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第二の星で  作者: ぷりお
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侵攻開始

ここまで読んでくださってくれる方がいるならば、本当にありがとうございます。誰にも読まれない拙い文章であることを自覚しているので好き勝手やれます。

「速報です。我らがエルガー帝国、先兵隊サラスシュタイン中将率いるタイタニス所属のアダム・バジーリオ少佐が地球開発の新鋭機、タイタス三機の撃破に成功、内一機を鹵獲したとの報告です。彼はその端正なルックスから絶大な人気を誇っていましたが、今回の作戦におきましても…」

月の国民の歓声が静かな宇宙で一際目立つ形で湧き上がる。


「あの男、一般の出らしいですが、中々に活躍してくれますな。所詮、先兵隊など捨て駒と判断していましたが、総統閣下これは期待できるかと。」

暗い顔をした男が口を開く。


「たった一人の人間の活躍が軍そのものを強くした例はない。ジャンヌダルクのような活躍をしたならば、それは帝国の危機だ。しかし、彼は帝国の象徴として利用できそうだな。」



「来たぞ、少佐だ。」

アッシスに乗った、メカニックの男がハッチを開けるよう促す。

「誘導灯を出せ!連結ロープもだ、少佐が帰って来られた。」

別のアッシス数機がセルビウスの受け入れ準備に入る。


隣のアッシスが肩に手を置く。

「おい、少佐一機か?」

「いや、敵の基地からの攻撃は無かったが、殿をやったんだ。」


メインエンジン周りの出力を制御して、セルビウスが艦内に入る。

ロープで四方から連結され、少し斜めになったようになり、片膝をついて固定された。

その片腕には残骸となった敵機が掴まれていた。


「少佐、スレッグ少尉達は?」

6メートルの巨体から、スピーカーで音声が流れる。


バジーリオが目を伏せる。

「戦死したのか…」

アッシスの乗組員の一人が言う。


「少佐、申し訳ございません。」

セルビウスの整備につかないアッシスの一機が言った。

「いいんだ。人が死なない人殺しなど狩りと変わらん。」

メットを外し、セルビウスの手元を見上げてバジーリオは言う。

「中に人間がいる。」

「は?」



「げほっ、おぇっ」

解体された機体からナーケルが引き摺り出され、乗組員とアッシス3機がそれを囲む。


「こいつだな、少尉達を殺したのは。」アッシスのパイロットがわざと聞こえるようにスピーカーで言った。

「お前もここで殺してやるよ!」

生身のメカニックがナーケルの胸ぐらを掴み、腕を振りかぶる。

「や、やめてくれ…」

ナーケルの顔とメット薄汚れていた。


「手荒な真似はするんじゃない。」

バジーリオがメカニックの手を掴んで諭す。

「少佐、しかし!」

「こいつの肩を持つつもりはない。しかし、捕虜の扱いはこれから結ぶ条約で決まる。あとは言わなくともいいだろ。」

手を掴む力を上げ、離すように促す。

「頼む、私情で動かないでくれ。この軍の目的はこんな小さなことじゃないんだ。」


兵士は悔しそうにナーケルを地面に叩きつけた。

ウッとナーケルがうめくが、誰も手を貸そうとはしない。


「この人間を医務室に連れて行け!」

バジーリオが周囲を見て指示を出す。

兵士二人がナーケルの腕を掴んで起こす。


「おい…」

ナーケルの力ない声がバジーリオに向けられる。


「お前達も初陣なんだろ、お前はシスメを…女を最初に殺したな!」

ナーケルは溜め込んでいた鬱憤を晴らすように叫ぶ。


「負け犬のなんとやらだな。君は捕虜だが、帝国が君をどう扱うかはわからないぞ。」

兵士に連れて行くよう促し、自分も廊下に戻る。

ナーケルは何かを喚きながら奥の医務室へ連れて行かれた。




タイタニスが上空に姿を現す、空を覆い、太陽が隠れる。鉄のような塊に見えるそれは、戦艦であり、空中を浮いていた。

「ジーネン館長、敵の戦艦が姿を現しました!」

「ようやくきたのね。これ見よがしに船を飛ばして、地球の技術力はここまでだと思って……」


「第12部隊から連絡です。」

