撃墜スコア 1
雲を抜ける。先程の巨大な敵艦をバックにして、あの黒い機体がガディヨットー2機と、メイディーン1機と交戦していた。
「あの敵艦、戦闘になった途端やけに高度を取っている…」
ニョックはガディヨットー達の前に出張るように加速をかける。
雲を破り、味方機の麓へ
「ロペーヌ!姫様が避難なさっている。ガディヨットーを一隻離脱させる!」ニョックがインカムで叫ぶ。
「隊長、しかし…しかしラッタングが!」
ロペーヌの声には涙が絡まっていた。
「ロペーヌ、持ち堪えるぞ。本当にすまない。」
ニョックはそう言って、通信をガディヨットーに繋いだ。
「敵の前でお喋りか?街を燃やされたお前達が!」
ナーケルの叫びに呼応して、アコニットもエンジンを唸らせる。目元を覆われて、顔の半分だけが露出しているナーケルの姿は死刑囚のようだった。
「隊長……我々も……」
「行け!振り返ったら殺してやるぞ!」
ニョックは目元が熱くなるのを感じながら、通信を切る。
後ろの一隻が方向を変えたのがわかった。
「サラス中将、離脱するものがいます!」
マックスが振り向く。
「援軍を呼ぼうというんだな。弾幕だ!ナーケルへの配慮はいらん!」
一際高い場所から弾丸が放たれる。
「くそっ…隊長!」
操縦席に座る、ラーテイルが叫ぶ。
女性の声での悲鳴が無人の機内に響く。
視界が滲んで、青い空が歪んでいた。
離脱したガディヨットーは弾を掠め、ふらつく。
「中将!離脱されます!」
「追えと言ってるんだ!」
タイタニスはようやく高度を雲の中間程度に下げ、艦の向きを変える。
「ロペーヌ、いつもの作戦だ!こいつを…」
「こいつを中心に…ですね!隊長が夜なべして一緒に考えた作戦なんだ!従いますよ!」
二機は突撃をかけるアコニットの真上と真下を取る。
振り子のように動いたことで、2人に引力がかかる。
顔に皺が何倍も増し、胃を掻き乱す。
「蝿が動き回ってもな!」
ナーケルのアコニットはスーパーバレルに熱を持たせ、すぐに弾が発射される。真下に放たれたそれを、ニョックはさらに機体を回転させて、避ける。
ローテンションのような形で機体の上下が入れ替わり、真下のニョックの位置にロペーヌがきた。上にはニョック。
「うげぇっ!」
ロペーヌは回転の引力で嘔吐する。
すぐにバイザーを上げ、呼吸をする。
「ロペーヌ、止まってはダメだ!」
一瞬だった。
機体に衝撃が来て、そのまま地面に引っ張られる。
相手に突撃されたと、敵の黒い機体が自分のいた場所で浮遊しているのを見て、気がついた。
手には、槍。
補強をされた地面は機体を受け入れることはせず、
座席から跳ね上がる形で背中が弾ける。
声も上げられず、呼吸ができない。
外で物音がする。マシーンが近づくような。
モニターを横目で見る。砂嵐だった。
震える手で、バイザーのボタンを押す。
濁ったガラスが顔を覆った。
物音は近づき、機体の上に登った感じがする。
「ハッ……ハッ」ようやく呼吸ができてきて、焦げ臭い匂いがする。
ハッチをチェーンソーのようなものが溶かし始める。
隠れたいのに、体が動かない。
せめて声を上げて涙を出したいけれど、それも出来ない。
ハッチがこじ開けられ、それを警告するアラートが機体に鳴り響く。
小型のマシーンに乗った、歩兵が3人。
こちらを見て、何か言っている。
「た……すけて。」
言えた、言葉を話せた。
破裂音が響き、
ガラスにヒビが入り、目を開けたまま顔に穴を開けられた。
「空中で戦ってるやつだな。死亡確認。」
アッシスの歩兵部隊は機体に火をつけて、侵攻に戻った。




