さよなら、インペネス
昼になっても、ガルーラはインペネスから出ることができなかった。
出てしまったら、ルーラさんやミィカちゃんに会ってしまう。
ウッと口元を抑えて、ガルーラは屈む。
「ガルーラ。」そう呼ばれるのは初めての声だった。
「メノクス大佐。」ガルーラはゆっくりと立ち上がり、敬礼をする。
「メノクス大佐、申し訳ありません、自分は……」
言い掛けて、メノクスから紙が差し出される。
「これは……?」長い文章の下に、メノクスとシャキリのサインがされていた。
「お前は今日を持ってこのインペネスは除隊だ。ガルーラ、お前はタイタニスへ移動となった。」
メノクスがガルーラの肩にそっと手を置く。
えっと、口から出たのか内心で思って言ったつもりになったのかがわからない。
「これからお前の面倒はバジーリオ達が見る。」
まぁその彼も療養中なんだがなとメノクスはつぶやいた。
「自分はまだ…!」
ガルーラの頭に手が置かれる。
「ガルーラ、軍人になったばかりのお前に無理をさせすぎた。この申書は昨日の晩シャキリから受け取ったものだ。」
「大尉…」目の縁が熱くなった。
「シャキリを悪く思わないでくれ。あいつは言葉足らずなんだ。12歳で入った帝国学校の頃からずっと1人な奴でな。私はそこの教官をやっていたんだよ。あの時のあいつはまだ可愛かった。」
メノクスは目をつぶって微笑んでいた。
「あいつ、あのようにしていて女なんて一度も作ったことがないんだ。アシュクに民間ブロックの女性にアプローチしろと何度も言われていたよ。」
ガルーラは下を向いて泣いていた。
「お喋りはおしまいだな。我々は作戦に移る。ガルーラ・マイコン少尉、タイタニスでの健闘と更なる帝国への貢献を祈る。それともう一つシャキリからの伝言だ。予備メットを忘れるなと。」
ヘルメットが渡され、頭の辺りには、シャキリ、トーガン、アシュク、メノクス、ミィカ、ルーラのサインとメッセージが小さく残されていた。
メノクスは敬礼をして、踵を返した。
ガルーラは廊下にうずくまり、メットを抱えて肩を揺らした。
「ガルーラさんへ。インペネスでは親切にしてくださり、ありがとうございました。ガルーラさんがいなかったら、ここでの生活はとても出来ませんでした。 ルーラ」
「ありがとうございました! ミィカ」
「少尉、君は優しい心を持ってる。姉と父を守ってやれよ。 シャキリ」
「ガルーラ、お前は俺の弟だよ。また何かあったら、インペネスに来いよ。 アシュク」
「お前と最初にインペネスへ来た時、お前は泣き叫んでいたな。今もそうだが、お前の泣く理由は優しいよ。そのままでいてくれ。 トーガン」
「ガルーラ少尉、君が作戦概要の度に暗い顔をしていたのを見て、私も心が痛かった。豊かな感性、この星で育んでくれ。 メノクス」




