「さっきの威勢はどうした。このマシーンは君専用に作った、イブはこれに乗ることができない。」

ジーネンの言い切りをアダムは疑わしく感じる。

「君が乗らなくとも、別の強化人間がこの機体に乗ることになるわね。」続けざまに呟いた。

「最初から乗るつもりですよ。ビーム兵器を使わなければいいんだ!」

語気を強めて、アダムはクレーンに乗る。

「プロトデル・テルの適合は時間を取る、タイタスの増援頼むぞ!」ジーネンはため息をついた後、扉の先のメカニック達に指示を出し始めた。


「あの鎌持ち、中々慣れた動きをする。」

デリッドは額から汗を流す。オペレーター達がパニックに陥り始めていた。


「豆鉄砲をちょこまかと…鬱陶しい!」

イブが機体を突撃させようとした時、敵艦の右側が爆発する。


オペレーター達が叫び、デリッド艦に衝撃波が走る。

「2番港、大破!セルヴスが誘爆しています!」

オペレーターが振り返る。

「この艦は最早飛べないか…!」

消火を急ぐよう指示を出した。窓から見える整備庫が燃えていた。


「クスト少佐!」イブがモニター上を見上げると、クスト機が近寄ってきていた。

「イブ准尉、無事だな。後の2機はどこだ、こっちは片付けたぞ。」クストが急かすようにイブに聞く。

「この艦が邪魔をしていて…!」

イブの機体に衝撃がきた。片足を失った旨がコンピューターに表示され、バランスを失う。


「准尉!ミサイルだと!」クストは上を見上げた。

豆粒ほどでしか視認できないが敵艦2隻が飛来していた。


「ラッツェル、出撃を頼めるな。」

パイロットスーツを見に纏った女性に艦長であるラダン・ダランが目配せをする。

「了解、新型で行かせていただきます。」

ラッツェルは敬礼をしながら司令室を出る。

格納庫に行くと、新型の黒と紫の機体の側にクレーンが用意されていた。

「ラッツェル大尉、こいつは武装と若干の癖があります。」

クレーンに同伴するメカニックが資料を手に説明する。

「構わん、速度が売りの機体ということは知っている。こいつの名前は?」

「名前?」メカニックが不思議そうにする。

「マシーンといえど名前はあるだろう、登録名だよ。」

ラッツェルはメカニックの手元の資料を指で叩く。

「あぁ、アコニットであります。」

「アコニット…。一番手は貰うぞ。」

メカニックはどうぞと返すが、言葉を待たずに真新しいシートに腰掛ける。

ラッツェルはメットを被り、ハッチを閉じる。メカニックが外で最終確認を取り始める。

「大尉、いつでもどうぞ!」

メカニックが言いながらクレーンで叫ぶ。

モニターにラダンのいるブリッジが映る。

「ラッツェル、デリッド達の援護が目的だ、頼む。」

「了解。ラッツェル・デメルグ、アコニットで出る!」

機体をカタパルトに乗せ、青空と太陽の光に照らされた黒い機体が飛び出した。


「あの黒い機体…!」クストがモニターを拡大させ、機体を目視する。

「アネスト、新型が飛び出しました、接敵する!」

クストは機体を再び上昇させる。アネストからデリッド艦に相対するためのタイタスが増援として出撃する。

「デリッド艦長、増援です!」

オペレーターが緊張が解けた表情で振り返る。

「ラッツェル達がきてくれたか。」デリッドは汗を拭ってニヤつく。


アコニットは降下の勢いそのままに速度を上げる。

ラッツェルはその推力にウッと呻きながらシートから伸びる首の補助目的の首輪を装着する。

「こいつ…これでまだ40パーセントの出力も出ていない!」興奮気味に言いながら、機体の推進剤2本を突き放す。パージされた勢いでアコニットのエンジンが高音で唸る。こちらに近づく機体がいることを伝えるアラートが鳴り響く。

