モグラ族指輪捜索隊
「イグルーじゃないか!うわー、久し振り!」
「久し振りモグ!ちっこいのもキリンさんも久し振りモグ!」
「おう!」
「お久し振りです!」
モグラ族のイグルーは、穴倉の街「basement moon]で出会った俺達の友人だ。
何でも、街にある無数の洞穴の一つを掘り進んでいたらこの街に繋がったらしい。
あそこからここまでの距離は相当離れているはずなのに、よくもここまで…。
しかし、懐かしい。
穴倉の街での地竜討伐からもう半年以上は経つ。
あの時は、俺は右手を負傷していて、イグルーに治してもらったんだよなぁ。
どこかでまた会いたいとは思っていたが、まさかこんなところで会うことになるとは、巡りあわせと言うのはわからないものだ。
「ユグドの下を掘るって聞いたモグ。僕達に任せてほしいモグ!」
無邪気にスコップを振り回す姿が頼もしくも愛らしい。
「この樹、物凄くでかいけど大丈夫!?」
実際、ユグドはでかい。幹の周囲は何と100mを越えるそうだ。
この木なんの木、気になる木~♪で有名な【モンキーポッド】なんて比べ物にならないくらいでかいし、以前何かの本で読んだのだが、世界最大の太さを持つ【トゥーレ】という木でさえ、根元の周囲は50m程度だったはずだ。
だが、そんなことは何ともないといった様子で、イグルーは微笑んだ。
「全然大丈夫モグ!任せろモグ!」とのことだ。
まったく…。頼もしい限りである。
「よろしく」と言い、イグルーの小さな手と握手すると爪が刺さってちょっと痛かった。
そう言えば、前にもこんなことがあったっけ…。
「さて、早速作業に移るぞ。モグラ族の指示の基、ユグドの下に埋まっている死者の指輪を掘り当てる!」
ユグドの麓まで着くと、レインが力強く号令をかけた。
モグラ族指輪捜索隊いよいよ始動である。
よし来た!
力仕事なら、俺もルナもそこらのショベルカーよりは役に立てる自信がある。
それに、その道のプロであるモグラ族も100人近く居る。
これは思いの他早く終わるかもしれない。
と、思ったのだが、早速掘り進めようと、スコップを地面に突き立てたとき、背後から作業を止める声が聞こえてきた。
この街の町長である豹の獣人クラウドだ。
「何をしておるか、馬鹿者!!ここを死者の魂が眠る大樹と知ってのことか!?」
「うるさいぞ、親父!そんなことは当然わかってる。訳あってのことだ、邪魔をするな!」
「レイン!また貴様か…。貴様は何にもわかっておらん!ユグドに傷がついたらどうする!ただでさえユグドに異変が起きているこの非常時に輪を掛けるような事ばかりしおって、少しは街のことを考えんか!!!」
「考えてるから、色々試してんじゃねえか!町長会議だかなんだか知らないが、近隣の代表がそろいもそろって何一つわからず仕舞い!俺は、俺のやり方でユグドの異変を解決してみせる!年寄りは黙ってろ!!」
案の定、レインと町長が喧嘩を始めた。
二人とも、白豹の獣人とは思えないくらい顔が真っ赤だし、牙も爪も剥き出しで、今にも襲い掛からんばかりだ。
一先ず事情を説明して、落ち着いてもらわないと、これは作業どころじゃないぞ。
「あの、町長さんすみません。」
「何じゃ貴様は!だまっとれ!!」
うおっ、事情を説明しようとしたが、一喝されてしまった。
こうなってしまっては、どうしようもない。
何とか冷静に話を聞いてもらいたいものだが…。
困り果てていた時、町長の後ろに居る人物と目が合った。
どこかで見たことのある顔だ。
トカゲ族と思われるその男は、俺達を見た後に町長に向かって話し始めた。
低く落ち着いた声だ。
「クラウド町長。その者たちの話を聞いてやってはくれないか。その者たちは、我々の街を救ってくれた英雄なのだ。その者たちが一緒にいるということは、何か理由があるのだろう。」
あっ、思い出した。
この人、穴倉の街の町長さんだ。
地竜から街を救った時に、ひどく感謝されたっけ。
「むっ。それではこの者たちが、たった3名で地竜を討伐し、街を救ったという…。とてもそうは見えんが…。」
「ということは、ドリーも一緒か?地竜討伐には、我が街のキリン族の戦士ドリーも加わったと聞いているが。」
「町長…、お久しぶりです。地竜討伐に関しては、実のところ私は大した働きはしていません。全ては、こちらのお二人がやったことなのです。私たちの話を聞いてくれませんか?」
おっ、いいぞドリー。
クラウド町長の顔色も赤から白に変わり、少し落ち着いてきたように見える。
「ふむ…、わかった…。話くらいは聞いてやろう。」
ふぅ。良かった。
やっぱり人脈と言うのは大事だね。
俺たちは、ことの詳細について、順を追って説明した。
レインもクラウド町長も喧嘩っ早いため、二人をなだめつつ説得することには骨が折れたが、何とか理解を得ることができた。
ただ、十日掘り進めて何も見つからなかった場合は、作業は中断し、元の状態に戻すことと、決してユグド本体を傷つけないことを条件に出された。
まぁ、それぐらいの条件は仕方がないだろう。
実際、クロス=マーシャルの話もどこまで信頼できるのかもわからないしな(ドリーは完全に信頼しきっているが)。
そんなこんなで、気付けば辺りは真っ暗である。
作業は明日の朝から始めることにし、俺たちはドリーの実家に泊めてもらうことにした。
ドリーの話では、実家には両親と妹の三人で住んでいるらしく、当然みんなキリン族だ。
どんな人たちかはわからないが、きっと長男が家に帰ってくるのを首を長くして待っているに違いない。




