13.【祝いの日に、黒が持ってきた物。】
街で空襲警報が鳴り響く。
空襲警報が鳴るということは、この街は旧世紀から進化していないということだ。
「やはりだ、こいつらは特権のぶり返しで、中世のプライドを惰眠の理由にしたんだ!」
シャキリは座席から乗り出すようにして、眼下の街を見下ろす。街の人々は入り乱れ、転んだ子供は大人達に潰された。
アシュクとガルーラは機体から火炎弾を落とす。
街が燃えて、人の死体が火葬の形をとる。
モニターには火だけで、先ほどの絵図はなかった。
「こいつ、私たちを狙ってないのか……。」
ダッケルは上空の黒い機体と、それに続く灰色の機体を見上げた。
火をつけている2機もそうだが、まずはあの黒い機体を撃墜しなければ……
「こちらに視線がいくように誘導させろ!」
ダッケルは慎重に降下し、隣の機体に手を置く。
「どうやってですか!」
上に、敵機二機が飛来する。
片方がマシンガンを斉射。
音もなく、先ほどの機体が爆発した。
「街に落ちるな!」
ダッケルの叫びは爆発と、地面を発光させる衝撃に
かき消された。
家の連なりに逃げ惑う人々が、爆発の後には黒いシミと変貌していた。
残りは9。
マンチェスターの建物から、カモフラージュされた
対空砲が展開される。
特定の建造物に設置されたそれは、砲身でシャキリ達の機体を追いかける。
しかし、機動力を持たずに、ただ自分達を見上げているものなど……
「良い起爆剤だよ、馬鹿達が!」
アコニットは煉瓦の混じった煙を破り、さらに街を破壊しようと、機体を加速させる。
「大尉、これ以上は…!」
アシュクはモニターへ叫ぶが、眼前の黒い機体は人々が逃げ惑った先へ向かう。
ダッケルのコックピットの左モニターに通信が入る。
「ダッケル、援護をする、市民を守れ!」
ニーメンだった。
「街で飛ばれては、風圧に人が耐えられない!」
「そうは言っても、敵艦が来ているのだ!」
遠くでニーメン艦が街から飛び上がるのが見えた。
家屋を吹き飛ばしているのがわかる。
「あいつらを海上に誘き出す!」
ダッケルの瞳からは涙が流れていた。
バイザーを上げて、それを強引に拭う。
「しかし、海上は距離が……」
「なら、このまま奴らに好き勝手させるのか…!」
「冗談じゃないぞ!私は、私はここで育ったんだ、家族だってここにいる。今日は妹の誕生日なんだ…」
再び涙が溢れた。
街を破壊されているのもそうだが、家族、なにより妹の安全を優先したかったのが、本音だった。
「大尉、それならば…私は地上から援護します…!」
「おい、待て!」
ダッケルが、下の一機が降下を開始したのを確認し、再び声を荒げる。
一機がエンジンの力を弱め、地上に降りたった。
巨人が空から降ってきた地鳴り。
地面は沈み込んだが、受け入れはした。
「よし…エンジン停止!」
陥没した地面は、ミキミキと音を立て、泥沼に入ったように、その機体を沈み込ませる。
「………!?」
途端、地面が崩れ始めた。
けたたましい音と共に一機は奈落の底に消えた。
「大尉……あれは!」
「この地域はマシーン用に地盤を強化していない、降り立てば、崩壊した地面に巻き込まれる。間に合わなかったんだ。」
残りは8機。
「アッカド、やめなさい!」
母親らしきものが街の爆発の中で少女を抑える。
雪崩れる人々から、その少女を守るように抱きかかえた。
「やめない!お姉ちゃんが戦ってるんだもん!お姉ちゃん言ってたよ、街に悪い人たちがきたら、やっつけて私のところに来るって、お姉ちゃん宇宙人でも、地球の悪い人でも…」
アッカドは建物の間から、黒い空を見つめた。
昨日まで走り回り、姉との思い出の街は崩壊し、
仮に元通りになったとしても、2度と自分を受け入れはしないとわかった。
「お姉ちゃん、助けてよぅ、お誕生日にお人形私に買ってくれるんでしょ。」
空中から、飛来する嫌に高い音。
機体が倒れ込み、地面はその重量を拒絶するように崩れ始める。
「くそっ!人を巻き込んだか、うわぁ!」
その機体は、奈落に沈み始めていた途中、
アコニットに胸部を爆撃された。
「ふん、何をしてるんだ奴等は、地上には降りないで正解だったな。少尉。」
シャキリは嘲るように笑い、後ろのアシュクに振り向いた。
「えぇ、地雷が仕掛けられている可能性もありましたから。」
「少尉、足をつけたいなら建物の屋根を使え。しかし、木製のものはやめておけ。」
「しかし、それでも崩れませんか。」
「………建物がガードしてくれるさ。」
シャキリは吐き捨てるように言った。




