暗躍する影、フェスター・グリット
フェスターの部隊8でした!すみません、修正しておきます!
「四機収容!」ハッチが閉じられ、海の青さも共に、灰色の鉄造りのものに閉じられた。
「ヴァレン准尉、ご苦労だったな。」
ハッチを開けると、メカニックのテペリ・サンがバインダーに挟まれた紙と、ボールペンを持ちながらこちらを覗いた。
「ありがとうございます、テペリさん。」
「浮かない顔をしてるな。准尉」
「いつも思うんです。この機体、今はこうやって自分の言うことを聞いてくれているけど、いつかいきなりエンジンを切り出して、自分のような人間をコックピットから吐き出してしまうんじゃないかって。」
ヴァレンは操縦桿とその中央のコンピューターを撫でながら呟く。
「タイタスからこれに変えて、不安でもあったか。」
「いや、なんでもないです。ただ右腕の反応が少し遅れている気がします。モニターの挙動も、左斜めが少し重そうだ。」
ヴァレンは言いながら、テペリのいるクレーンに乗り込む。
「わかったよ。この後は暫く点検を行うから、この機体は乗れないぞ。モニターの録画を確認するが、損傷した箇所がわかるなら今教えてくれ。」
「無いと思います。ではよろしくどうぞ。」
ヴァレンはテペリに言いながらクレーンを下げた。
「またナヨナヨと始まったな、准尉。」
声に振り返るとパイロットスーツのクストが立っていた。
「だって、俺達はこのマシーンの構造も原理も知らないのに、これに命を預けてるんですよ。」
ヴァレンが眉に皺を寄せた。
「君は相手の体の隅から隅まで知らなければ結婚しないのか?」
「人間、知られたく無いことや隠したいことは山程ある。それを人間でないものに変わったら、丸裸にしたいというのは、あまりにも自分勝手な気がしないか?」
クストがドミティアンを見上げながら言った。
「君は生真面目なんだけど、ちょっと臆病なんだよなぁ。」
クストは頭をかいて、ヴァレンの背中を叩き、格納庫を出て行った。
暗い石造りの場所で時折聞こえるカモメの声。
「今は昼か。」汚れた服で顔も黒い煤のようなものが付いたダッケルが呟く。
「明日、私は流刑に処されるんだな。アッカド、私はお前の成長も見れずに死んでしまうよ。」
目の縁から涙が溢れ、せせり泣く声が響いた。
「ダッケル、生きているかな。」
低い男の声が割り込む。
「フェスターか。貴様昨日もそうだがよくこんな場所に現れる。」
鉄格子の向こうで、ランタンの光に照らされる。
フェスター・グリットがいた。
「かつての同僚が、寂しさでのたれ死んでいないか確認してやろうと言うのだ。」
フェスターは馬鹿にしたような笑いと共に言う。
「私をこうした貴様に、そんなことを確認される筋合いは無いな。」
ダッケルがフェスターを見上げて睨む。
「私でなくてもそうしている。ましてや、メロー直属の
メサ・ロトゥンド隊であるならば、貴様はその場で処刑だったな。」
「メロー閣下がそんなことをなされると思った貴様の浅はかさに笑えるよ。彼はメサイア様の側近として…」
「国の御託は良い。」フェスターはそう言って、鉄格子に手をかける。
「ダッケル、私と共に来い。私のロイヤルミーレス第8部隊ならば、貴様の名前を変え、機体を用意できる。」
フェスターがニヤついた。
「貴様何を!…」
「メローとメサイア様はマンチェスターにおいての襲撃でご乱心である。最早あの2人と裏からケチをつける評議会、それぞれに価値は無い。」
「国を統治するものは、首都でもない1地域の壊滅で乱心するような事はあってはならない。」
フェスターは一転して不愉快そうな顔をした。
「ましてやそれがあの月に移住した帝国の兵士であると言うのだ。その地域は最早我が国ではないとするべきなのに、メサイア様とメローはそれに執着する。
メサイア様は19歳だが貴様に死刑を命じる冷徹なお方である。それであるのに、最早使い物にならない地域は見捨てられない。そこを守ろうとした、貴様は使い捨てなされるのにだ。ダッケル、私と共に来る気はないか。」
「貴様、それをメサイア様とメロー閣下に知られてみろ。国家反逆罪でお前は私と共に流刑だ!」
ダッケルは馬鹿にされた気がして、鉄格子を殴った。
腕から血が流れる。
「貴様はメローと評議会が国を統治し続けるこの国が先に行き着くのはどういうものかがわかるか。」
フェスターが呟く。
「お前はメロー達へ忠誠を誓っているのではないのだろう。メローと評議会に全権を委任して、貴様は楽になろうとしている。国民が権力者に国の全てを委任する。そういった国が行き着くのは常に破滅でしかない。怠け者を嫌う月のエルガー帝国の国民はまさにそれになっている。総帥のセリウス・ハルトに、奴等は国の全てを委託したんだよ。そして、我がグレートブリテンもその道を辿ろうというのだ!」
「いずれメローでさえ出てこなくなる。評議会の中の人間が国の全てを握る。」
フェスターは俯いた。ダッケルはそれを黙って睨みつけていた。