「アコニット、やるぞ!」ラッツェルは叫び、椅子から少し浮いた状態になる。


「あいつ、速い!」横を高速で掠める機体を見ながら、クストは叫ぶ。

固まった弾幕がアコニットから放たれ、散り散りになる。

呻きをあげて機体を掻い潜らせる。

「一芸だけで、命を奪えるなんて甘いんだよ!」

肩のバズーカが熱を持ち、発射される。

耳鳴りが鳴り止むのを待たずに、バズーカをもう一度発射する。

空中で弾同士がぶつかり合い、爆発に変わる。

アコニットは爆風を掻い潜り、煙からすぐに抜け出す。

「ははは、やるじゃないか。祝砲感謝するよ!」

機体をバズーカ持ちに突撃させる。

パァンという破裂音と共に黒い機体が目の前に姿を現す。

「うわっ!」クストの機体の肩が貫かれた。

「槍だと…!こいつ!」


「援軍が来た!ガルーラ、ついてきてるな!」

トーガンが振り返る。

「は、はぃぃ。」

情けない返事。

「若いからな……無理もない。インペネスはあれか!」

さらに爆発。「うわぁぁぁ…!」

ガルーラの叫び声。

「どうした!」

「手、手が、手飛んできた!」

「チッ、ビービー喚くな。」

トーガンはセルヴスの速度を上げる。

ガルーラは半泣きでそれに続いた。


「シャキリ大尉、出撃待ってください、味方の補強部隊です!」シャキリのセルヴスの足元でアッシスが叫ぶ。

「補強部隊だと?二機しかいないぞ!」

機体が格納庫に飛び込む。壁を削って新型が顕になった。

「シャキリ大尉、この新型に搭乗してください。」

トーガンがシャキリ機に声をかける。

モニターにもう1人涙でぐしゃぐしゃになった少年の写った。

「ハッチを早く閉じて〜!」ガルーラだった。

「なんだ、このガキは!」シャキリは苛立って叫ぶ。腹部が痛んだ。

「若さだと思いたいですが…」トーガンはため息をついていた。


バジーリオが格納庫に入る。アシュクも一緒だった。

「大尉、無茶をしないでください!」

シャキリはさらに苛立ち、セルヴスをカタパルトに乗せる。アシュクも何か叫んでいた。

「大尉!?」トーガンが叫ぶ。

「シャキリ・シャクティ出る!ハッチは開けたままにしろ!」

「大尉が出撃しようとしてますが…」

オペレーターの女性がメノクスを振り返る。

「あいつは戦闘になると言うことを聞けんのだ、出させろ。」半ば諦め気味に呟く。

返事を待たずにセルヴスが発進した。


ヴァレンはコンピューターを操作して、モニターを展開させる。

「この機体のマニュアル。ギル・ミーク、これがこいつの名前。」呟きながら操縦桿を起動させる。背中に限定されていた管は首、腕、足にまで接続され、目にはモニター付随の特別なヘルメットを装着した。

