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第二の星で  作者: ぷりお
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ナショナリズム

一丁前な題名ですね。言葉の意味を知ってるのでしょうか。

「ハイル、ハイル!」

数年前まで世迷いごとと笑われていた男を讃える敬礼が、帝国の広場を埋め尽くした。

真ん中に軍人が、外を国民で円を作っていた。

地面が揺れる、彼が光に照らされて、声は一層強くなる。


しかし、彼がマイクを持つとその声は一気に静まった。

「このような国民と国家が一体化した国を作れたことを私は嬉しく思う。」

「私だけの力ではない、親愛なる諸君らの力添えあってこそのものだ。」

声を上げるものはいなかった。

「しかし、隣人の愛を語るだけでは国家は守れない。時には選択を迫られる。命を奪う選択をだ、そしてそれは戦いの場においては決して悪ではないのだ!祖国を思って、その地!人々、家族に思いを馳せる!

拠り所のない悪意ではないのだ、人を思ってこその残忍さなのだ!それを我々は善意と呼ぶのだ!」


熱が最高潮になる、国家を謳い、軍人と国民の境界がなくなる。


「この映像を見てほしい。」

そう言って彼は自身の後ろにある、巨大スクリーンを指す。


「…繰り返す、攻撃の意思はない、攻撃の意思は……」

「…応じません!少尉、どうすれ…母さん……!」

「帝国に栄光…れ……!」

ガベルがミサイル攻撃を行っている映像だった。

敵兵士の数が増えている。

帝国兵士のコックピットが開かれ、抵抗の遅れた体が掴まれ、潰された。タイタスを模した何かの機体だった。

下からさらに地球軍のマシーンがやってくる。

戦艦のミサイルの雨、死角からの急襲、挟み撃ち。

すべて、地球のテラーストュートの機体だった。

会場がざわつく。

「やはり、地球人は!」

「恐ろしい!」


「これは戦争のごく一部を切り取った者であるが、我々帝国兵が、降伏勧告を出していてもこのように武装のない帝国兵士が虐殺されている。」

あの男が再び壇上に戻ってくる。

「我々が平和的に解決をしようとしても、奴等に拒否される。地球人は選んだのだ。我々に残忍であることを、地球人は選んだ!地球に残された我々の同士を解放しないことを!」

所々で咳をし、汗を拭う動作がある。

「もはや、我々に選択の余地は無くなった。徹底抗戦あるのみになった!地球の侵略者達に選ばされたからだ!」


息切れをしている。

「我々はこの解放戦争で死んでいった者達に報いなければいけない。地球に巣食う先住民を取り除いて、侵略戦争に勝つことこそが我ら唯一の活路である!私は今、この帝国の第一の兵士としてこの地に立っている!!」

