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99.報告

さすがに帰ってきたばかりだし、遅れてくるかなと思っていたのに、

今日もお兄様は時間よりも早く王宮に来ていた。


「昨日早く帰るように言われたのは、

 リンネアが言ってくれたからじゃないのか?」


「私はただマティアス様に報告しただけよ。

 お母様から報告が来ていたから。

 部下の家からの報告は伝えるべきでしょう?」


「母上か。なるほどな。でも、ありがとな」


「いいえ、どういたしまして」


お母様から緊急の報告が来たのは一昨日だった。

お義姉様が体調不良で倒れたため、医師を呼んだところ、

どうやら身ごもっているようだと。


いち早くお兄様に伝えたいから、

帰ってきたら屋敷に戻るように言ってほしいと、

そういう願いだった。


それを聞いた私はもちろん、マティアス様も喜んで、

お兄様が帰ってきたらすぐに屋敷に戻すことに決めた。


本当は一週間ほど休みを取ってほしいくらいだけど、

今はゆっくりと休みを取らせるような余裕はない。


マティアス様と私の結婚式が迫っているし、

その前に急いでクララの処罰を決めなくてはいけない。




執務室に向かうとすぐに全員がそろう。

まずはお兄様からの報告を聞く。


「というわけで、クララは確保して戻りましたが、

 あの三人がどうなったのかは見届けていません」


「それについては追加の報告が来ている」


「え?」


「ダニエルを追わないように、離宮に部下を残しただろう?」


「ああ、そういえば。そうでした。では、その騎士たちから報告が?」


お兄様はクララを連れて帝国に戻ってきたけれど、

騎士団の何人かは離宮に残り、

アンジェラ様たちがお兄様を追わないように見張っていた。


そのため、お兄様たちに遅れること半日。

昨日の夜中に帝国に着いていた。


マティアス様への報告は紙面で行われ、

それを私も今朝見せてもらっていた。


「ダニエルが離宮を出た三時間後に、

 エルドレドの王宮から騎士たちが到着したそうだ。

 そして引継ぎをしたのち、帝国の騎士が離宮を出発しようとした時、

 ナタニエルが亡くなっているのが確認された」


「ナタニエルが?亡くなったのですか?」


「ああ、そうだ。ベッドに座ったまま、亡くなっていたそうだ」


「ベッドに座ったまま……いつ亡くなったのでしょうか」


「それはわからないな」


「そうですか……」


直接会って話をしていたナタニエル様が亡くなったと聞かされたからか、

お兄様が落ち込んでいるように見えた。


けっして仲が良かったわけではないけれど、

私も今朝知った時には暗い気持ちになった。


素性もわからない者に治療させたナタニエル様が悪いに決まっているけれど、

すがりたくなる気持ちもわからないでもない。


かといって、クララをさらうなんて許されることでもない。

なぜ、そんな暴挙に出てしまったのか。


……いいえ、昔からそうだったかもしれない。

何よりも自分のことが大事で、次はアンジェラ様。

そのほかはどうでもいいように見えていた。


王族も公爵家も、学んできたことは変わりないのに。


亡くなったナタニエル様と私たち。

どこで運命が違ってしまったのだろう。


「王女とサンドラはまだ目に見えて体調の変化はないが、

 エルドレドの監視下に置かれることになった。

 おそらくどちらも長くはもたないだろう」


「そうですね……先に治療を始めたのはナタニエルだと思います。

 順番に亡くなっていくのでしょうね」


「で、連れて帰ったクララなんだが、過去の例はどうなっている?」


それに答えたのはアラン様だった。


「平民同士の殺し合いは両方を罰することで解決しますが、

 一方的、しかも大量の殺人となりますと、石打ちの刑になりますね」


「石打ちの刑か」


「ユーリイスの遺体も腐らないように保存してあります。

 二人を並べて石打ちの刑になるでしょうね」


ユーリイスも……。

もう亡くなっているのに石打ちの刑にされるのね。

ほんの少し同情していたら、ケニー様が口をはさんだ。


「そのユーリイスはもう死んでいるんだろう?

 わざわざ石打ちの刑にしなくてもいいじゃないか?」


「では、ケニーは大事な妻や親、これから生まれてくる子が殺されても、

 もう犯人は死んだんだから許せ、と言われて納得するのですか?」


「っ!!」


淡々と語るアラン様にケニー様も口をつぐんだ。


「家族を殺された平民たちは恨みを抱えています。

 その恨みはもしかしたら帝国の王族に向かってくるかもしれない」


「おいおい、アラン。それはどういうことなんだ?

 考えすぎだろう?」


「いいえ、よく考えてください。

 クララとユーリイスは帝国の王族の血を引いていると言っていました。

 銀色の髪だからそれを信じた人も多かった。

 だから、治癒術も信じた人が多かったんです」


「……それはまだ、帝国の王族だと信じているという事なのか?」


マッケート様は自分も王族の血を引いているからか青ざめた顔をしている。


「真偽はともかく、帝国の王都でそんなことを大っぴらに言い、

 教会ではできないような治癒術を使った二人がいた。

 それが原因で死者がでたのなら、なぜ皇帝は二人をそのままにしているのか、

 平民たちはそう思うでしょう」


「そうだな。帝国の王族の威信にかかわる事だろう」


「このままではその恨みが帝国に向かってくるかもしれません。

 お二人の結婚式の邪魔になる可能性があります」


「平民たちが何かしでかすと?」


「不満から暴動を起こす可能性はあると思います」


暴動!クララたちが活動していた場所は王宮から離れている。

それでも暴動が起きた場合は、結婚式どころではない。


「だからこそ、お二人の結婚式の前に、

 ちゃんと帝国側がクララとユーリイスを捕まえ、

 処罰したという姿勢を示すことが大事なんです」


「……その通りだな。アラン、この件は任せてもいいか?」


「はい。お任せください。

 マティアス様とリンネア様は結婚式の準備で予定がいっぱいです。

 こんなことで惑わされている時間はありません」


「すまないな。頼んだ」


「はい」




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