モニターにジーネンが映る。

「アダム、イブが撃墜された。回収はしたが、クストが敵に囲まれてる、出れるか!」

ジーネンは額に汗を流していた。

「行けます!」アダムは叫ぶ。それと同時に機体は天井から吊るすレーンごと運び出される。


ーープロト・デルテル発進、総員退去せよ。繰り返すーー

アナウンスが流れ、機体がハッチの前まで持ち込まれた。

エンジンを起動すると、機体が揺れ、尖った両肩から超音波が発生する。

「ギル・ミーク出る!」

機体は投げ出される形でロープを破って出撃した。


「なんだ、あいつは…!」

シャキリはモニター右を見て、叫ぶ。

「あの施設から出たな、やはり奴等は何か隠しているんだ!」

機体の腰に添えられた小型ミサイルを発射する。

「攻撃が来る…!小さいものだが。」

ギル・ミークは機体を加速させ、ミサイルがそれに続く。

「誘導ミサイルなど、小道具を使うな!」

肩の一部が開き、弾丸が発射する。

爆風から逃れるようにギル・ミークはクストの元に向かう。

「相手にしていないだと…。あの大型!」

シャキリもそれに続いた。


クストはマシンガンを放ちながら、距離を取る。

後ろの艦隊からの弾幕もストレスだった。

「挟み撃ちなんてちょこざいな!」

「逃げられると思ったか!アコニットから!」

槍を構えて、新型が懐に飛び込む。


衝撃が来て、マシーンが揺れる。

「腹部をやられた!」

「こいつの速度に惑わされて、お前は海に落ちるんだよ!」

ラッツェルが笑い、再び速度を上げる。


「ラッツェル、動きすぎだ。巻き込まれる!」

ダランがインカムに叫ぶが、ラッツェルから応答はない。


「…うっ!」艦体が揺れ、ダラン艦が傾く。

異常を察知して、ラッツェルが振り向いた。

「なんだあのデカブツは!」ラッツェルが機体をそれに向けた。


「データにありません!」

独り言のつもりがダラン艦から返答がくる。

今になって、機体が艦体に肉薄していることに気付いた。

「そんなことはわかってるんだ!」

ラッツェルは汗を拭い、ダラン艦の片側に着く。


「あれは、アダム准尉か!」クストがギル・ミークに近づき接触する。

「少佐、アネストがおざなりになってます。援護を頼みます!」機体はこちらを向いて言った。首を埋める程の肩の武装の無骨さと対称的に腕は細く、貧相であった。

「准尉、なんだその変なヘルメットは!」

モニターに映るアダムを見てクストはニヤつく。

「いいから!」了解と呟きクストが降下する。


「あれは…私が最初に落とした機体!」

シャキリは叫び、近接武器の剣を構えた。

「敵機がおまけにいたぞ准尉、パレード用だと侮るな!」

クストのメイスとシャキリの剣が重なった。

火花が散るが、片腕を損傷しているクスト機が僅かに押されていた。


「新型にあやかるようだが、死んでもらう!」

シャキリがクストを蹴り飛ばし、即座に加速をかける。

機体の作用に踏ん張りながらも、クストはシャキリから目を離さない。

「ノロマに見えるよ、あいつの後では!」

「セルヴスを見くびってもらっては困る!」


「ダラン艦長、あいつのデータを本国に!」

ラッツェルがブリッジに叫ぶ。

「やっている、デリッド艦の動きがおかしいのだ!」


アダムも超音波を通じて、急加速をかける艦体を察知した。

「特攻をかけるのか、アネストに!」ギル・ミークを翻して、アネストに向けて降下する。


「行かせるか、新型!」

ラッツェルが艦から離れ、ヴァレンを追いかける。

「やっぱついてくるか、すばしっこい奴!」

ギル・ミークは背中から誘導ミサイルと煙幕弾を発射する。


「こんな子供騙しで怯むかよ!」

煙と爆発が起きる直前に機体を加速させ、脱出する。

抜けた先に、真横から迫る質量。


ギル・ミークの細い腕が砲身四つに包まれ、鈍器のようになっていた。

アコニットの装甲がひしゃげ、コックピットの右斜め上をへこませて、ラッツェルを吹き飛ばす。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」ラッツェルは機体を回転させながら落下する。


「ごめんなさい!」アダムはラッツェルを一瞥して、デリッド艦に目を移した。

「ここからじゃ飛び道具が間に合わない!」


アダムは汗を拭う。機体が腕を掲げ、砲身四つにエネルギーを装填し始めた。

「結局これだよ、星に頼らないとなんだよ!」

エネルギーが溜まり、砲身の右腕から熱による蜃気楼が起こる。機体が焦ったそうに揺れ、鼓動が高まる。

ギル・ミークの砲身からビームレーザーが射出された。 

機体が揺れ、腕の回路の一本が焼き切れた。

ビームレーザーは空を照らし、シャキリやクスト、アネスト内のイブの瞳も紫に輝いた。


「デリッド艦長、高エネルギーが来ます!」

オペレーターが叫んだ刹那、デリッド艦の中央をビームが貫き、巨大な戦艦を二つに割った。


「ディフェンデーレ展開、アネストを覆え!」

ジーネンが叫び、アネストの上空を漂っていたタイタス、アネスト自体がシールドを展開する。

艦の爆発は周囲の機体を吹き飛ばし、きのこ雲を作り、破片を飛び散らせて、海に一時的なクレーターを作った。


「これが…アネスト研のやっていたことか、テラーストュートに目をつけられるわけだ!」

クストは機体を海から避けて、後退のためにアネストのバリアの側に近寄った。


シャキリも呻き、吹き飛ばされたが、バジーリオの機体に回収をされた。

「艦長!」バジーリオがシャキリを抱えて、叫ぶ。

ハッチが閉じられ、インペネスは急旋回をする。


「ラッツェルを回収しろ!」ダランが叫び、戦艦が降下を早める。

「ダラン少佐、我々は!」ダラン艦の真横を付随していた艦から通信が入る。

「あぁ、この海域から離れて落ち合うぞ!」

ダランが告げて、汗を拭った。


戦艦2隻が離反していくのが見える。

「追撃するべきなんだろうけど…俺には無理だ。」

アダムは焼け爛れた右腕の砲身を見つめてつぶやいた。











地球侵攻が本格化してきましたね。彼らをどこに向かわせればいいのでしょうか。

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