趣味の悪い館の主
新年あけましておめでとうございます。(今さらですみません…汗)
昨年、私の拙い文章を読んでいただいた皆様ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
んー、多分もう朝だな。
目を開けなくても大体わかる。
この感じ、たぶん6時ってところだろう。
「…………」
しかし、こんな薄気味悪いソファーの上で眠れるとは…、流石どこでも寝られるミズキさん、我ながらあっぱれだ。
「…………」
ただ、いつもの朝に比べると何か貼り付くような違和感がある。
なんだろ、呪いか何かだろうか。
一先ず目を開けてみる。
「おはよう。」
すると緑髪の男が俺の顔を覗きこんでいた。
というか顔があった。
てか近い、物凄く近い!
「うわぁぁあ!!!」
俺は、ソファーから飛び起きて距離をとって、キョトン顔で俺を眺めているそいつを見た。
こいつ、何のつもりだ?
白雪姫と王子様じゃあるまいし、あんなに顔近づけるんじゃないよ。
荒くなった呼吸を整える。
「ふぅ…。」
あれ?
人間だ。
昨日の魔物、クロス=マーシャルと同じ顔をしているが、目は二つ、手足も人間のそれと同じだ。
うーん?別人か?
じろじろと眺めていると、緑髪のイケメンが話しかけてきた。
「随分と警戒してるじゃないか。君の姿に合わせてあげたんだが、おかしなところでもあったか?」
「クロス=マーシャルさんで?」
「左様。」
「姿を変えることができるのですか?」
「左様。」
「お…おはようございます。」
「おはよう。」
随分と雰囲気が違うな。
昨日とはうって代わって禍々しさと言うものが綺麗さっぱり消えている。
さわやか、そう、さわやかだ。
普通にイケメンだし、好青年にも見えなくはない。
初めからその姿だったら、良かったのに。
「えーと、それで、私になにかご用でしょうか?」
「ああ、君が起きるのを待っていたんだ。」
「ちょっとこちらに来てくれ。」
「え!?俺一人でですか!?」
「取って食ったりはしない。」
ほんとかな?
まぁ、その気になれば、寝てるとこをあっさり殺すこともできたんだろうし、大丈夫か…。
「行くぞ。」
クロス=マーシャルに促されて、大部屋の中央階段を上り、5分程度歩いた後、一際怪しい雰囲気の漂う部屋に着いた。
部屋の前に「解体新書」なんて看板がぶら下がっているし、僅かに開いた扉の隙間から薬品の匂いがプンプンする。
「ここだ。」
うっわ、まじかよ。
絶対入りたくねえ…。
「あのクロスさん。」
「なんだ?」
「他の部屋にしませんか?」
「なぜだ?ここが一番いい部屋だからわざわざ連れてきた。遠慮するな。入れ。」
「お…お邪魔します。」
恐る恐る部屋の中に入ってみると、想像したよりも薄気味悪かった。
魔物の身体の一部と思われるものがホルマリン漬けにされているビンが棚にぎっしり並んでいる。
それらが、たまにビクビク動くものだから、不気味でたまらない。
「理科準備室を百倍薄気味悪くしたような部屋だな。」
思わず心の声がこぼれた。
だが、館の主人はそんな言葉は聞こえてないらしく、これまた気味の悪い骨で作られた椅子に座り、どこか上機嫌で俺に話しかけてきた。
「君の細胞は面白いね。」
「ほら、見てごらん。」
そう言って差し出されたクロスの左手を見ると、肌色だった人差し指が先端から根元にかけて黒色の鱗で覆われていった。
黒色の鱗は徐々に広がり、指の第2関節位までいったところで、爆発音が起こり指がちぎれた。
「うわっ!」
「こんな感じで中々暴れてね、うまく制御できん。」
「今まで色々な細胞を身体に組み込んできたが、君の細胞の拒絶反応はその中でも断トツだ。」
「君の出身は?種族は?」
「私はこの世界の地上、地下、魔界、天界のあらゆる場所を旅したつもりだったが、黒竜に姿を変える能力なんて始めてみたよ。」
差し出された左手の指がブクブクと音をたて再生していく。
うわー、ヤバイヤバイ。こいつ、やっぱり化け物だよ。
「えーっと、俺は、この世界の人間じゃないんです。」
「ちょっと、遠くから来まして~、あの~、えーっと…。」
ああ、ダメだ。頭がうまく働かない。落ち着け、落ち着け…。
「ん?まぁ、取りあえず落ち着こう。これでも飲んでくれ。」
クロスさん。それ…、それ…、めっちゃドス黒い色してるんですけど…。
ええい!やけくそよ!
俺は渡された、ドス黒い何とも言えない匂いのした液体を飲み干した。
「あれ、美味しい。」
「ホッコリ草の根を煎じたものだ。気分が和らぐ。」
ホッコリ草て、いかにもホッコリしそうなお名前ですな。
ふぅ、でも文字通りホッコリしてきた。
こいつ案外いい奴かもしれん。
まぁ、正直に話してやるか。
「信じてもらえないかもしれませんが、異世界から召喚されてきたもので、元は地球というところに居たんです。」
俺は事の詳細を大まかに話した。
すると、よほど興味があったのか、それからびっしりと質問攻めにされてしまった。
生まれつき黒竜に変化できる能力を持っていたのか?だとか、君の世界にはどういう種族がいるのか?だとか、色々だ。
まぁ、その代わりに色々と教えてくれた。
この世界に存在する街でお勧めの町、魔界の行き方、海底都市と空中都市に住む英雄の話。
どれも興味深い話だった。
特に魔界への行き方…。
どうやら、魔界へ行くには魔族が一人一緒にいないとダメらしい。
また、本来の黒竜についても詳しく教えてくれた。
どうやら黒竜は、魔王クラリスの配下に加わっているらしい。
本来の黒竜とは、一体どんなものなんだろうか。
一頻り俺への話題を話終えた後、彼は、思い出したかのように俺を見て話始めた。
「ああ、そうそう。」
「あの娘。凄いね。何者だい?」
「ルナのことですか?」
「あの娘はいいね。凄くいい。人の身でありながら、あそこまで鍛え上げられたものを見たのは初めてだ。一部でいいから肉片を提供してもらえるよう頼めないかな。」
「それは無理だと思いますが。」
「ふむ。無理やり奪いたいところだが、あの娘、全く隙がなくてね。寝ているときですら、間合いに入れないなんて、全くもって興味深い。」
くくくと、クロス=マーシャルは笑った。
「まぁ、いいか。君の細胞に一番興味があったからね。君に比べ彼女はただの人間だ。」
「後キリンの子にはこれを渡しておいてくれたまえ」
「これは?」
「ちょっとしたプレゼントさ。」
そう言って、渡されたプレゼントは、これまた見るからに不気味な紙に包まれており、子供が貰ったら泣くな、なんてことを思った。




