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第二の星で  作者: ぷりお
101/105

101.【介入】



「その壊れた体で生きるのも良い。ここで、諦めて死ぬのも良い!全て、貴様の自由だよ!」


ククルは、先のアダムの叫びを聞いて、自分の足元の空洞に身を潜める人間を即死させていないと確信した。あの規格外の出力で、自分を二、三度死の淵に追いやった人間である。


「人間は自由だ。なのに、この地球は不自由だよ。」


ククルの声は震え、鼓動が激しくなり、体を揺らした。それは秘匿した思いの解放であり、常時発することを抑えていた言葉である。


「他人に対しては無責任じゃないか。それを自由と勘違いしてるからさ、お前達はエルガーの侵攻が理不尽に感じるんだ。もっと分かりやすくないと、そんな頭良くないよな、人間って!」


ククルの気分は高揚した。自分を阻害してきたマシーンが最早その力もなく項垂れている。

それと同時に、上空のダッケルから再び怒声が発された。それは催促である。


「ククル、遊びのようなことはやめろ。先の声を聞かなかったのか。新手が戦場に出張ってきたのだ。なぜそれで遊んでいられる!」


ククルはバイザーを上げて、唾を吐き捨てた。

ディスプレイにそれが当たる。

顔の左半分を大きく歪めて、上空の黒い機体を睨み上げた。


「あの小うるさい女も、いつか俺が殺してやるさ。」


ククルは、答えの返ってこない人形に話すように、

ギル・ミークへ語りかけた。ククルの年齢相応の、子供同士の悪戯を計画するような声音であった。


「だから、俺を見ていてくれよ。次は潰してやるから、破片となってお前は、俺を見守ってくれないか!」


ククルが再び叫んで、ゼガームが振り上げた右マニピュレーターをビームバリアーで包んだ時、アダムのギルには透明な円が回ったように見えた。


ククルはそれを無視して、機体を大きく振りかぶった。若干の軋みに合わせて、それを降ろした時。


機体の右マニピュレーターは空中で火花を上げ、

ギル・ミークを包む閃光に遮られ、反動で機体を後ろの建物に叩かれた。


「なんなんだ!」


ククルは突然の閃光により、両目の視力を一時的に失う。右腕で顔を覆うようにして、苛立ったように叫んだ。


「ククル!貴様の低俗さなどどわかりきったことだが、遊びが過ぎるな!」


ダッケルの声が再びコックピットを包んで、ククルの神経を刺激した。パイロットスーツのファスナーを開き、首筋を掻きむしってそれを払拭する。

目を開いている感覚があるのに、視界は何も掴めない暗闇であるのが、気持ち悪かった。


地面が波打つように揺れて、ダッケルが自分の機体の横へやってくる感覚があった。


「違う!バリアーだろ!」


ククルは弁明するように声を張った。

ダッケルは馬鹿にされたように感じたのか、機体の肩を強く掴み上げて、ククルのいるコックピットを揺らした。


「この期に及んで、冗談を言うな!」


ダッケルがそう吐き捨てた時、上空からブザーが鳴り響いた。赤い機体、しかし鎌を装備していないものである。


「あれか……スタームを殺したのは、お前か!」


クストのドミティアンが、右腕のマシンガンを斉射した時、狙いを定めた黒い機体は、赤い機体の片腕を掴んで退避した。


そして、その上空には戦艦ノアの腹部が建物とクスト達を覆った。


「男の名前などいちいち覚えているものか!」


ダッケルは叫び、ゼガームが自立して飛行するを見て、クストへ接近する。


「艦長、アダムを発見しました!」


ブリッジのクルーが叫ぶと、ジーネンが声を張り上げて、タイタス数機が地面に寝そべるギルへ向かった。



***



「メサイア、今の声はメサイアなの!?」


イブが叫び、機体の右足を屋根の突起に削った時、機体がグラつき、ラッツェルはその隙を見逃さなかった。


「貴様惜しいよ!お前の強さは、まさに帝国が欲している新しい人類そのものだ。誇れよ……!!」


右操縦桿の斜めに位置するボタンを押し込む。

アコニットは格納された四つのスラスターを展開した。

エンジンの四つではなく、両の踵と肘に各装されたものである。


これにより、アコニットは自身が見下ろすイブのドミティアンに向けて、100%の出力で突貫することができる。


ラッツェルは、ファスナーと首輪に包まれた喉を鳴らした。それに合わせて、ヘッドレストからなる鎖も揺れる。


アコニットの爆発的な加速は、自身の身体を砕くものである。それにより、シャキリのアコニットであっても、60%以上の出力は出せない。出さないのではなく、安全装置により出せないのだ。


