グレートブリテンに片足を入れて
「フェスター、ダッケルはどうだ。」
メローが全体に赤いカーペットを敷かれ、金と白、アンティークとも言える家具に囲まれて紅茶を啜る。
「はっ、暗闇の中で最低限の食事しか取らせていない為、明らかに衰弱しています。このままであれば、謀反の様子もないかと。」
「漂流は明日だったな。海に投げ打つのは簡単だが、我々の新しい施策としてだるまのメーディムを海底に沈めると言う案も評議会で出ている。」
メローが薄い資料をフェスターの前に差し出す。
「海底…お言葉ですが、メーディムは水圧への体制はございません。ましてや手足を切り落とした機体など」
「…。貴様は昔からあの平民上がりを気に掛けていた節が見られるな。女王に毒されたか?フェスター。」
「いえ、そのようなことは。」
「我が国はここ何年も他の勢力の介入を許すことはしなかった。テラーストュートでさえ、我々の介入を避けたのだ。それを、あのような、宇宙に打ち上げられた、コンプレックスで生き延びている帝国の軍隊などに遅れをとって、自害もせずにのうのうと逃げ延びる騎士など、我が国には不要と言うこと、貴様にわからないわけではあるまい。」
メローは眉間に皺を寄せながら呟く。
60半ばという、野心とは程遠い人生を送ることを考える年齢であっても、メローの瞳には、確かなそれが垣間見えた。
「承知しております。これが許されてしまっては、ロイヤルミーレス全体の士気に関わるということも。」
「ではやるのだ。評議会に顰蹙を買うわけにもいかん。」
フェスターは一礼をして、部屋を出た。
「ダッケル、貴様は馬鹿だよ、マンチェスターで死んでいれば貴様の愛した家族諸共死ねたのだ。」
フェスターは眉を顰めて目元を押さえた。
「フェスター大尉!」
こちらに向かってくる兵士に気付いて、フェスターは視線を向ける。
「何事だ、貴様急を要する事柄以外で王室を走るな!」
「それがそうなのです。大尉、テラーストュートの艦が我が国の国境線を越えようとしていると伝令が。」
「なにっ!」
フェスターは目を見開く。
「帝国に乗じてか。奴等はどこから来ている?」
「はっ、ドーバー海峡であります。」
「ロイヤルミーレスはそこには居ないな、ガディヨットー級の部隊がいくつかあったはずだ、それを向かわせろ!」
「はっ!」
兵士は足早に駆けて行った。
「メロー、女王の両親を漂流で殺害し、女王メサイアをアイコンにして自身も評議会の操り人形となる老人、これに乗じて…」
フェスターが呟いた。
「バイセッコーの3馬鹿は帰ってきたか!」
ノアのブリッジでジーネンが叫ぶ。
「バイセッコー3機、収容完了!」
「全く、警察から逃げるあまり、イギリスの警備隊に見つかるなどと、馬鹿だあいつらは!」
ジーネンは眉間に青筋を立てていた。
「艦長、敵の小型船3隻がやってきます!ガディヨットーと言います!」
「ガディヨットーだと?適当な名前だ。ここで目立ちたくはないが、黙って落とされるつもりはない!」
ジーネンは最小限に抑えながらも弾幕を射出させる。
「ニョック隊長、来ました!」
「やってきたな、テラーストュート、月の帝国の真似事をしようってのか!」
ニョックは操縦士の側で叫ぶ。
「他の2隻と連携しろよ、私はメイディーンで出る!」
「隊長、ご武運を!」
ニョックは狭い廊下を渡って格納庫へ向かう。
その格納庫も機体が片膝をつく形でしゃがまされて、
狭そうにしていた。
「メイディーン行けるな!」
ニョックがメカニックに叫ぶ。
メカニックは手を挙げて、人差し指と親指で輪っかを作る。
「敵機出ました、6です!」
モニがマイク付きのヘッドホンを抑えて、ジーネンに振り向いた。
「ヴァレン、クストいけるか!」
ジーネンが格納庫へ通信をかける。
「いけます、ジーネン艦長ごめんなさい!」
アダムがコックピットで申し訳なさそうにする。
「謝らないでくれ、君が私に。頼むぞ!」
ーーハッチオープン、繰り返す…ーー
「このドミティアン、タイタスの数倍の出力が出る。」
ヴァレンが呟きながら、メカニックの誘導に従い武器を取る。
隣にはクストの機体があった。
「イブとスターム少尉はこの艦を守ってください!」
ヴァレンがスピーカーで叫ぶ。
イブとスタームはわかったと返し、ロングレンジの飛び道具を構えていた。
「アダム・ヴァレン、ドミティアン出ます!」
ヴァレンがカタパルトから射出された。
「クスト・レギン!同じくドミティアンで出る!」
クストとそれに続く形で、ノアを飛び出す。
メカニックが風圧に顔を顰めていた。
「敵機、来ましたぁ!」
ガディヨットーから通信が入る。
「来なければ拍子抜けというもの!3機ずつであの2機に取り掛かる、私に続け!」
ニョックは大きな槍と盾を構えて機体を加速させる。
その後に2機が続いて行った。




