85.捜索する者たち
すぐにでも行けるように準備を始めたが、
何度も捕まえようとしたからか、クララたちは見つからなくなってしまった。
「警戒しているのか、活動を休んでいるのかわからないな」
「活動していなければ、誰か匿っていることになりますね」
「そうなれば探すのは難しいな」
「目立たないようにして探させましょう」
これまで以上に捜索する場所を広げた上、
騎士を目立たない服に着替えさせ、街をうろつかせる。
そのうち、下町に詳しい騎士から情報が入り始めた。
「クララたちを探している者がいたと報告がありました」
「俺たち以外で?」
「他国から来たものではないかと。
人を雇ってまで探しているようです」
「他国……考えられるとすればユグドレアか?
前国王なら治癒術ができる者を欲しがるのは理解できるが、
今の国王は前国王が死んだのは治癒術のせいだと気がついている。
それなのにクララたちを探す理由はなんだ?」
「報復というのはありえませんか?」
「前国王を死なせたことの報復か?
あの国王が好かれていたとは思えないが」
「それもそうですね……」
亡くなった後で報復を考えるくらいあの国王が好かれていたとは思えない。
わざわざ帝国まで探しに来るほどの理由にはならないだろう。
雇われたというものを捕まえて聞き出せばわかるかもしれないけれど、
騒ぎを大きくするのは避けたい。
「もしかしてクララたちが隠れている理由はそれでしょうか?
帝国の騎士以外からも探されていると気づいたとか?」
「そうかもしれないな。向こうが見つける前に見つけ出さないと」
「こちらが探すのを邪魔されないといいですね」
何が目的で探しているのかはわからないけれど、
大々的に探されるとクララたちが警戒して出て来なくなってしまう。
捜索する方法を見直した方がいいのか考え始めた頃、
騎士にこっそり情報提供してくれるものがあらわれた。
クララたちを探しているという荒くれ者たちが、
平民に乱暴なことをし始めたらしい。
治療されたわけではない平民にとっては、
クララたちは厄介者に過ぎなかった。
クララたちがいなくなれば荒くれ者もいなくなるはずだと、
早く何とかしてくれと居場所を教えてくれた。
「リンネアは用意できたか?」
「はい」
「よし、行こう」
カルラに用意してもらった服に着替えて王宮を出る。
平民服ではなく、下級貴族あたりが着るようなワンピースだった。
目立たないようにするには平民服のほうがいいのだけど、
もし私が平民だと思われて被害を受けるようなことがあれば、
相手を処罰しなければならなくなる。
貴族だとわかれば平民はめったなことはしてこない。
目立ちたくはないけれど、さすがにこれは守らなければいけない。
マティアス様も動きやすそうな服を着ているが、
一目見ただけで貴族だとはわかるものだ。
馬車も普段王家が使うものではなく家紋もないけれど、
平民が乗る馬車とは大きさが違う。
完全に平民のように変装することはできないため、
馬車は少し離れたところで止めて歩くことになる。
下見をしてきたクリスが小声で案内してくれる。
「こちらです」
「場所はどういうところなんだ?」
「この地域の集会場になっているところです。
そこで昨日から匿われていると。
中にクララがいるのは確実ですが、ユーリイスのほうは不明です」
治療した平民の家が小さくて泊まれなかったために、
クララたちは地域の集会場に滞在していた。
今は次の滞在場所や食事を提供してくれそうな平民を探しているらしい。
「裏口から入れるようになっています」
「鍵はかかっていないの?」
「ありません」
ここからはマティアス様たちとは別行動になる。
私が先に入り、クララと話す。
その間にマティアス様たちはこっそり入って隠れる。
ユーリイスが秘術を使って逃げる前に、
とりあえずクララだけでも捕獲できればいい。
「リンネア様、私がドアを開けて先に入ります。
大丈夫だと判断するまで待っていてください」
「ええ、わかったわ」
マティアス様たちが見守る中、私とカルラが集会場の裏口に近づく。
一度うなずいたあと、カルラがドアを開けて中に入っていった。
待っていると、カルラがドアから顔を出す。
大丈夫だったようだ。何も言わずにドアの中に入ると少し薄暗い。
声が聞こえる。隣の部屋にクララがいるのがわかった。
「ありがとうございます!
まさか本当に歩けるようになるとは」
「よかったわね!でも、見つからないように気をつけてね。
私たちは王家から追われているから、
治療を受けたことを知られたらひどい目にあうかも」
「王家から!どうしてですか?」
「えっとね、ほら、見てわからない?この髪」
「銀色の髪なのは他国の人だからかと思っていましたが、
まさか王家の血をひいて……?」
「内緒よ?だから追われているの」
「わかりました!誰にも話しません!」
こんな風に治療した相手に説明していたから、
誰からも通報がなかったんだ。
治癒術を使った後、悪化した者たちもいただろうに、
通報したら処罰されると思っていたら言えるわけがない。
治療を受けた者が集会場から出て行ったのか静かになる。
クララたちだけになっているのなら、今が話せるいい機会かも。
カルラが隣の部屋に続くドアを開ける。
そこにはクララの背中が見えた。一人でいるのか、ユーリイスの姿が見えない。
「こんにちは、クララ」




