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第二の星で  作者: ぷりお
75/102

75.【人殺しとアコニット】




「お前達が始めた戦争だ。それを知りながら、なぜ今になって死が怖いか!人を殺すことは恐れず、自分が存在しなくなるのを恐れるなんて!!」


黒い機体は、照明を背に降下する。

身を左に叩きつけ、回避するが、座席に振動が走り。

操縦桿を握る手を滑らせる。


「ロイヤリティ、まだお前の元へはいけない、行きたくない!」


次はさらに衝撃が襲った。エアバッグに包まれ、背中を中心に体が浮かび上がる。


地面を砕き、機体が落下する。沈み込んだ地面から、水が溢れ出し、機体へ降り注いでいく。


ディスプレイの横。


「こ、これ……血。血だ!!」

機体に塗れる。人の鮮血と体の一部。

溢れる水から垣間見える。道路の脇に飛び散った人の塊。

瞳は黒く染まり。白目が見えず、暗い路地裏からこちらを見据える。



「げえっ!」

吐瀉物が、ヘルメットの中を包み込み、急いでそれを外して、座席の後ろへ投げ捨てる。



「これ、これが守りたかったものか。こんな風に死んでいく……人って!!」

エトセーラは肩で息をするが、心臓の鼓動は、エトセーラをなんとか生かそうと、鳴り響く速度を早める。





地面に倒れ込む機体へ向けて、砲身のエネルギーを装填する。


自身の後ろに、上昇するものがあった。


アコニットはそれを振り返り、ツインセンサーを赤く輝かせる。

白銀の機体。しかし、直感できた。



「シャキリ………なんで…」

その白銀の機体から、自身のコックピットへ鳴り響く声。その人間のやるせなさ、自分を咎める意図、死んでいった人間達への想いの全てが混在していた。



「………ギランミかぁ!!」

砲身を再び格納。

操縦桿が軋み、機体は振り向き様に、その白銀の機体へ飛び掛かる。



「シャキリ、この国の人間が、私達と同じルーツであったこと、知らないわけがなかったろうに!」


ギランミは叫び、リバーカンの刃とアコニットの剣が重なって、両の機体は顔を突き合わせる。



「貴様のように、逃げることが出来なかったからだ!

だから、戦うことで生きていくしかなかった!

月で、地球の人間に侵略されることを待つなんて無理だった!」




「私だって、まだ子供でいたかったからだ!」

ギランミ叫び、機体を蹴り押す。


シャキリの呻き声が聞こえ、ギランミは体をのけ反らせた。 シャキリの声音は、成熟しきった男性のそれだった。

11歳の頃の、可愛らしく、跳ねるような声音の面影は消え去っていた。


後退していく、黒い機体を追うように機体を加速させる。ヴィーナの機体が後ろから付随した。



「ヴィーナ、街の人間達を避難させろ!」


「しかし、シェルターが閉じていますし……大佐!ロイヤリティをやられたんですよ!」


「わかっているから、あれは私で片付ける!」

バイザーを上げ、空気を吸い込む。

自身の顔を覆うガラスは曇り、息が詰まってしまうような気分だった。


ヴィーナは何も言わずに、機体を反対側へ向け、加速していく。



「肉親殺しだと……。」

ヘルメットを外し、それを投げ捨てる。

球体型のコックピット、浮いた座席の真下のディスプレイが割れ、破片が飛び散った。



「戦争であるなら、咎められることはない。中尉もこのシェルターにはいない!」


シャキリは天井へ体を向けた状態から、地面へ翻す。

眼下のディスプレイに逃げ惑う人々がいる。

しかし、シェルターには終わりがあった。

連続した建造物の最奥。黒い壁に人が集り、塊をなして、無理矢理突破しようとする車に潰されている。



「街全体を覆うには至らなかったか。」

ロングレンジバレットを組み上げ、自身の背から鳴り響くブザー音に、機体を翻させた。


自身へ肉薄しようという機体へ向け、ビームの塊を2度射出する。

ビームレーザーを放たせたつもりだが、砲弾のように重苦しく放たれた弾丸を、ギランミの機体は軽快に回避する。


黒い天井にそれは着弾し、閃光と衝撃波を放つ。


「出力が下がっている!」

自身の機体の胸部からなる砲身は、黒い煙を先端から上げ、中央にラインを入れた連結部は、所々スパークを起こしていた。


むやみやたらに使った落とし前だった。

これ以後、同じ扱い方をすれば砲身は爆発し、アコニットはそれに巻き込まれるだろう。

自身の武装のパワーに負けてパイロットも死ぬ。

それであるのに、人間はさらに上の破壊力を求める。

人間が気まぐれで作った力によって、

次はその力の気まぐれで人間は殺される。


アコニットの最初はラッツェルに奪われたが、

その後はアコニットと自分は、常に月の使者の代名詞であったつもりだ。


「マンチェスターから、お前とは共に戦ってきたと思っていたが。私の独りよがりか!」


砲身を分解して、再び格納。

この繰り返しの過程でさえ、この武装は軋んで、折り畳まれる動作は明らかに遅かった。


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