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第二の星で  作者: ぷりお
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賑やかなノア

夕刻

ノアの内部に4人の影が入っていく。

民間人の受け入れは基本的に推奨されない。

なぜなら、受け入れを行なわれない現地人が不平等だと不満を漏らす可能性もあるし、艦に入るということは生活の保障になっても、常に戦闘に巻き込まれる可能性があるからだ。


それが戦火に晒された国であるなら尚更だ。



「あれがアダムが言ってた民間人。」

クストは入り口のやや離れた場所から、ヴァレン、イスィーズ、ジーネンに引率された少女達を見つめる。


4人の服装は汚れていて、最年少の子供に関しては疲れて眠ってしまったようで、青髪の少女に抱かれていた。


「いつもは上でドンパチやってるからわからないけど、戦いで1番被害を被るのは民間人だよ。」

やるせなさを飛ばすようにため息を吐いて、踵を返す。

すると、前からスタームが駆け寄ってくるのが見えた。


「スターム、民間人を見にきたのか?彼女達はそっとして…」


スタームは汗をかいて、膝に手を当てる。その手には輪っかのようなものが持たれていた。

肩で息をするその姿は、本当に情けない。


「違いますよ、少佐。これヘアゴム。昨日部屋に置いってったまま…。」

スタームはこちらを見上げるようにして、若干紫かかった黒い髪留めを差し出す。


「あっ!」クストは頭に雷を落とされた気分だった。


「スターム、ぱ、下着も置いて行ったはず……」

クストは顔が熱くなる感覚に襲われる。おそらく鏡を見たら茹で蛸のようになっているはずだ。


「今日イブがゴミ捨ての日だったと言って、部屋を漁られたんですよ。下着は窓から捨てておきました。」

スタームの頬を思い切り殴り、クストはそれを踏みつけて去って行った。



食堂に行くと、さっそくジェネ達は食事を取ろうと、カウンターに立っていた。


「アダム。」

横を見るとイブがお盆を持って立っていた。

お盆は2枚重ねられていて、アダムの分と言いながら1枚分けてくれる。


「ありがとう。1人は珍しいな。いつもクスト少佐達と食べるのに。」

ヴァレンはイブに礼を言って、辺りを見渡す。

薄茶色のカフェテリアのような装飾を施されたアンティークな食堂の隅の隅に、スタームとクストは並んで食事を取っていた。


「あの2人ってあんなに親密な感じしてたかな。」

ヴァレンは目を細めて呟く。

クストとスタームに会話はないが、なぜか男女のそれを思わせる片鱗が見え始めていた。


「軍属の人って結構突拍子ないから。」

イブは言いながら、カウンターへ向かって行った。


ヴァレンはよく理解できなかったが、ジェナ達は明らかに軍人だらけの食堂で浮いていたため、そっとそちらに近づく。

イブは既にその4人組の近くを陣取って、周囲の視線を警戒しているようだった。最近、イブを見ていると猫を連想する。


「ここのご飯、美味しいから口に合うといいな。」

4人が座った座席に椅子を一つ持ち寄って、机の空いている空間に食事を置いた。

ファルは何食わぬ顔で食事にありついていたが、やはり、ジェナやラッキは巨漢だらけの食堂を警戒しているようだった。


「ありがとう、アダム。ここ本当に軍の人達の船なんだね。」

ジェナはクリードにお盆を少し寄せるように言って、ファルの汚れてしまった口も拭っていた。

相変わらず、母性を感じずにはいられない女性だと思う。

クリード、ラッキが向かい合わせになっていて、礼を告げた後、そこに木造の椅子を置いて座った。


クリードとラッキはシーフードサラダと、ピザのようなトーストを食べていた。

「それ、美味しそうだな。」

なんとか話題を探そうと視線を動かして、無難な話題を振ってしまう。最近はマシーンに乗って戦闘続けだったから思い出すが、自分は会話が下手な若造だったと思い出す。

女性なんてもっての外で男性とも会話が苦手だったのだ。

つまり、会話相手は植物か小動物である。



「あぁ、どうも。」

クリードは少し視線を泳がせてから、フォークでサラダを口に運ぶ。ラッキは何も答えず、ただトーストを齧っていた。


その間にもお盆を持った軍人が後ろを通り抜けたり、下品な笑い声を挙げたりする。その度に二人は肩を震わしたり、フォークを持つ手が震えていたりした。


やはり、一般人をこのような場に入れてしまったのは間違いだったのだろうか。


「クリード、ラッキあなた達もアダムにお礼を言いなさい。綺麗なお風呂に入れて、食事も寝床も頂いたのよ。」

ジェナは二人を交互に見て、ファルが食事で遊び出すのを見て注意する。


イブや、クスト、スタームやその他のメカニックやノアの乗組員はそれを和かに眺めていた。


しかし、クリード達はそれを見てさらに顔を青くする。

自分がいつも見慣れた身内のような人間も、赤の他人からしたら恐怖の対象なのだ。

ただ、その恐怖を払拭できる優しさをこの人間達が持っているということを、彼らにダイレクトに伝えてあげられないのはなんとももどかしい。これこそが、対人関係の難しさなのだ。


「クリード、あなたいただきますも言ってないね!」

ジェナは隣のクリードの肩を掴む。


「言ったから!ここでそんなこと言わないでくれよ!」

クリードは思春期そのものの反応をしてジェナの手を振り払う。


19歳である自分と、クリードとの年齢差は5歳ほどだが、自分にもこういう時があったと懐かしさと、愛らしさを覚えてしまうのはまだ早いような気もする。


アダムは自身が頼んだパスタを口に運んで、咀嚼する。

どこからともなくクリス・チゴーが現れ、車のおもちゃと共に最年少のファルへ近寄っていた。

ファルはその悪代官のような顔を見て号泣し、クリスは意気消沈したように去って行った。


アダムはパスタを喉につっかえさせ、咳き込む。


「え、大丈夫ですか。」

ラッキは水の入ったボトルを手に取り、それをコップに注いでくれた。

ジェナは座席を立って背中をさすり、クリードはテーブルを拭いてくれていた。


やはりこういう穏やかな回は書いていて楽しいです。ただ戦記ものということはやることをやらなければいけません。

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