強化人間ナーケル・ヨーガ
「あの艦は、フェスターの部下のものです。ジーネン艦長!」
ガラスに貼り付くようにしてメサイアが叫ぶ。
「メサイアさん。戦闘中なんです!ガラスの側に寄らないで!」
クリスはジーネンの隣の、やや低い座席から叫ぶ。
「寄らせたくないなら立て!メサイアさん、本当に味方のものなんですね。」
ジーネンはメサイアを見据える。
メサイアは頷く。額に汗をかき、青い目は若干の震えを持ちながらも、ジーネンの瞳に誠実に応えていた。
「我が艦を出張らせる。あのヤックヌーを敵の弾幕から庇うぞ!」
ノアが加速をかけ、前線へ顔を出す。
「スタームさん。これ!」
ヴァレンはノアに取り付きながらコックピットのスタームに呟く。
「あぁ、これは相手を庇おうって言うんだ。あの小さい方の艦、味方の可能性があるかもしれない。」
スタームは言いながら、飛来する敵機に斉射する。
黒い機体はそれを避け、こちらに反撃を仕掛ける。
ノアに弾丸が掠め、艦体が揺れた。
「スタームさん、上がりますよ!」
ヴァレンのドミティアンがエンジンを蒸すが、スターム機がそれを抑える。
「今上がってはノアの弾幕にやられる!」
「でも!」
黒い機体を追尾するように、ドミティアンが肉薄していた。
「くそっ、またこいつか!」
ナーケルは汗を顎先に滴らせ、機体をのけ反らせる。
「私を置いて弱いものいじめか?感心しないよ!」
クストのドミティアンはミサイルを放ち、アコニットはそれを避けながら突撃をかける。
スピードと槍による特攻は、一撃離脱戦法の決め手であったが、なぜか当たらない。クストは直前まで避ける姿勢を見せず、瞬間で機体の一部をのけ反らせて回避する。
アコニットの顔が蹴られ、視界が遮られる。その間にクストはマンシンガンを取り出し、斉射する。
黒い機体は再び破裂音と共に上昇した。
「チッ、埒が開かないな!」
クストは苛立ったようにモニター上を見上げた。
別の機体が後ろから接近し、クストは機体を上昇させ、エンジンを袖のミサイルで爆破した。
「あの黒いのはどこいった!」
「あいつは強化人間だ。そうでなければ俺と同等の動きはありえん!」
黒い機体は再び加速をかけるが、敵艦から離脱した機体がいることに気付く。
「ヴァレンか!スターム、なんで面倒を見てやれないんだ!」
クストはスターム機に繋いでモニターに叫ぶ。
「あいつ、今少佐が墜とした機体がサウサンプトンを燃やすって!」
スタームは焦ったようにしながらも、ノアから離れられていなかった。
クスト機の側をノアの弾幕が掠める。
「あいつ、そんな余裕はないだろ!」
「アダム、何をしてるの!」
降下しているヴァレンを見て、イブが戦線を離脱する。
「あいつら、降下してるのか、これに乗じさせてもらう!」
アコニットが加速をかけるが、敵艦が邪魔をする。
再び艦に張り付いた機体が狙撃をしてくる。
「洒落臭いんだよ!」
ナーケルは照準をそちらに変え、弾幕を掻い潜る。
「アダム達のところには行かせない!」
スタームが叫んだ。
アコニットの動きが止まる。
「その声、ひどく懐かしい。」
ナーケルは静かに呟いた。
「あの機体、なぜ止まってるんだ。なんでこんな時にシスメ中尉を思い出す!」
スタームはバイザーを上げて汗を拭った。
「よそ見か、黒い奴!」
後ろに再びあの機体が迫っているのを感じて、ナーケルはハッとしたように機体を加速させる。
「またか、それより今はアダム達だ。」
クストは黒い機体が艦から離れたのを見て、バイザーを上げて補給ボトルから水分を取った。
「アダム、何をしてるの!この勢いのままじゃ!」
イブはヴァレンに通信をかける。
「この機体、エンジンを失ったからこのままじゃ街に墜落する!」
ヴァレンのドミティアンの下には、墜落寸前のセルヴスがあった。
「やっぱり、あの人、兄さんの名残を感じる。」
イブはそんな時ではないと感じながらも呟かざるを得なかった。
自分はここ数話、自分の作品をイデオンのような凄まじい作品にしたいと感じて、キャラクターの死をあっけないものにしましたが、そんなことをしてもこの自分の物語はガンダムの下位互換でしかないということを実感しました。ただ作品のコンセプトはこれからも一貫していくつもりです。




