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天国と地獄

 「ミズキさん、ルナさん、おはようございます。」


 目が覚めた。

 起こしに来てくれたのは、ドリーの妹のサリーだ。


 ドリーより少し首が短く、まつ毛が長い。

 性格は温和で、可愛らしい雰囲気の人で、想像していたイメージとぴったりだった。


 「朝食ができていますので、支度が済みましたらお越しください。」

 そう言って、上品に長い首をぺこりと下げ、客間を去って行った。


 いいなぁ、俺も妹が欲しかった。

 実際に妹のいる奴は、妹なんてロクなもんじゃないみたいなことを言うけど、絶対そんなわけないね。


 「ふぁぁあああ!!!」

 俺は、眠気覚ましに大きく体を伸ばし息を吸い吐いた。

 布団で寝たのは久しぶりだ。


 隣で寝ていたルナを起こそうと布団に手をかけると、中でロックも一緒に寝ていた。

 猫みたいに丸まって、小さな寝息を立てている。


 最近ロックはルナにべったりだ。

 どこに行くにもくっ付いて行って、ルナが居なくなると「ピィ」と悲しそうに泣く。

 もう、かなり大きくなってきたが、まだまだ子供なのだろう。


 とは言え、産まれたときはルナの半分もなかったのに、もうルナの半分は優に超えている。

 竜の成長と言うのは早いものだ。


 しかし、ルナの布団の中はカオスだな。

 美少女の隣に地竜の雛、その間に神の遺品である大剣と来たもんだ。

 何も知らないで、布団を引っぺがしたら卒倒するんじゃないか?


 そんなことを思いながら、ルナを起こし、お互い寝間着から旅着に着替える。

 昨日の晩飯も美味しかったから、朝食も楽しみだ。


_______________



 居間に着くと、ドリーとドリーの家族が食卓に座っていた。


 昨日は、急に押し掛けた俺たちを温かく迎えてくれて、今はこうして美味しい朝食を振る舞ってくれる。

 本当にいい人たちだ。


 さて、今日から穴掘り作業開始だ!

 張り切って行こう。


 スコップを持って、現場に着いたら、モグラ族がすでに作業を開始していた。

 彼らは夜行性のため、昨日の夜から作業についていたらしい。

 

 しかも驚くことに、もう指輪を一つ見つけたとのことだ。


 死者の指輪。


 銀色の指輪に琥珀色の石が所々埋め込まれている。

 何と言うか、至って普通だな。

 普通に露店とかに売ってそうだ。

 もっと、髑髏がついてたり、不気味な指輪を想像していた。

 

 「これ、本物か?」

 

 試しに指輪を付けてみたという者の話を聞くと、いきなり辺り一面真っ暗になり、目の前にバス停が現れたとのことだ。


 そしてそのバス停には大きく天国行きと書かれていたらしい。


 「クロス=マーシャルの本の通りですね。」


 「ああ、どうやら本物で間違いなさそうだな。」


 クロスの本によると、目の前に現れるバス停は天国行きと地獄行きの二種類があり、指輪を着けた人によって、行き先が異なるようだ。


 そもそも霊界とは、天国と現世、地獄と現世の狭間の世界。

 現世から天国、地獄に着くまでの亜空間のことを言うらしい。

 今異変が起きてるのは、この霊界であり、恐らく天国行き(若しくは地獄行き)のバスに何か問題が起きていると思われる。

 

 天国行きの人の魂を無事に天国に送り届けることが出来れば今回は御の字。

 地獄行きの人の魂は、ぶっちゃけどうなっても良い。

 というのが、街のみんなの考えだ。

 なんか地獄行きの人が可愛そうな気もするけど、仕方ないか。

 というか、俺地獄行きじゃないよね?

 たまにちょっと話を盛ったりするけど、大丈夫だよね?神様?


 俺たちは、引き続き作業を開始し、5日でおおむねの作業が終わった時に出てきた指輪の個数は4つだった。

 これ以上は、大樹に負担をかけすぎるという理由から、ここで作業を終了することとし、いよいよ霊界への調査を開始するメンバーを選出することとなった。


 メンバーは、まず、町長の一人息子であるレイン。

 自身の婚約者の魂がどうなっているかわからない状態でもあることから、自分は必ず参加するとのことだ。


 あとのメンバーは、俺とルナとドリーだ。

 地竜討伐、黒影撃退の噂から、適任とされた。

 まぁ、ルナが居ればどこに行っても安心できる。


 準備も整ったことから、みんなで一斉に指輪つけた。

 

 「せーーーのっ!」


 これは…。


 指輪をはめた途端、今まで見えていた物は、すべて消え去り、辺りは何も見えなくなった。

 本当に真っ暗だ。


 そして、その後すぐに目の前に光り輝くバス停が現れた。

 そこには、こう書かれている。


 【go to heaven】


 ほっ、天国行きか。 


 「ミズキさん!」


 「うぉ!ドリーか。」

 

 後ろを振り返ると、ドリーとレインの姿があった。


 ただ、ルナの姿が見えない。


 「あれ?ルナは?」


 「おかしいですね。忘れ物ですかね?」


 「かなぁ、うーん。あっ、そういや、指輪つけるときにロックがルナにべったりくっ付いてきてたからなぁ…。引き剥がすのに手間取ってたりして…。」


 「一旦指輪はずして見に行きましょうか。」


 まったく、ルナはロックに甘いよなぁ。

 付けていた指輪を外すと暗闇が消え去り、元の世界に戻ってきた。

 

 あれ?

 立ちくらみか?

 頭がクラッとして、視界がぼやけてる。

 心なしか少し体もだるい。


 うーん。やっぱり生きたまま霊界に行くっていうのは、あまり身体によく無いのかも…。

 なるべく早めに帰って来るようにしないとな。


 立ちくらみが治まり、目を開けると…。

 ありゃ?

 ルナは目の前にいた。

 なんかぼーっとしてるし、ロックも離れて見守っている。

 

 「ルナ…?」


 「すまん、ミズキ。俺、地獄行きだ。」


 「…え?」


 「えーーーーーー!!!」


 大変なことになった。


 最大の戦力であり、我らがクロスピースの紅一点であるルナ=ウインドさんは、実は悪人だったのである。

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