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93.終わりを目指して(クララ)

「帝国の王族を名乗る不届き者なんて殺しておいたほうがいいわよね。

 もしかして、マティアス様に褒めてもらえるかしら」


「っ!?」


急に殺気を感じて、この女が私を本当に殺してもいいと思っているのがわかる。


「ま、待って!あなた、怪我をしているんじゃないの!?

 私なら治せるわ!!」


「何、それ?ふざけているの?」


「ふざけてなんていないわ!

 私がここに連れて来られたのは治癒術が使えるからよ!

 帝国の王族なら秘術が使えるの知っているでしょう!?」


「本当に?本当にこの怪我が治せるとでも言うの?」


私が治療できるかどうか疑っていると思ったけど、そうではなかった。

女性はひざ掛けをめくって見せた。


「っ!!」


「ほら、治せるというのなら治療してみせなさいよ」


「あ、足がない……」


「馬車の事故のせいで切り落とされたのよ。

 これでも治せるというの?」


どうしよう。まさか足がないなんて思わなかった。

こんな大怪我を治せるわけない。


だけど、治せないって言ったら殺されるかもしれない。


「……治すのに時間がかかるけど、無理じゃないと思う」


「は?まだそんなこと言うの?」


「だって、私が治療してる二人だって鼻や耳がなかったもの!

 でも、少しずつ治ってきているわ!」


「治ってきている?あの二人の顔が?」


「そうよ!だから、きっとその足だって時間さえかければ……」


「……わかったわ。やってみなさい。

 効果があったら、生かしておいてあげるわ」


一応は納得してくれたらしい。

ほっとしたけれど、ここで効果がなかったら殺されるだけ。


疲れている身体を引きずるようにして車いすに近づく。

手をかざして力を使うと、女性の身体を光の輪が包んだ。


どうか、効果があると思ってくれますように。

祈るような気持ちで治癒術を使う。


どれだけ時間がかかったのか、顔から脂汗が流れ落ちる。

もうこれ以上、力なんて出ない……。

その場に崩れ落ちるように座る。


「……すごい。傷口がふさがって、少しだけど肉が盛り上がってきてる。

 これなら本当に治るかもしれない……」


「……そうでしょう?」


よかった。効果があった。

でも、もう疲れて何もできない。

このまま部屋から出て行ってもらおう。


そう思っていたら、ドアが荒々しく開けられて王子が入ってきた。


「使用人に呼びに行かせたのにどうして来ないっ

 ……なんでサンドラがここにいるんだ?」


「あら、久しぶりね。本当にまともな顔になってきてるじゃない。

 どうして私にこの者の存在を教えなかったのよ」


「……サンドラは足が片方ないだけだろう。

 俺たちの治療を終えた後でもいいと思っていたんだ」


「はぁ?いいわけないでしょう。

 これからは私もこの者の治療を受けるわ。いいわね」


「……仕方ないな。順番は守れよ。

 おい、お前、早く俺の治療をしろ!」


そんなこと言われても、もう動けないほど疲れ切っている。


「……今日はもう無理よ。

 その女性の治療をしたら力がなくなってしまって」


「いいからやれ!」


無理やり立たせられて、お腹を殴られたけれど、

何をされたところで無理だった。


二度殴られた時点で床に倒れ、意識が遠のいていく。

その後、蹴られたようだけど、その時にはもう気を失っていた。



それから毎日三人の治療をさせられた。

三人とも争うように私のところに来ては治療をしろという。

そのうち、部屋に連れていかれ、匿うようにされたが、

他の二人が探しに来ては違う部屋に連れていかれる。


自分の部屋に戻ることもできず、治療をすれば気を失う。

もうこの離宮に連れて来られてから何日が過ぎているのかもわからなくなっていた。


ふと、王女に治癒術を使う時に自分の手の甲が目についた。

老婆のようにしわくちゃになった皮膚にぽつぽつとあざが見える。


……どうしてこんな手に?

驚いて頬に手をやれば、皮膚がかさついているのがわかる。

鏡……鏡が見たい。私の身体はどうなっているの?


「何をさぼっているの?早くしなさい!」


「あのっ……私の顔はどうなっているの?」


「顔?そうね、しわくちゃの老婆みたい?老けたわね~。

 初めて会った時は同じくらいの年だと思ってたのに。

 いつの間にそんな風になったの?」


「……そんな……老婆だなんて。

 あなたたちのせいだわ!

 こんなに毎日治癒術を使わせるから!!」


「そんなこと知らないわよ。

 ここで生活させてあげているんだから、その分ちゃんと働きなさいよ!」


ふざけるなと叫びそうになった。

ここに無理やり連れてきて、殴ってでも治療させて、

食事や睡眠だってまともにとれていないのに。


……道連れにしてやる。

なるべく王女の身体の魔力を使ってやる。

そうすれば寿命が短くなって、同じ目にあうはず。


こんな老婆のようになった身体で生きる意味なんてない。

もう助からなくていい。

三人も同じ目にあわせてやろう。


それからは嫌がらずに治癒術を使う。

最初は難しかったけれど、そのうちだんだん慣れてきて、

相手の魔力を最大限に使うコツがわかってきた。


治癒術を使うとだるくなるようになってきたのか、

三人は終わったとたんに眠るようになってきた。


鼻と耳、足は少しずつ元に戻ってきたけれど、

三人の体調は悪くなっていく。


それでも三人とも治癒術のせいだとは気づかず、

身体が治ってきたことを喜んでいた。


あと少しで鼻が戻ると、王子は鏡を見て楽しそうに笑う。


「完全に戻ることができたら解放してやろう」


「解放?」


「ああ、そうだ。帝国に戻してやる。

 だから、頑張って最後まで治せよ」


「……わかったわ」


こんな身体で、お父様が殺されたあとで、

帝国に戻って何ができるというの。


怒りで震えそうになりながら、顔には出さずに答える。

治療が終わるまであと少し。

きっと、寿命もあと少しで終わるはず。


そう願いながら治癒術を使い続けていた。





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