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魔王クラリス

 砂漠の王国を出て、次の街へ向かう途中、ルナが魔王クラリスについて話をしてくれた。


___________________

 

 魔王クラリス

  通称「魔王」、「青い髪の悪魔」

  数万年の時を生きる元魔神。

  神界に住みながら、あまりに下界と関わりすぎたため、今より約一万年前に神界を追放される。

  神界を追放された後、クラリスは、自分が住むべき世界を創造し、自らが持つ邪悪な魔力を一部の生物に分け与え、その世界に集めた。

  後に、その世界と生物は、それぞれ「魔界」と「魔物」と呼ばれ、クラリスは、魔界の王「魔王」と呼ばれるようになる。

  クラリスは、絶大なる魔力量を持ち、世界に存在するすべての魔法を操る。

  また、時を操る魔法「時魔法」の唯一の使い手である。

  外見は、人間と大きく変わらないが、二本の角、鋭い爪、自らの魔力で作られた翼を持つ。

  髪の色は青、眼の色は赤。

  そして、ルナの目に傷をつけた張本人。

___________________ 

 

 「気になることは、たくさんあるんだけど、時を操る魔法って、どんなものがあるの?」

 

 「俺も詳しくは知らんが、奴が得意とするのは、時間を停止させる魔法だな。その気になれば丸1日くらい自分の周囲の時を止めることができるらしい。」

 

 「それって、最強じゃない?ルナはどうやって戦ったのさ。」


 「奴は、基本詠唱なしで魔法を使うが、時魔法だけは詠唱する。どうやら、詠唱しなければ使えないらしい。だから、唱える時間を与えなければ問題ない。」

 「それより厄介なのは、奴はそんなものを使わなくても強いってことだ。力が強く、素早く、強力な魔法を詠唱なしで使ってくる。それに魔力量が化け物みたいに多いから、奴の体は常に高濃度の魔力に覆われていて硬い。」

 

 「魔力に覆われていると硬い?魔力って魔法を使うためのものじゃないの?」

 

 「んー、魔力は本来誰にでもあるものでな。ただ、その使い道は魔法だけじゃない。魔力は、魔術回路を通して体外に放出させると『魔法』になるし、体内に循環させ身体強化に使うと『闘気』になる。」

 「基本的に魔法使いは、体外に魔力を放出するから、体内に残る魔力が剣士や戦士なんかよりも少ない。だから、直接攻撃されるともろい。逆に剣士や戦士は、魔力を外に出さず、体内に溜め込んでいるから、力は強く、身体も硬いし、速い。」


 「なるほど。魔王は魔力量が多いから、魔法も使えるし、身体も強いと。」


 「まぁ、そんなとこだ。」

 「普通は、いくら魔力量が多くても、魔術回路を一旦組み立てちまうと、体を覆う魔力量は最低限に制限されるから、肉体の強い魔法使いっていうのは少ない。『魔法』と『闘気』を高次元で両立させるには絶大な魔力量と、類い稀なるセンスが必要なのさ。それを完璧に両立させているのは、魔王と黒影のところの『ラビ=リズラット』ぐらいのものだろう。」


 「ラビって、あの赤蟻の師匠でウサギの?あの人って凄い人だったんだ。」


 「黒影との戦いの時に、あいつが出てきてたら、あんな簡単にはいかんさ。」

 「まぁ、魔力についてはそんなとこだ。ちょっとは分かったか?」


 なるほどな、あの時、赤蟻が難なく俺のパンチを受け止めたのは、あいつが魔力で体を覆っていたからって訳か。ルナが強い理由も何となくわかってきた。

 

 「ん、一つ言っておくが、魔力量が多ければ強いって訳じゃないぞ。一番大事なのは、使い方と鍛練だ。それに魔力量は増えも衰えもするしな。」


 「ただ…。」


 「ただ?」


 「ああ…、魔力を持たないものはいないはずなんだが、普段、ミズキからは魔力を一切感じないんだよな。竜人化したときは、回りに溢れだすくらい魔力を感じるんだが…。」


 聞けばこの世界はあらゆるものに魔力が宿っているらしい。

 ドリーやロックはもちろん、そこら辺の草や木、石ころなんかもだ。

 そう聞くとショックだ。

 俺だって一生懸命生きてきたのに、石ころ以下とは…。とほほである。

 やはり、異世界人だからだろうか。前の世界じゃ魔力って概念すらなかったし、仕方ないか…。

 いや!そうだとしても、竜人化すれば大丈夫なのだ。溢れる魔力量だ。

 俺も魔法を使える戦士になれるかもしれない。

 そう考えると年甲斐にもなくワクワクしてきた。


 「まぁ、そんなわけで、ちょっとその首飾り見せてくれ。」


 「ん?いきなりどうしたの?」

 

 ほいっとルナに首飾りを渡した。


 「よし、これはこうしよう。」

 そう言ってルナはバキッと首飾りをブチ折った。


 「わー!!何すんのさ!?」


 「これは、魔除けの力が強すぎて、魔物が寄ってこないんだよ。この先は、魔物にいつ襲われるかわからない、そういう状態に身を置くことで感覚も研ぎ澄まされるし、経験も積むことができる。まっ、魔物に慣れましょうってことだ。このままじゃあ、クラリスに一瞬で殺されかねないからな。」


 むぅ、言っていることはわかるが、何も危険を冒して…。いや、いずれ魔王と戦う可能性を考えたら正解か。

 なに、きっとスライムとか可愛い魔物もいるんだろう。丁度見てみたかったところだ。


 『グルウルルウッルウルルウ…。』


 あれ?何か聞こえね?

 てか、何かいねえ?馬車の前に何かいねえ?


 早速砂漠の道の前に出てきたのは、紫色の犬?いや狼か。

 数がいち、に、さん…、7匹か。


 て言うかいきなりかよー、首飾りにいままでどれだけ助けられていたのだろうか。


 「キラードッグだな、Dランクの魔物だが、素早く、牙と爪に猛毒を持つ。かすったら死ぬと思って戦え。俺とドリーは馬車を守る。」


 犬なんかい!って、えっ?猛毒?そんなのがDランクなの?やばくね?

 そして、俺一人で戦うんかいっ!


 「来るぞ!!」


 分かりましたよ、やりますよ。

 このスパルタ鬼教師め!


 まぁ、地竜や赤蟻と比べたら大して怖くないさ。

 いや、あれ?怖いな。ルナ、ドリー、解毒剤とかちゃんとあるよね??



【ドリー視点】


 うわぁ、ミズキさんが着けていた首飾りって魔除け効果があったんだ。

 壊した瞬間こうもタイミング良く魔物が現れるなんて、、、

 と言うかタイミング良すぎですよね。

 もしかして、ルナさん、ここら辺に魔物がいるってわかっていたんじゃないでしょうか。 

 それで、よし今だ、こわしちゃえ~って感じで、首飾りを壊したのでは?


 それにあのキラードック…。

 

 「あのー、ルナさん、キラードックって毒なんてありませんよね?」

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