轟音が再び地面を揺らす。

「ハイル!ハイル!」

静かな宇宙で野蛮な人類が地球から月へ進出していることを知らしめていた。




「大尉はどうか。」

バジーリオの声に力はなかった。メットを外したバジーリオは疲弊していた。

「はっ、救護室で治療を行っております。命に問題はありませんが、大尉は片目を失いました。」

アシュクが答える。その声は若干震えていた。

「そうか。」

「インペネスに客間があります。少佐もしばしお休みください。」

「あぁ、ありがとう。」バジーリオは短く言って踵を返す。タイタニスの合流を待つ気にはなれなった。

「少佐!」

後ろの声に肩を掴まれる。足を止めるしかなかった。

「ミレンと大尉達のこと、あまり思い悩まれないでください。戦いはこうなのです。」

アシュクの手は震えていた。


「ありがとう、大尉の意識が戻り次第、知らせてほしい。」

「はっ、お疲れ様でした!」

目を合わせることはしなかった。


目が、合っていた。

シスメと言った女を殺して、スレッグとミレン達を自分の盾として殺した。

「本当にそうなのか……?」

静かな廊下であっても、その声は誰に届くこともない。


「……?」

横の機械がピッピッと一定のリズムを刻んでいる。

「なんだここは」

体を起こそうとすると腹部と目元から激痛が走った。

そういえば、片目が真っ暗なのだ。

「大尉、お目覚めですか。」

「お前は。」

眼鏡をかけた初老の男。

「マッタド・スターでございます、この艦の医師の。」

「あぁ、そうだったな………!」

痛みがさっきより鋭くなる。

「無理に起き上がってはいけません、まだ2時間も経っていませんから。」

「2時間?今は何時だ。敵は……?」

周りを見回すと、小綺麗にされた白い部屋と、植物があった。

「19時30分ですな、この星の時間は。」

マッタドは隣の椅子に腰掛けて、紙を捲る。

「我々は撤退しました、大尉。」

撤退という言葉にシャキリの眉がピクッと動く。

「敵前逃亡か、我々が。」

「ものは言いようですな、戦略的撤退であります。」

隣の機器に手を伸ばしてコンピューターを弄る。

シャキリは眉間に皺が寄ったまま、それを見つめる。

「ははは、言葉遊びか。少佐は何をしてたんだ!」

胸の痛みが、悪態の罰のようだが、叫ぶと気が晴れた。

「少佐はあなたを運んでこられたのですよ。」

マッタドは眼鏡を押し上げて言う。

「なんだと?」

「大尉は敵のミサイルに被弾、それを受けて少佐は退却をなさりました。」

死刑囚の気分だった。


今すぐここを出なければ…

勢いよくベッドから出ようとした時、ドアが開いた。

こんな時に邪魔をするなと叫びそうになったが、止まる。

その人物は見慣れた顔だった。

「あ、アシュクか」

「大尉……!」

目元が赤く腫れている。

「大尉、み、ミレンが……!」

「ミレン?そういえば奴はどこだ。お前と一緒ではないのか?」

アシュクが俯く。マッタドも気まずそうに背を向ける。

「大尉…ミレンは撤退の時に……」

「……死んだのか」アシュクは肩を揺らして頷いた。


「私の…盾で…」



「お前は馬鹿か!」頬に衝撃が走り、倒れ込む。

アネストの中で、バタンと大きな音がした。

マシーンの体であるはずなのに、痛覚だけはしっかりしている。

「クリス大尉、ほどほどに…」ジーネンが横から水を刺す。

胸ぐらを掴まれ、ヴァレンはウッと声を上げる。

横のイブは呆れ気味に姿勢を崩していた。

「収容後に暴れ回ったらしいな。しかも寝言をブツブツと。」クリスはヴァレンを正面から睨んで怒鳴る。

「無関係な人間が死んでたんだよ!」

ヴァレンは腕を掴んで叫ぶ。

「やかましい!」ヴァレンはまた殴られた。

「お前はアダム・ヴァレン准尉なんだ、准尉という階級が付いているってことはお前は軍人なんだよ!」

ヴァレンを見下ろして、クリスは叫んだ。

イブの足が目に入ってそちらに視線が行ってしまう。

「多感なのは責めないけど、品性とはそれを行動に出さないことを言うのよ。」

イブは腕組みして偉そうに言っていた。

「クリス大尉、もう良いでしょう。」

遠くから声がして、その場の全員がそちらに向く。

桃色の髪色の女性とそれより背が高い眼鏡をかけた男がいた。

「スターム少尉、もう怪我はいいの?それと…」

ジーネンは言いながら、左の女性に視線を向ける。

「第8部隊所属クスト・レギン少佐、現着致しました。」

桃色の女性は敬礼をしなやかに行う。

ヴァレンは思わずおおっと声を出す。

イブに睨まれ、ジーネンは呆れ気味に余裕が出てきたなと吐き捨てた。

「ご苦労様です、クスト少佐。アネストに付いてくれると聞いています。」

ジーネンが前に出て握手を促す。クストは微笑みながら握手を返した。

クリスも焦って敬礼をする、中年の男が焦る様は情けなくて良い。

「少佐なのに、若いな。」

ヴァレンはイブの足を叩いて言う。

「軍属の学校の特待生上がりで、戦果も上げているからね。」イブが答える。

「あの2隻が初めての敵船じゃないのか?…」

胸ぐらをまた掴まれ、クリスに立たされる。

「お前達も敬礼するんだよ。」クリスはヴァレンの耳元に囁いた。勘弁してほしかった。





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