現に、彼は常に35%ほどの出力でしか戦闘を行わなかった。それは、照準のブレや、機体の姿勢制御の観点もあったが、ラッツェルにとって、それは全て臆病に思えた。


そして、そんな臆病な彼であるから、こうも無惨に死ぬのだとも思えた。



そして、街を包む鳴き声、その声を聞いた時、ラッツェルの両腕はワナワナと震えていた。


そして、アコニットの速度であるのなら、その恐怖を感知される瞬間は来ない。

自分の内心を暴かれるのを恐れたのは、自身に向かう敵機が、明らかにラッツェルの中身を透徹する視線を持っているからである。


「貴様はエルガーの英雄となれるが、子供であったのだ。そして、可能性の宿主が未熟であった時、それは排除して、成熟した者を探すのが、私のやり方なのだ!だから、私を惑わせる貴様は、消えて良い!!」



ラッツェルは叫び、操縦桿を力一杯に引き上げた。

アコニットは地面へ自身の上半身を向け、下半身を天に向けた。破裂音以上の、衝撃波を放ち、筒状の空気を白く実体にして、その中央を突き抜けた。



「うわっ!」


イブのコックピットをブザーが包んだ時には、衝撃が到達し、赤い槍が自身の機体の左肩を貫いていた。


スパークの先で、アコニットの山羊を模った頭部は、センサー・アイを、ドミティアンのコックピットに一身に注いだ。


機体が取り付き、貫通した槍を支柱として、ドミティアンの腹部に、ラッツェルはマシーンの足を置いた。


「ハアッハアッ……」


ラッツェルは座席にもたれ、肩を揺らした。アコニットの瞬間的な出力は、55%に満たなかった。追加のスラスターは、点火をせず、内部のラッツェルを気遣ったということである。それがわかって、ラッツェルはそれでは、自分のこの体の震えはなんだと、内心に呼び掛けた。


「避けられなかった、バリアーのようなものが邪魔をして!」


イブは叫んだが、負け惜しみでもなく、事実である。

槍の穂先が自身の胸部を捉えた時、衝撃波に伴い機体を右に跳ねさせた。左のアポジモーターは熱をもち、機体は弾かれたが、空中で自分を包む円があったのだ。


そして、それ以上の移動は阻害された。

そのために損傷である。


「負け惜しみはよすんだな!!」


ラッツェルがそう叫んだ時、アコニットが大きく揺らいだ。前方の機体の右マニピュレーターが、ラッツェルの機体の首を掴み上げていた。


槍を引き抜こうにも、敵機の圧力が勝って、機体は軋んで全身をのけ反らせるのみである。


「余力がある……!それなら、私の元へこい!」


ラッツェルは叫んだ。命乞いでなく、イブを手に入れたい衝動があった。それは、ククルを管轄に置いた全能をもう一度味わいたい欲求の現れである。



「月には、何もない!お前達は何もないから、地球へやってきたんだ!」


イブは叫びながら、自身のバイザーを上げた。アコニットの瞳の赤は、そうそう悪いものではない。


「しかし、無いものねだりだけで人は生きれんから、こうやって地球へ降下したのだ!わからない話ではあるまい!手に入れる想像だけで死んでいくのは、あまりにも酷ではないか!」


ラッツェルは叫ぶ、左肩から発生するスパークは、ラッツェルの瞳を照らし、バイザーの奥の表情も鮮明に映す。歓喜である。



「それは、そうだけれど……。」



イブはそう言う他なかったから、その通りに喉を揺らした。


そして、二度目のブザーが響いた時、それはイブ諸共爆撃する光である。


「アッ………!」


イブが再び呻いたのは、自分と敵機を晒す閃光を、バイザーを上げた裸眼で直視したからであった。


しかし、爆発の後、ラッツェルとイブの双方は再び青白い円に囲われて、煙を払っていた。


「メサイア・アルメイアだと!」


ラッツェルが叫び、ザラついた通信をイブも受け取り、やはりと確信する。


「律儀なバリアー!私を守って、自己紹介とは!」


ラッツェルが再び叫んだ時、機体の頭部が閃光の元へと向かった。イブも視力の回復を待ち、そちらへ視線を向ける。


やはり、自分達を狙撃する正体は、戦艦ノアからやってくる味方機のタイタスのものであった。


イブは、濁った視界の中でそれに酷く落胆するのだ。




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