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第二の星で  作者: ぷりお
65/102

65.【白銀の機体と黒】

「とうとう、マシーンにまで、女が……!」


スクリーンの上を、静寂の中を漂うそれは、太陽に照らされ、その機体の光沢をこれ見よがしに輝かせる。

対照的な自身の黒と、禍々しい形状のこの機体を嘲っているようだった。



「お前達は受動的であるのが常だからな!一方的に男に犯され、子供を産み落とし、そうしなければ社会の除け者だ!自立した選択は独りよがりとされ、自分を磨く努力は、選ばれる努力と変換される!それが嫌なんだろう。耐えられなかったんだよなぁ!」



「だから、こうやって肉体性を問われない戦いの場になって、貴様らは出しゃ張ってきたんだ。だから、そうやって、女の形をマシーンに取らせるんだ!自分達は戦えると知らしめるために!」


その機体は青空の中にポツリと浮かび、シャキリの言葉を静かに待っているようだった。

冗長が故に、戦いから意識が逸れる自身の癖を、撃墜された戦いで、突かれたばかりだった。

操縦桿を握る手は一層強まる。



「しかしそれでは変わらんよ。現にインペネスの女は、男を慰める道具だ。男より上へ、男と同じようにという意識が前提にある貴様らに、独善が築けるか!甘いんだ!」



絨毯のような雲を弾かせ、再び体は抑えつけられる。

相手を捕捉する枠線も同様に上昇する。

自分の言い分を待っていたというのか。

それであるのに、その慈悲を感じさせる頭部を貼り付けたその機体は、言葉を発しない。


奴の上昇、自身の機体のように星の重さを感じさせる上昇ではない。滑らかに、軽々と上昇を行い、さらに速度をもって、自身より高度を取った。



「それが、どうした!」

砲身からダマになったエネルギーが射出されるが、重苦しい砲弾のようなそれを、機体は軽々と避け、こちらに肉薄する。


爆発的に散った紫の光を、シャキリは一身に受け、目を細める。

しかし、その白銀の機体は、その光を背にしながら、

自身の腕からなる刃を掲げ砲身ごと、機体の胸元へ斬りかかる。



「………!」

砲身を鈍器のようにその体ごと振りかぶる。

眼前の機体を抉るように、遠心で機体は回転した。


しかし、機械がひしゃげる音も、爆発する音もなかった。

球体型コックピットがパイロットへの負担を軽減するよう、シートを動かす音を立て、自身の座席は、眼下の地面のような雲達と平行する。



手応えがないということは……



体が後ろに飛び跳ね、座席に叩きつけられる。

空気が抜けるような情けない音を出し、エアバックが体を包んだ。


かろうじて、眼前のディスプレイに食らいつく。

映し出される白銀の機体は、シャキリの機体を蹴り押し、再び距離を取っていた。



「……遊ばれている。」


追撃が来ない。自身の体が揺さぶられ、回避運動には入れないこと、相手もわかっていた筈だ。

背中のオートマニュピレーターを恐れての行動なのか。

しかし、今ので機能しないことは気付かれた。



再びその機体は両の踵を合わせて、シャキリの機体が体勢を立て直す様を見つめていた。



ノイズ混じりの通信が入り込む。

「極端な演説紛いのこと、ご苦労様です。あなたには可愛げがあります。そうやって相手を蹴落として、戦いの恐怖を払拭するんでしょう。」


コックピットの中で、ヴィーナは嘲るように笑った。


「ギランミ大佐も同じ事をしていました。男だ女だと叫ぶ貴方でも、結局は同じ人間なのだから、やることなんて大差ないのです。」



通信先の女の声は淡々と続ける。


「……ギランミだと。」

シャキリは、姉の名前を聞き、

体の芯から冷たさを感じた。

それは心臓の鼓動を伴い、全身を走っていく。



「自身を奮い立たせるのは勝手ですが、臆病者が毒を回りきらせた舌をペラペラと動かして、相手に手も足も出ない。今後恥をかくのは可哀想なので、ここで警告してあげます。」

その機体は自身の機体を見下ろすように、ゆっくりと上昇する。シャキリの機体は、グッタリと項垂れて、戦意が見られないからだ。



シャキリは歯を見せ、切歯する。

姉の名前が敵機から出てくる。

そして、大佐と言っていた。それが仮に姉であるのなら、地球に住み付き、このような女達を部下に添え、

軍隊ごっこを嗜む。


このような鎖国的な国で、奴は自分より遥かに上の階級を得て、この機体の持ち主に慕われる。


月で退けられた自分を差し置いて………。


ごく一般的な家庭に生まれたシャキリに、家柄のプライドは無かった。しかし、血族の恥は注ぐ気概はあった。

姉が生まれの地を裏切って地球で悠々自適に生きてきたというのなら。



「やはり、殺さなければ気が済まん。生まれの体を持ってして、居所を定めずに、あちこちに寄生する。お前達も同じだ!地球へ居座る猿が、我々を侮辱するなど、許せないんだよ!」


