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クロスピース

 この国に来て一カ月。

 気付けば、俺たちが穴倉の街で地竜を倒したことや、この国に住む盗賊王を倒したことが国中に広まっていた。


 情報の発信源は、冒険者ギルドだ。

 ギルドにとって、有能な人材を有していることを世に知らしめることは重要なことらしく、今回のように大きな出来事があった場合は大々的に発表するものらしい。

 「うちのギルドには強い人がいるんだぞー、凄いだろー」みたいな感じか。はた迷惑な話である。


 まぁ、おかげで俺もルナも冒険者ランクは上がった。

 俺とルナは地竜の件でEランクからDランクに、黒影の件でDランクからCランクになった。


 ドリーはと言うと、黒影の件でBランクからAランクになるはずだったのだが、辞退していた。

 勿体無いと思ったが、ドリー曰く、自分は何もしていないし、Aランクに上がってしまうと逆に運び屋として働きづらくなるとのことだ。

 何でもAランクの冒険者が運び屋として依頼を受ける場合は、かなり危険な地域を任されるようだ。

 その分報酬は良いようだが、実力が伴っていない場合、命を落とす危険性がある。


 なるほど、身の丈に合ったランクが一番いいということか。

 俺もこの世界に来るまでは、よく会社の研修等で「身の丈に合った生活をするように」なんて口酸っぱく言われたものだ。


 とはいえ、今回俺とルナを運ぶ行程はかなり危険なものに思えてきたが、ドリー的には大丈夫なのだろうか。

 「はぁ、もうさっさと終わらせて、のんびりやりてーなー」とか思ってないよね?

 そう思い、それとなく聞いてみたら、

 「Aランク以上のスリルはありますが、楽しさはSランク以上ですから!」と笑顔で返してくれた。

 ドリー、なんていい子なんだ。

 後で高いところに生えている美味しい草をたくさん取ってきてあげよう。


 さて、そんなこんなで、俺たちは今一躍国の有名人である。


 特に、ルナの人気は凄まじい。

 活躍の中心人物が若干10歳前後の少女というのは、やはりインパクトが強いのだろう。


 ギルド内での呼び名も、『傷の少女』なんて呼ばれていたのが、今は『神速のルナ』や『疾風の舞姫』なんて呼ばれている。

 まあ、俺も、『冴えない黒髪』から『黒竜の遣い』なんて呼ばれるようになったのだから、大分出世した感じがする。

 

 それと、何となくいい機会だと思い、俺たち3人+ロックのパーティネームも考えた。


 その名も『クロスピース』


 この世界では、幸運を願う時に、ピースサインの二本の指をクロスさせて相手に見せるというおまじないがある、そんな話を街で聞いて、何かいいなって思ったのだ。

 ルナも十字架が好きみたいだし、ちょうどいいかなぁって。

 あと、響きも格好良くない?中2病っぽいかな。と思ったけど、みんないいねいいね!と絶賛してくれた。 


 よし、今日から俺は、クロスピースのミズキだ。

 パーティーネームをつけると、旅仲間っていう感じが一層強くなっていいね。


 後は、そうだなぁ。王宮から招待状が届いたり(ルナが面倒がったので行ってはいないが)、王立騎士団に加入してほしいと騎士団長が直々に宿を訪ねてきたリもした。


 ちなみに騎士団長は、穴倉の街で戦士団の長をしていたトカゲ族「ゲイル」の兄だった。

 三又の槍が良く似合うナイスガイで、弟が大変世話になったと何度も頭を下げられた。 

 

 何か懐かしいな。モグラ族のイグルーとか元気にしてるだろうか。また会いたいモグ。

 

 まぁ、そんなこんなで色々と回りは賑わっていた。

 注目を浴びるのは悪くないが、疲れるし、動きにくくなるね。

 何か芸能人の気持ちがちょっとだけわかったよ。


 と言うことで、そろそろ次の町へ行こう。

 旅人は旅をするものだ。有名になるのが目的じゃない。 


 次は、この間ドリーが言っていた『夢見の街、夢語りの街』が目的地。

 魔法都市へ向かう道の途中にある街で、ここから馬車で1週間程度らしい。


 さぁ、冒険の始まりだ。

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