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94.思わぬ知らせ

あともう少しで完成するマントを大事にしまって、マティアス様とのお茶の用意をする。

そろそろ休憩でこちらに来る時間だ。


皇太子の婚約者としての仕事も忙しいけれど、

私室でマティアス様と二人きりでいられる時間も大事にしたい。


「式までまだ時間があるのに、もう完成してしまいそうですね」


「そうね。毎回、あともう少しだけって止められなくて。

 いつの間にか進んでしまったのよね」


「私たちもリンネア様が楽しそうだから、

 お止めするのをためらってしまうのですよ」


「ふふふ。そうね」


少しからかうようなマリアの言葉に素直にうなずく。

前回の時とは違って、マティアス様への想いをこめて刺繍している。


結婚式の時にこのマントを羽織るマティアス様は素敵だろう、

なんて思っていると楽しみで仕方ない。


学園も卒業試験を終え、無事に卒業することができた。


気がつけば、結婚式まであと一か月。

もうすぐマティアス様の妃になれる。


そんなことを考えていたらマティアス様が部屋に来ていた。


「なんだ、楽しそうだな。何かいいことでもあったのか?」


「いえ、特に何かあったわけではないのですが、

 もうすぐ結婚式だと思いまして」


「そうか。それだけ楽しみにしてくれているのはうれしいな」


お茶を淹れようとしたのに、マティアス様に腰を抱かれ、

ソファに一緒に座らされてしまう。


「マティアス様?」


「お茶は後ででいい。少しリンネアとこうしていたい」


「……はい」


微笑まれて見つめあったら、ゆっくりと唇が重なる。

もう何度となくこうしてふれあっていて、

少しずつ身体の中の熱を感じるようになっていた。


「……今日はこのくらいにしておいたほうがいいか。

 これ以上は俺が止められなくなりそうだ」


「……そうしてください。立ち上がれません」


「わかった。落ち着くまでこうしていよう」


それ以上は何もされず、私が落ち着くまでそっと抱きしめられる。


気がつけば周りには誰もいない。

私たちが同じソファに座った時点でどこかに行ってしまったらしい。


少しして、そろそろ落ち着いたと思い立ち上がろうとする。


「お茶を淹れますね」


「ああ」


その時、ドアがノックされる。


誰だろう。マティアス様に用があるにしても、

私の部屋に訪ねてくるなんて、急ぎの用がある時しかありえない。


「マティアス様、リンネア、ダニエルです」


「お兄様?」


部屋の中に誰もいなかったからか、マティアス様が立ち上がってドアを開けに行く。

ドアを開けたのがマティアス様だとわかってお兄様は驚いていた。


「ああ、誰もいなかったのですか。

 申し訳ありません。緊急で知らせておいた方がいいかと」


「何があった?」


「クララの居場所がわかりました」


「本当か?」


「はい」


マティアス様はとりあえずお兄様を部屋にいれてソファに座らせる。

私は三人分のお茶を淹れてからマティアス様の隣に座った。


「どうやって調べたんだ?」


「ユーリイスの遺体から、まず殺したものを探させました。

 前日の行動や、胃の中の物から、貴族が関わっているのかと思いましたが、

 実際には裕福な商人が関わっていました」


「どうして商人がユーリイスを殺すんだ?」


「ユグドレアの貴族からの依頼だそうです。

 令息を殺された恨みを晴らしてほしいと」


「ユグドレアで治療した者の家族か……」


「そのようです。そちらの貴族家がどこなのかは調べさせております」


「それならクララも殺されているのか?」


ユグドレアでの恨みなら、治療したのはクララのはず。

ユーリイスだけ殺して恨みは晴れるとは思えない。


「それなんですが、ユグドレアの貴族には二人とも殺したと報告したそうです。

 その裏で、別の依頼を受けて、クララは売り飛ばしたと」


「売る?娼婦か、奴隷か?」


「いえ、治癒術の使い手として探されていたようです」


「治癒術……それなら、その相手は騙されているという事か」


「帝国側が治癒術の死者を公表する前に捕まったようです。

 知らないで売ったのかもしれません」


「それならわからないでもないが……死者が増えるだけだな」


クララが治療すればすれほど、死者が増える。

どこに売られたのかはわからないけれど、

騒ぎになっていないのなら貴族が囲っているのかもしれない。


「売った先が問題なのです。

 ……エルドレドでした」


「なんだと?エルドレドの貴族か?」


「いえ、元王太子がいる離宮です」


「!!」


驚きのあまり、両手で口を押さえた。

まさかナタニエル様がクララを買ったの!?


「買い手はナタニエルか?」


「そこまではまだ。売られた先が離宮なのは間違いありません」


「エルドレドからは何も報告がないということは、まだ死者は出ていないのか……。

 離宮にはナタニエルだけじゃなく、王女とサンドラもいる。

 誰が治療されていてもおかしくないな」


「治療させたくてクララを買ったのでしょうか」


「そうでなくては裏家業の人間に頼んだりはしないだろうな」


地毒で全身が腐りかけていたナタニエル様とアンジェラ様。

そして馬車の事故で右足を切り落とされたサンドラ様。


重い病気や怪我は教会で治すことはできない。

それでも元の自分に戻りたいと思うだろう。


そんな時にクララの評判を聞いたのだとしたら。

どんな重い病気でも怪我でも治せると聞いたのなら。


あの方たちなら、どんなことをしてでも手に入れたいと願うはずだ。


「どうするか……騎士を向けたほうがよさそうだな。

 被害がこれ以上拡大して騒ぎになるのは避けたい。

 とりあえずクララを保護させよう」


「それなら、マティアス様。

 私に行かせてもらえませんか?」


「お兄様が?」


「ああ」


でも、お兄様が行けばアンジェラ様が騒ぐはず。

何を考えているのかと思ったけれど、マティアス様はにやりと笑った。


「何か思うところがあるのか。いいぞ、ダニエルに任せよう。

 皇太子代理の権限をやるから好きにしてこい」


「ありがとうございます」







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