その言葉を聞いて、通信越しに、跳ねるように笑った相手は再びビームを回避する。


背中のマニュピレーターを意識すると、ロングレンジバレットは分解、腰へ収納され、機体はようやくといったように、首の前で折りたたんでいた腕を解放する。

背中からなる右腕は、袖から槍を取り出し、直接操作する腕には剣を持たせる。


「私は、戦いを怖いと感じたことはない。お前が分析めいてそういうことを言うのなら、お前が戦いを恐れているんだ。ギランミの影に隠れて、貴様はコソコソと戦ってきただろうからな!」



「大佐を侮辱するか、月の下衆が!!」

白い機体は初めて声を荒げ、自身の上空から接近する。

ブザーは焦燥感を持ってシャキリにそれを知らせるが、バイザーの下のシャキリは口角を上げた。


やはり、どれだけ高性能であっても、地球の人間は、これだ。

無重力での戦闘は、常に下をとったものが勝ちであるのに、こいつらは常に上から来る。

優位性を見出すその無意識が、命取りであると知らずに。




「……勝てる。馬鹿め!」


背中の右腕からなる槍を、その機体は水中のように体を捻って回避する。

もう片方の腕で、肉薄したその機体の首を掴む。



ヴィーナは座席に叩きつけられ、小さく呻く。

眼前の機体は、その赤を輝かせ、自身を照らし上げた。


合金が断ち切られる音。

機体が大きく傾き、青空は真横になった。


サブモニターは警告と共に、左足を失ったと指し示す。



「ギランミの雑巾が、一丁前に私に説教をする!殺してやるよ、お前の首を奴に叩きつければ、あいつは尻尾を巻いて別の国へ逃げ出すぞ!」



「また、大佐を侮辱した。下衆な鼠が、薄暗い地下から宇宙に打ち上げられて、ペラペラ人の言葉を喋るのは不愉快だ!」



「貴族かぶれの女が!これ以上喋ってくれるなよ、お前に引導を渡してやると宣言した筈だ!」



もう一度槍を突き出すが、コックピットに衝撃が走った。慣性に逆らうように、機体を強制的に上昇させる。


ビーム兵器を組み立て、エネルギーを充填する。

しかし、割り込む通信がある。



「大尉、ここは離脱します!」

ユナのセルヴスが、シャキリの機体の背後に回り込み、抱き寄せるように掴む。


コックピットが緩い揺れを起こす。

気を削がれた。自分の腰巾着にだ。


「……なぜだ。」


「敵艦隊がこちらに近づいています。ここで戦闘を起こしても、消耗でしかありません。」


軍の目的は、この国の侵略だ。空の上で小競り合いを起こしても、首都を破壊しながら戦わなければ意味が無い。無論、こいつらを殲滅してから首都を制圧しても良かった。しかし、この機体のビーム兵器は焼け爛れ始めている。


ユナ・エイジール、やはり優秀な女か。

眼前の白銀の機体も、後ろ髪を引かれるように雲へ姿を消し始めていた。

追撃をできるが、ユナから説教を受けるのはわかりきっていた。


「インペネスへ帰投する。殿はストラッズの奴等にやらせるぞ。」


機体を翻し、セルヴスがそれに続いた。



***



「逃げる?このままやれば勝てますよ!」

ゼガームのククルは敵戦艦を押し出し、敵機を撃墜する。やはり、強化人間であるから一端ではない。


「私も同感だが、どうも慎重に行きたいらしいな。撤退信号だ、ククル!」



ゼガームはこちらを見下ろし、不満気にしていたが、

袖から青い信号灯を放つ。


先程まで敵戦艦の周りを飛んでいた機体は、一斉に身を翻した。


四方の機体が自身の背に駆けていくのを確認する。


「殿をやるぞ、力を持つものの特権だ。」

ラッツェルは機体の腕を上げ、他の機体に続こうとするククルを呼び止めた。


ククルはバイザー越しにニヒルに笑って、機体を回転させて、追従する機体を撃墜していった。









タイトルが浮かびません。次は話数の数字だけになっていたらすいません。

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