霧の道
「随分と霧が濃くなってきたね。」
街を出て、10日目の午後のこと。
どこを見ても砂漠、砂漠、砂漠だった景色に少しづつ変化が見えてきた。
木々が増え始め、道もでこぼこと起伏の激しいものになってきた。
そして、ある時から急に霧がかかってきた。
最初は軽いものだったが、次第に濃くなっていき、今は目の前2,3メートルくらい先までしか見えない。
大丈夫か?これ。
海沿いの街に住んでいたことのある俺でも、ここまで濃い霧は見たことがない。
俺が不安そうにしていると、ルナがその様子に気付いたのか話しかけてきた。
「珍しいことじゃない。ここら辺は、決まっていつも霧がかかる。」
そうなのか。
霧のかかりやすいところっていうのは、大体近くに大きな水場があるはずだけど、黒影のところみたいに大きな湖でもあるのかな。
「それにしても、これじゃあ、前に進むのも一苦労だな。」
「ミズキさん。心配しなくて大丈夫ですよ。」
「あそこを見てください。」
ドリーが指さす方向に目をやると、道端にぼんやりと光が見えた。
「この霧は、あの灯りを追っていけば自然と抜けられるようになっています。」
「へぇ、光の道標か。何か格好いいね。ちなみにこの霧はどれくらい続くの?」
「大体20キロ位ですかね。まあ、ここら辺は、基本魔物も出ませんので、私に任せてゆっくり休んでいてください。」
頼りになるねぇ。
お言葉に甘えて、ロックに芸でも仕込みますか。
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それからどれくらい経っただろうか。
ロックがようやくお手を覚えたので、ドリーに自慢しようと馬車の外に顔を出すと、もう日が落ちかけており、先程に比べて随分と暗くなっていた。
と言うか、霧が先ほどよりもずっと濃く、道しるべの明かりすら俺の目には見えなかった。
ドリーは凄いな。こんな道、俺なら霧が晴れるまで馬車を止めて待機だぞ?
「ドリー!もうすぐ、霧は晴れる感じかな?」
「………。」
返事がない。ただの屍のようだ。
「ドリー?」
「すいません!迷いました!」
「灯りを追って進んできたつもりだったんですが、次第に霧が濃くなってきまして、気付けば最も近い光すら見えない状態になりまして…。」
わーお。爆弾発言じゃないっすか。
まぁ、確かに、この霧の濃さは尋常じゃないな。
手の届く範囲ですら、見えないほどだ。
「こういう時は、一旦落ち着こう。ちょっと空を飛んでみてくるよ。」
「すみません、お願いします…。」
「そんな落ち込まないでいいって!よっと。」
俺は、翼を生やし、上空へと飛んでみた。
ふむ。どこまで行っても、霧が晴れない。
どういう現象だ?これ。
俺は、何とか元の位置まで戻り、その様子を二人に伝えた。
「す…すみません。任せろなんて言っておきながら、こんなあり様で…。」
「大丈夫だって!ほら、よく言うじゃん。道に迷って辿り着いたその先は、目指していた場所よりも、もっと素敵な場所だった。みたいなさ!」
「迷うことも、楽しみの一つと思ってやって行こうぜ!」
「おっ、ミズキ、いいこと言うな!その案、乗った!」
「よし!さあ、気を取り直して、しゅっぱーつ!!」
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霧の晴れる先を目指して、馬車を走らせ約二時間ほど経っただろうか。
すっかり日も落ちて、馬車の灯りだけが辺りを照らすなか、とても、そう、とても素敵な場所に辿り着いた。
「おぉ、これはまた、あれだね…。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「いやいや、そんな気にすることはないさ。ほら、俺が言った通り、す、素敵なところじゃないか。なあ、ルナ?」
「おお!これはいいな!やるじゃないか!」
うわぁ~、この子は本当に嬉しそうだ。
どう見たってこれはヤバいだろう。
廃墟だ。
いや、かろうじて廃墟まではいかないかもしれない。
しかし、この洋館は、絶対ヤバいものが潜んでいると俺の感が言っている。
「きっと」とか「たぶん」とかではない。「絶対」だ。
て言うかこんなとこ人間なんて住んでないよ。
絶対魔物だよ。吸血鬼とかそういうのがいるよ。
よし、ここは、ドリーをフォローしつつ、ルナを落ち着かせ、他を探そう。
日は落ちて辺りは暗いが、ここよりはマシなところがあるはずだ。
「いやぁ、中々いいところだけど、ここは何もなさそうだし、他をあた『ガチャッ』ろうか。」
ん?何かいま聞こえなかったか?
音がした方に目をやると、小さな女の子が扉の奥に入っていくのが見えた。
(「おいーーーーー!!!!!入ってんじゃねーよ!!!」)
「おーい、早く来いよ!中々雰囲気あっていい感じだぜ!」
ルナがこっちを見て、うれしそうに手招きをしている。
ルナの肩に乗っているロックもどこか嬉しそうに見える。
くそっ、俺らはその雰囲気が苦手なんだよ。
てか、呼び鈴くらい鳴らそうよ。
「はぁ。ドリー…。」
「すみません…。」
「いいさ、行こうか。」
今日はここで一泊か。長い夜になりそうだ。




