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第二の星で  作者: ぷりお
63/101

63.【ロングレンジバレット】

「少佐、敵機です。敵艦は……3。我々では……」


プティッカ級戦艦、「ノクターン」


ブリッジには、作戦指揮のヴィーナ・ラビーネと、イスィーズ・ジェイミールの姿があった。


「そうは言っても、やらなければね。大佐は怖い方だから。そもそも、この部隊をあの地球の戦艦にぶつければ、混乱に乗じて姫様も回収できる。そうよね、イスィーズ?」


ヴィーナはブリッジの壁に寄りかかるイスィーズへ視線を向けた。


「えぇ、奴等はなんの後ろ盾もありませんから。」


「そう。出撃頼めますか?機を見て地球の艦隊の元へ撤退します。」

ヴィーナは用意された座席に座り込み、インカムを手に指示を出し始める。


「はっ、援護が必要な場合は……」


「わかっています。私が出ます。」



イスィーズは顔を歪め、ブリッジの扉を閉じた。

「准尉、私はお前とこういう関係を築きたかったのだ。」


廊下に声がこだまし、イスィーズはその反響を消し去るように足音を立てながら、歩き出した。




***

 


「大尉、敵機出ました。」


左下のユナが呟く。ユナは、使い慣れたセルヴスに乗っているからだろうか。報告も、索敵も出来ている。

どうやらガルーラほどの根性無しではないらしい。


ストラッズから射出された2機がモニター左上に映る。

アコニットと、もう一機は新型だろう。


メインコンピューターを操作する。

腰で、半分に両断された兵器が駆動音を立てながら、

組み立てられる。

アルカロ・アコニットを挟み込むように、バチン!と破裂音を立て、その兵器は完成される。


モニターに映り込む。機体の胸元からなる巨大な砲身。

ロングレンジバレットだった。


「大尉、それを使うのは!」

ユナが咎めるように機体の側に近寄る。



「このマシーンと兵器を手渡したのは、帝国だ!私を実験の肴にするということは、こういうことだよ。」

シャキリは笑いながら、ヘルメットのバイザーを上げる。

メインコンピューターから照準が立ち上がり、砲身の目の前を浮かぶ艦隊を、補足する。


ロングレンジバレットの根本には、それぞれ4本のレバーが上下2本ずつに分かれて作動する。

4本の腕はそれを掴み、重心を固定させる。

銃身そのものがこの機体を巻き込み、依存しているから、機体の反動と姿勢制御の心配は無い。

戦争で唯一褒められるのは、この人殺しへの執着から来る開発力だった。



「お前達を詰ってやれば、少しは気が晴れるだろ!」

砲身は紫のエネルギーを溜め込み始める。




「シャキリ、あなたそんな怖い人じゃなかった!」

ユナは叫びながら、機体を離す。

こちらの艦隊も何かに気づき、距離を取る。

ストラッズの部隊も同様だった。



「シャキリは何をしようとしている!」

メノクスが、ブリッジに入り込む異常な、紫の光を浴びながら、叫ぶ。


「新兵器です!セルビウスに実験的に配備されていたものの、完成形の!」

通信オペレーターの女性は汗を流す。



「そんなものを使うのか!」


「大佐、良いでしょう。帝国へデータを送れますし、

人型のマシーンが敵戦艦を撃墜する。こんなに士気が上がることもない。」


小さなモニターでラダンが笑っていた。



「遊びでないんだぞ!出撃した機体はこちらに寄らせろ!」

メノクスは叫び、それぞれの戦艦に機体が張り付く。




「ラッツェル大尉、あれは!」

ゼガームのククルが叫んだ。


「ふん、当てつけのつもりか、シャキリ。お前は率先して人を殺すが、後で自身の首を絞めるのも、お前であるのに。」


「一旦ストラッズへ下がるぞ!あれが放たれた後、突撃をかける!」

ゼガームとアコニットはストラッズの後ろへ隠れるように退避した。




「同族殺しも甚だしいが、姉と、母親と、父親と同じルーツというのも恥だ!お前達も射線上に来ると良い!電灯に集る虫みたいに、殺してやるんだよ!」


機体がガタガタと震え、銃口からははち切れんばかりに、エネルギー粒子が装填された。

コックピット全体は紫一色で、バイザーが異常を検知し、自動で下がる。


視界が白く染まり、次に真緑と黒を混ぜたようになっていた。

それでも、敵艦からは目を離さない。

あの、夢を犯す下卑た女の記憶。


照準が赤く輝く。振り切るように操縦桿のボタンを押し込んだ。


耳の感覚を無にする音。

一切の途切れなく射出するその濁流は、自身さえも呑み込んでしまうようだった。


機体が後ろに引っ張られるが、腕に力を込めさせ、踏ん張る。


ロングレンジバレットから、雲と大気に大穴を開ける、ビームレーザーが射出された。

それは太陽の光を遮り、街を紫に染め上げ、陸であっても、直視した人間は、視力を奪われる光。



***



「光!?」

機体が高音と紫一色に包まれ、次に橙色と赤を混えて、雑音混じりの通信から、叫びが広がる。


母艦のヤックヌーだろうか。あの二つに割れて、爆発した物体は。


青い空に、星が駆けてくるようだった。


アダム・ヴァレン、やはりジェナを殺してはいなかった。

あの2人は本当に愛し合っていたんだ。



「ジェナ……似合ってるドレスじゃないか。」





「イスィーズ隊全滅、ヤックヌーも撃沈!」

通信オペレーターが瞳を閉じながら、呟く。

ノクターンの横には、一本のレーザービームだろうか。

帝国の、新兵器だというのか。


イスィーズ達のいた場所は、雲ごと掻き消され、

粒子が消え去った後、爆発と轟音が、ヴィーナ達の

戦艦を押し除けた。




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