モニターを見ているオペレーターらしき男が振り向く。

「なにか!」

「第12部隊、上空から飛来する敵機と見られるものと交戦中、ナーケル達に援護を要請しています。」

ジーネンはあれの顔がチラついて再び苛立つ。

「情報がいってないの!?ナーケル達は死んだと伝えろ!!」

「しかし、それでは士気が…」

「事実を伝えて何が悪い、私たちにナーケルのコピーでも作らせるつもりなのか?」

司令部の男の顔が歪む。

「いえ、戦死と伝えます。」

「敵艦の動きは?」

ジーネンが別の男に視線を向ける。

「こちらに向かってはきません。」

「ステルスをかけろ、それでこの施設は感知されづらくなる。」

そう言ってジーネンは司令室を出た。


廊下にはイブが立っていた。

「アダムはどうか。」

ジーネンが廊下に並ぶ質素な白い部屋の中からアダムのいる部屋を見て言う。

「いじけています、相変わらず。」

「匙を投げられては困るのよ。あなたの方が先なのだから面倒を見てもらわないと。」

ジーネンは少し笑った。

「それよりも、ガベルが襲撃を受けたと…」

イブが司令室を見ながら言う。さっきの会話を聞いていたらしい。

「ガベルならこちらに向かうよう伝令したわ。本部が何も指示をしないから、あっちは何もやれないのね。」

ジーネンが呆れ気味に言った。

「出撃しますか。」

イブが聞く。子供に対しての苛立ちを晴らしたいように見えた。



ニューカレドニア海域は静かで穏やかな場所だが、月と地球の距離で最も近い地球の土地であった。


独立第12部隊ガベルはアネストとの合流を敵艦インペネスに足止めを喰らっていた。

艦内ではパニックになった従業員の叫びと怒声が入り混じる。

「敵機多数、全て自由飛行をしています。艦長!」

司令室の男が叫ぶ。ノックチルグと呼ばれた男は額から汗を流していた。

ノックチルグ中佐は29歳にしてこの艦を任された優秀な人間だが、想像もしない事態に対応できるほど臨機応変な人間ではない。

「くそ、タイタスの配備は何機だ!」

こう言っている間にも、司令室と廊下を慌ただしく人がよぎって、怒声が四方から聞こえる。


「えっ?申し訳ありません、周囲の音で指示が聞こえません!」

オペレーターの男がパニックになり始めている。

「新型だ、新型は何機いるんだ!」

ノックチルグはそれに引っ張られまいと、声を張り上げた。

「5です、5機配備されています。全てテラーストュート設立パレードのものです!」


「祝いのためのもの…どれだけ呑気なのだ上層部は!侵攻が始まることなどわかりきっていたはずだ!!」

ノックチルグは椅子を叩き、廊下から慌てて入ってきた、メカニックの肩に手を置く。

武装はされているのかと。

「弾が6発のバズーカと、護衛用のアサルトライフルが一応……」

メカニックが答える。さっきのオペレーターの男はアネストに通信をかけているようだった。


「パイロットは用意できるな?敵が何機出てくるかわからんが、アネストに合流をする。敵を引き連れてもあそこにはネオ・エンズルズがいる。強化された奴等ならば…」

ノックチルグの言葉を待たずにメカニックは出撃口に走った。


「レナ、出撃だ。タイタスに乗ってもらう!」

さっきのメカニックがパイロットスーツを身につけた女性に声をかける。

「タイタス!?シスメではなく私が?」

レナはタイタスを見上げて驚いていた。

「シスメ中尉とナーケル中尉はいないだろ、動かし方はわかるな。」

「やるわ、そのために軍人になったの。このタイタスの操縦は常にシスメ・マイコンに取られていたから、嬉しいぐらい。」

少し顔が引き攣っていたが、レナは嬉しそうにしていた。

「お前を中心に編隊を組ませる。安心しろ、敵も新型だが性能は明らかにこちらが上だ。負ける戦いではない。」

「はっ!」

レナは軽く敬礼をして、マシーンの胸元まで連れていくクレーンに乗り込む。


自分は幼少期から友人のシスメと比べられていた。


そしてそれは軍に入ってからも同様で、彼女の実家のパイプと実力で、タイタスのパイロット権は奪われていた。その悔しさをレナは受け入れられるほど寛容ではないし、そんな人間はいない。人間の嫉妬心は向上心につなげられるが、彼女は器用な人間ではなかった。


