光る衛星に想いを馳せて
「帝国の最新鋭機だろうがなんだろうが、人の形では、このガタカールには勝らんよ!」
「人の形から脱却するということは、完全なる弱肉強食の世界で生きていくと決意したということ。人の姿に甘んじる、貴様らにわかった話ではあるまい!」
建物にうずくまる、黒い機体に加速をかけようとし、目の前を弾丸が過ぎる。
建物が瓦礫を飛び散らせ、ガタカールは後退する。
「さっきの片割れ、ようやく出てきたな!」
フェスターはモニターの上を眺め、触覚を起動させる。
「このガタカール、機動はおろか、索敵にも長けている。実弾兵器でも使ってみろ、貴様らは民間人を殺し、その中からガタカールが行くぞ!」
上昇しようと、操縦桿を下げた刹那、機体がグラつく。
ガタカールの羽が機能を停止して、地面に叩きつけられる。4本の足は質量を分散させ、地面の崩壊は防ぐ、しかし、突然の落下で地面は4本の足を沈み込ませた。
「チッ、反重力エンジンを搭載していないから、永続的な飛行は不可能か!」
「建物を盾にはしたくはないが、やらなければならん。私が奴に先行する、お前達は左右に分かれて囲い込め!」
バジーリオのセルビウスが加速を掛けながら、後ろを振り向き、二機のセルヴスに指示を出す。
「……!そんなところにいては!」
地面にへたり込んで座っている人間に小型のハンドガンで威嚇をする。地面が盛り上がり、男と女性3人は泣き叫びながら、走り出す。
街は空襲警報を響かせ、太陽が落ち始めていた。
「夜戦になる…そしてダッケル…」
フェスターは空を仰いで呟く。
対空砲の音につられ、再び上空に視線を移す。
「死んだ女を想ってはな!」ガタカールは再び羽を振動させ、羽ばたく。
「こいつ…エンジンの不調だったのか!」
バジーリオがハルバードを構えて突撃する。
斧槍を構えた機体が来る―
「さっきの戦いを見ていなかったのか?自然の恐ろしさを教えてやろうか!」
ガタカールの鎌とセルビウスの斧槍が重なった。それはけたたましい金属の擦れる音を響かせ、火花を散らし、民間人達にそれが散る。
「自然自然と、機体のガワでよく喋る!」
バジーリオは鎌を押さえている斧槍の方でない腕で先程のハンドガンを放つ。
パリン!とモニターを砕く音がして、ガラスの破片がコックピットで当たる映像を流す。主眼の一つが暗くなり、赤くなり点滅を繰り返した。
「ガタカールは6つだ!散弾でも当ててみろよ!」
もう片方の鎌でバジーリオを挟み込む。
「このぐらい!」
「そうはいかない!」
ガタカールの両腕の鎌から針がそれぞれ6本ずつ飛び出し、機体に入り込む。
セルビウスは軋み、節々からオイルが溢れ出す。
「なんてパワーだこいつ…!」
バジーリオが操縦桿を動かすが、錆びたように動きが鈍い。
「平民上がりの女でありながら、その女を愛してしまった。そして今、それはメローの独断によって、死んでいるというのだ、分かるか!」
セルヴスが低空飛行をし、マシンガンの初発を建物に打ち付ける。1発、2発。弾詰まりがしないことを確認した。
建物にズシン、ズシンと弾が撃ち込められる。
「少佐ぁ!」
コックピットで叫び、マシンガンの残りの弾を斉射する。
建物が開けて、バジーリオのセルビウスとそれを捉えるガタカールの背後を取った。
「後ろからだと!うっ!」
羽根に被弾をし、空中で不安定に蠢いた後、
機体が建物に叩きつけられた。
バジーリオも解放されて、建物に叩きつけられた。
「ハァッ、ハァっ」
セルヴスのパイロットは息切れをさせながら、機体をそっと地面に立たせる。
パイロットスーツの袖がバイタルの異常を検知し、警報を鳴らす。
空を見上げると、薄く白い、月が見えていた。
月の帝国で待っている、自分の妻と息子達。
息を吸い込む。
「帝国のために!!」
機体のエンジンを蒸し、ガタカールへ直行させる。
「待て、やめろ!」バジーリオが叫び、セルビウスが腕を上げるが、建物を破壊して、瓦礫と煙を上げながらガタカールが飛び出した。
「そのようなおもちゃで、ガタカールが死ぬか!」
機体は鎌で押さえつけられ、建物に沈み込む。
「あぁっ!」パイロットは衝撃に呻き、頭を打ち付けられる。
「シッド!」バジーリオも顔に血が滴っていた。
操縦桿に手を当てず、モニターに手を掲げる。
ガタカールの頭部は人型機体の取っていた形状を破り、口元が昆虫本来のグロテスクな牙を見せる。
「ガタカールは、貴様を喰える!」
セルヴスの胸元のコックピットに顔を突っ込み、胸部の装甲を引き裂く。ガタカールはオイルに塗れ、再び胸元に食らいついた。
「あ、あぁ!」
歯のようなものが迫り、外の空気がコックピットに入り込む。8月の雨上がりの嫌な湿気。
バキバキと音を立てて、動線が飛び散り、スパークを起こす。
体が痙攣を起こし、コックピットに火がつき始める。
「し、少佐……私の家族に!」
機体は耐えきれないように爆発をした。
炎と煙の中から、黒く焦げた機体を投げ捨て、目を赤く光らせるものがあった。




