戦いが遺すもの
爆発はレディングを朝のように輝かせ、きのこ雲を作り出す。
フェスターグリットのガタカールは地面に叩きつけられて、失った下半身から上も、焦げさせ、導線を撒き散らし、オイルを垂れ流す。
コックピットを有する首は、導線一本で繋がっている状態で次第にそれも周囲と、自機の熱によって引きちぎれ、その首は瓦解する建物に巻き込まれた。
建物が燃え、ビームレーザーが直撃した場所に至っては、高温でマグマが溢れ出し、避難が遅れた民間人約1万人を消し飛ばした。
建物をよく見ると、人型の黒いシミが、所々に残っている。
紫の粒子が散り、大気に舞う。灰色のきのこ雲が、空に侵食を始める。
セルビウスは膝をつくように地面に降り立つ。
「やって……やってしまった。スレッグ…シッド」
バジーリオはコックピットにうつ伏せになるようにして、肩を揺らす。
セルビウスを照らす月は、爆発の煙によってかき消された。
「なんだ、あれは」
フラフラと空を舞い上がるアコニットが映し出す、逃げ惑う人々を炎が包み込む様子を見て、ラッツェルは呟く。
喉を焼かれ、血を吐き、倒れ込む子供達。頭巾を被り、必死に逃げ、建物に押し潰される。水分を失い、急速に老いたような人々。服装から、若者であるのがわかった。
ラッツェルはアコニットを不時着させ、モニターを切り、口元を抑える。
「は、吐きそうだ……」
あの威勢は消えていた。
夜であっても、分厚い雲が空を包み、その下を雪のように黒と紫の粒子が舞う。建物が煙を上げ、火が街を覆う。消防隊は愚か、助けに来る機体はいない。
「に、兄さん……待って」
ハンカチで口元を抑え、ヒュッヒュッと過呼吸気味に息をする。街は叫び声と、炎が木を燃やす音で包まれた。心臓の鼓動が、叫びを聞くたびに跳ね上がる。
「あれ……兄さん…真っ暗になっちゃった。ハンカチはどこ?兄さん、何も見えな……」
建物が軸にしていた柱が折れて、その子供の手を遺して叩き潰した。
「英国はこんな兵器を開発していたのか…少佐と大尉を回収しろ!あれはビーム兵器によるものだ、この一帯は放射線に包まれるぞ!」
上空から旋回していたボトの兵士が叫ぶ。
「メロー閣下、夜分に失礼致します。」
兵士がメローの部屋に入り、跪く。
メローは月を移した窓から振り返り、用件を聞く。
「それが……レディングは壊滅状態、フェスター・グリット大尉は戦死致しました。」
兵士は額から汗を流していた。
「なに…!フェスターが…」
メローは信じられないように目を見開き、貧血のように椅子に座る。
「また、レディングでは避難民を集めた施設がありますが、全員が被爆した可能性があります。そもそも、もうあの地域は人が立てる場所ではありません。閣下。」
兵士が汗を流しながら、目配せをする。
自国の被害者となった、少数の民を、他の地域の多数の民のために、殺さなければならない。
「帝国の人間にやらせられないか。」
メローは顔を抑えて、汗を滴らせ呟く。
「フェスター大尉と応戦した敵艦は離脱しました。閣下、被爆した者を他の地域へ向かわせてはなりません。通常の人間と見分けがつきませんが、あのビーム兵器は、核爆弾よりはるかに強烈な後遺症を残すのです。あそこに残った人民は、我が国を退廃させてしまう。」
「喋るな!」メローは立ち上がり、部屋を歩き出す。
「ロンデイルに近いのはわかる、しかしこれは……」
メローは吐き気を催したように、口元を抑えた。




