海を駆けて
バイセッコーで3人は海のそばを駆ける。
海は巨大で、20キロほどで走るバイセッコーから見る景色は、海の表情を変えない。空を見上げて走っている時と全く同じ感想を抱いた。
悠然とただ、そこにあってくれる。
「ひゃー!良い景色だよ2人共。」
クストが叫んだ。
この叫びは、いつもの怒声塗れた、厳しいものではない。
この景色の素晴らしさを、人に共有したいと言う叫びだった。
「スターム少尉、俺たちはテラーストュートなのに、こうやって遊んでいて良いのでしょうか。マンチェスターは…今も苦しいはずだ。」
ヴァレンが俯いて呟いた。
「准尉、世界で戦争が起こっているから、今笑っていけないというのは苦しいよ。楽しいものは、いつでも楽しい。美味しいものは、美味しいんだよ。自分が楽しむことに罪悪感を持つことと、死んでいった人間への弔いの気持ちをごった煮にして、引き摺ってしまっては、マシーンになってしまうよ。組織に流されて、それでも殺人マシーンになることを選ぶって、そのマシーンに徹しようと言う姿勢が最も人間的であるのに、それを自覚していても改善しないのは、命を台無しにしてしまっているよ。人間は、人間以外になれないんだよ。」
「君も、この景色は綺麗に感じられるだろ!」
スタームはニカっと笑った。
「要は、生きる上で取り憑くうやむやを取り払って、自分に正直である人間が1番地球に求められてるってことだよ!」
「ははは、気取り屋眼鏡の講釈が始まったな!」
クストがこちらを振り返ってケタケタ笑っていた。
「クスト少佐を見習え!あの自由さが君に足りてないよ。」
スタームが背中にポンと手を置いた。
少し心が軽くなった気がした。
「あの3人、楽しそう。」
追跡小型カメラから様子を伺っていたイブが言う。
「今は敵の様子も無いから、あなたも混ざれば?」
ジーネンがイブの頭を撫でた。
「おい、あの3人、空中の制限速度を超過してるぞ!」
見張り搭に入っていて双眼鏡を覗いていた男が隣で木造の机に座っていた男の肩を叩く。
「なんでこんなところをバイセッコーで走る!」
もう片方がバタバタと見張り搭から出て、白いバイセッコーに乗り込む。
「そこの3人!今すぐ止まれ!」
スピーカーの怒鳴り声が聞こえ、3人の肩が跳ねる。
「警察!?」ヴァレンが振り向いて驚いた声を上げた。
「よし、迂回してノアに逃げるぞ!」
クストがバイセッコーを傾けながら叫んだ。
「ヴァレン、仕方ないって何かあったら言い続けろ!
人間なんだから、仕方ないんだ!」
クストはこちらを向いて親指でグッとポーズを作った。