「いけるな!」

レナがタイタスを整備していたメカニックの肩を触る。

「問題ありません。レナ中尉ご武運を!」

メカニックがクレーンに乗って下がっていく。


「高い…」引き返せないことがわかる。

足に少し震えが来ていた。艦内の警報に消されるようにフッと笑いが漏れる。

「誰が…」コックピットに乗り込んでハッチを閉める。

「息苦しいな。これも全て空から来るあいつらが…!」

マシーンの駆動音と共にモニターが展開され、両手の操縦桿を握る。


「レナ・レイナード少尉、レオ・フレグマン曹長、ガリオ・スペルス出る!」


三機のタイタスはカタパルトに体重を乗せて、射出された。


「彼女達は勝ってくれますか?艦長。」

出撃をモニターから見送って、オペレーターが言う。

「悪いが、デコイだ…」

次の言葉はなかった。



「敵船から何か出たな、新型かあれは。」


そう言った男はインペネス所属のシャキリ・シャクティ。彼も22歳の若さで大尉の位置につき、帝国学生時代はバジーリオ入学まで、最優秀成績者であった。


「タイタニスのアダム少佐が同じものを回収したらしいな、ミレン伍長。」

シャキリがモニターに視線を向ける。

「はっ、そのようでありますな。さすが少佐といったところでしょうか。」

ミレンと言われた男はモニター越しでも驚いたように肩を動かして言った。

「よせよ。あの男、兵士を盾にして鹵獲したに違いないよ。あの若さであの階級はありえん!」


「大尉も尋常ではありませんよ。敵が来ました。」

彼を宥めるのはアシュク・シンク少尉。

「わかっているさ、私は鹵獲なんぞ甘いことはしない!」

奇しくも敵も三機であった。



「レナ少尉、敵機です。三機!」

レオが震えたような声で言う。


「よし、私がバズーカで牽制をかける!隊が散り散りになったところでマシンガンを一斉射。ハエ落としの容量だ、やれるな!」

レナが指示を出して、バイザーを下げる。

「地球のエリートの次は宇宙人、目の前の奴等は踏み潰してやる!」

肩に担いだ大砲が熱を持ち、発射される。

地上から遠く離れた、鳥でも近付けない高度でも確かに聞こえる轟音。


「大尉、攻撃です!!」

アシュクが叫ぶ。

バズーカは高速で雲を裂き。シャキリ達のセルヴス目掛けて飛来する。

「陽動だな、当たりはしない。散会だ!」

指示の前に三機は散会、宇宙開発の賜物だった。


「避けたな!」

レナは叫ぶが、手には震えが見え始めていた。


シャキリのセルヴスが加速をかける。

「牽制のために弾を使う、悪くない。しかし、人の知恵ではないな、猿知恵だ!」

アシュクとミレンに合図をして、3機が高度を急速に下げる。


「レナ少尉、敵が高度を落としました!」

レナは確信した。撃ち落とせると思って。


「自分達から落とされにきたかー!」

タイタスはマシンガンを構えて、斉射する。

振動で機体が揺れて、シートがレナ達を固定しようと働く。


「大尉!」

アシュクが叫ぶ。シャキリはそれを無視して、高度を一気に上げる。

「やはり攻撃してきた。星の力にされるがままにして、閉じこもってきた奴等のすることは…」

内二機は左右に回避、シャキリ機に至ってはこちらに真下から突っ込んでくる。


「うぐっ………!」

レナが呻く、モニターの角度の限界で敵機が視界に入らない。椅子から乗り出そうとしても、雲と青空が地面から突き放されたことを伝えてくる。


「少尉、この一騎弾が当たらない!」

レオが叫ぶ。

「わかりやすい。甘んじ続けた奴等は!」

シャキリ機から剣が抜かれる。

「近接武器!?」


すぐに爆発が来て、レナ機達を揺らす。

「うわっ…!」

レナは閃光と爆発音に思わず目を閉じてしまった。目を塞ごうにも、ヘルメットのバイザーが手を遮ったからだ。

「少尉、下からさっきの二機が!」

次はガリオの声がモニターから聞こえた。

コクピットから金属がへこみ、何かを弾く音がする。


敵二機が下からからマシンガンを放ってきた。


横でガリオが叫びながら大破し、マシーンの部品と衝撃が機体に飛んでくる。

レナのタイタスは爆発に押し出され、バランスを崩していた。

「まだ、まだやれるでしょ!!」

タイタスのエンジンが唸った。




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