歴史と品性の街へ
巨大な槍がこちらを掠めて、ヴァレンは機体をのけ反らせる。
「槍?デカい!」
ヴァレンは後ろに回った機体を見上げて叫ぶ。
「武器の的がデカいということは、相手の力量は当てずっぽうと言うことだ!」
クストは叫んで、機体を下に加速させた。
推力が体を椅子に貼り付け、腿の辺りが椅子から浮く。
「隊長、来ます!」
「よし、奴を中心に円になれ、そこからは一撃離脱で行く!」
ニョックが叫んで三機が散会する。
「円になるなど回りくどい!」
一機のメイディーンがクストに突撃をかける。
クストは槍が右脇腹を掠める形で避け、掲げた右腕から小型の爆弾を敵機の背中に貼り付ける。
その爆弾は煙を発し、戦場を曇らせた。
「煙幕!?」
メイディーンのパイロットの女が煙を払いながら叫んだ。
「見えないか?私は見える!」
クストは腕の袖から小型のミサイルを射出する。
一機が爆発を起こし、残骸が海に墜落した。
そこらをのんびりと泳いでいたヨットが焦ったように離れ、黒焦げの機体が海を蒸発させた。
「あぁ、海が汚れてくよ…」
バイザーを上げてクストは呟いた。
「我が国のために!」
一機が盾を構えてヴァレン目掛けて突進をかける。
ヴァレンはコックピットにかかる衝撃にウッと呻き、
機体の足に推力をつけ、盾を蹴り上げる。
腕を蹴り上げられて無防備になる。
「こいつ、なんてパワー!」
「あんまり使いたくないけど!」
機体の袖から刃の無い、剣のグリップを取り出す。
それは紫色のビームを発生させ、質量を持ち、そのグリップは剣となった。
「ビーム兵器だと!?」
相対した敵機が盾と槍を構え直す。
コンピューターを操作し、出力を最低限のものにする。
ビームは細くなり、剣と言えるものからレイピアのようになる。
「形状を変える!芸を見に来てるんじゃないんだよ!」
敵機はそれを見て、機体を後退させ、再び前進さるためにバーニアを蒸す。
もう一度突進をかけ、ヴァレンは機体を右に向けて大槍を回避する。
「避けた!?」
「命に変えてもってのは、お前達の両親の前で言ってみろー!」
機体の胸の装甲を貫き、マグマのようなものが出て、コックピットを溶かした。機体は爆発し、ヴァレンは後退をする。
「国に勝手に入ってしまったのは悪いけど、命をかけるほどのものじゃ無いのはわかるだろ!」
「囲めと言って誰もそれをしない、辺境の我々は馬鹿なんだ!」
ニョックが叫びながらクスト機に突撃する。
「ほらな、一辺倒なんだ!」
クストは真上から来るそれをヒラリとかわして、ノアに接近していたガディヨットーに向けて、肩のミサイルポットからミサイルを三発射出する。
「隊長!うわぁ!」
ガディヨットーの一隻が爆散した。
「マルチタスクというのは中途半端ではただの注意散漫だが、私は正真正銘だよ!」
「母艦がやられただとぉ!」
ニョックはバイザーを上げて汗を拭った。
「少佐、2発外れてますよ!」
スタームが叫んで、近づく2機のガディヨットーの弾丸を機体のディフェンデーレで防ぐ。
「あの人、有能なのかそうじゃないのか…」
イブが呟いた。
「まだやれると言いたいとこだが、我々のような少数派は引き際も見極めなければならん!」
ニョックは呟いて、盾を持っている腕の袖から、青色の煙幕弾を放った。
「後退信号!」
ニョック機を先頭にして、ガディヨットー2機が島の方へ翻り、3機のメイディーンが殿を務めた。
「逃すか!」クストは操縦桿を前に倒そうとするが、後ろから引っ張られ、コンピューターに頭をぶつける。
「逃がしてあげましょうよ!」
ヴァレンだった。
「ヴァレン、お前鼻血が出たぞ。」
クストはズビッと鼻を啜りながら顔を抑えた。
「2人とも、ご苦労。見つかってしまったものは仕方ない。我々はこのままイギリスに入国するぞ!」
インカムを持ったジーネンが叫んだ。




