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お買い物

 世界で最も夜の長い国「moon night」 城下町「月夜」


 ここ月夜では、年に2度バザーが開かれ、世界中の交易商の手により、様々な装備品に食料、雑貨などが集結する。

 以前ドリーが来たときは、「溶けない雪」や「消えない虹の麓に咲く花」、「切れば切るほど切れ味のよくなるナイフ」などが人気商品だったらしい。

 今回は何があるかわからないが、せっかくの機会なので、みんなで見て回ることにした。

 ボロボロになってきた服を新調したいし、珍しい食材なんかもあるかもしれない。

 

 という訳で今日は一日お買い物だ。

 外は天気もいいし、たまにはこうやって心休まる時を過ごしてもいいだろう。

 

 ドリーなんて、早速『世界の美味しい草コーナー』にくぎ付けだ。

 うんうん。俺も何か探してみるかな。


 と辺りをキョロキョロしてみると、ルナが防具店で足を止めていた。


 「いいな。これ。」


 どうやらマネキンが着ている白いマントがお気に召したようだ。

 作りはシンプルだが、丈夫そうなマントで、ルナが今身に付けているマントによく似ている。

 まあ、確かにルナのマントは至るところが擦りきれて、血や泥の跡も目立つからな。

 それはそれで歴戦の剣士って感じで格好いいんだけど、そろそろ新しい物を買ってもいいかもしれない。

 

 「おやぁ。」

 

 そんなことを考えていたら、お店の人に見つかった。

 あれは、いいカモ見つけましたって顔だ。

 とりあえず「お似合いです~!」を連呼しそうな顔だ。

 うわぁ、案の定タタタと小走りで歩み寄ってきた。


 「これはこれはお客様、お目が高い!こちらは今より50年前に忽然と姿を消した伝説の剣豪『ザン=フィールド』その人が身に付けていた白マント(を模して作られたもの)でございます。素材は、大樹の街ラグルディアのみに存在する白輝樹から年に数度だけ取れる『白輝樹の綿』100%!肌触りの良さ、生地の丈夫さはもちろんのこと、火魔法への耐性も非常に高いという優れものにございます!!お客様にも似合うこと間違いなし!ささっ、どうぞご試着を!」


 かぁー!こやつ、よく喋りおるわ。

 てか、あんたの目の前にいるのが忽然と姿を消した伝説の剣豪だよ。そんな人にレプリカを売り付けるんじゃないよ。


 「そうかそうか。中々センスがいいな。」

 ただ、ルナは全く気にしていないようだ。


 「おんやぁ?お客さん、その格好!」

 店主は、ルナの身に付けている白マントを指差した。


 「もしや、お客様!『ザン=フィールド』のファンでは!?」

 「いやいやいや、何も言わずに結構!私にはわかります。その背中に描かれた十字の紋様。ちょっと下の方が切れていますが、『ザン=フィールド』が好んだ紋様と同じ!そうですか、うんうん。いやぁ、わかりますぞ。」


 まぁ、本人の私物だからな。

 サイズが合わなくなって、下の方をちょん切ったんだよ。それ。


 「ふっふっふ。当然このマントにもほら!後ろには十字の紋様が!!さぁ、今ならなんと金貨10枚のところをたったの5枚!!たったの5枚!!」


 た…たけえ。金貨5枚って言うと、だいたい50万くらいか…。 

 いや、どうなんだ、実は妥当なのか?

 

 「ねぇねぇ旦那!ここは娘さんにいいところを見せるチャンスですよ??」

 と、そこで店主は俺に近寄ってきた。うぜえ、そのトルネコみたいな腹を俺に当てるんじゃないよ。 そもそも娘じゃないし。


 「ルナさーん!決まりましたか?」

 そうこうしていると、隣の店でアクセサリーを見ていたドリーが戻ってきた。

 

 「おっ、ドリーいいところに!どうよ、これ、中々いいマントだろ?」 


 「!!!!」

 「ド…ドリー!!!???ドリーってあの運び屋ドリーですか!?」


 「は、はい…。」


 なんだその驚き様は?

 店主の顔色がみるみると青ざめていく。

 知り合いかと思ってドリーを見るもきょとんとしていた。何だろうか。


 「えーと、おお、いいマントですね!素材もこれ、白輝樹ですよね!いやぁ珍しい。おいくらなんですか?」


 「ああ、金貨5…」

 「いやぁ!!銀貨5枚です!!!銀貨5枚!!!!」


 「おおお!安いですね!これだけの品なら金貨1枚以上の価値はありますよ!」

 

 「いやぁ、うちは、いいものを安く!をモットーにしておりますので、それに、あの運び屋ドリーさんのお連れの方ということですので、サービスさせていただかないと!あはっ、あはははは!」


 「あ、はい。どうもありがとうございます。でもこれ、ルナさんには、ちょっと大きいんじゃないですか?」


 「もももももちろん、速攻で仕立て直させていただきます!ちょっとお待ちくださいね!」

 そう言うと、店主はもの凄い勢いで店の奥に入って行った。


 「……。」


 (「店長いいんですか?うちの目玉商品をたった銀貨5枚って…。」)

 (「馬鹿野郎!キリンのドリーだぞ!?地竜を一撃で蹴り殺し、盗賊王と赤蟻を同時に相手して打ち倒したっていう話、お前も聞いてんだろ!いいか!間違っても怒らせるなよ。俺はまだ死にたくねえんだ。)


 店の奥からもめてる様子が聞こえてきた。

 

 あー、なるほどね。

 地竜と黒影の件は、ドリーがやったことになってるのか。

 確かに、俺たち3人の中ならドリーが一番強そうだ。

 俺は、戦うタイプには見えないだろうし、ルナは、明らかに子供だもんね。

 どこかで間違ったうわさが広まったんだろう。


 まぁ、安く物が買えるのはありがたい。


 因みに、ロックは町中だと目立つので、ルナのカバンの中に入っている。

 たまにひょこっと顔を出すが、石や岩のかけらをカバンの中に放り込むと『バリボリッ』という音が聞こえた後、大人しくしてくれる。

 主食が石とは、流石地竜の雛だ。


 その後、10分くらいで笑顔のひきつった店主がサイズ調整した白マントを持ってきてくれた。

  

 いいなぁ、ルナ。

 俺も何か新しい服や装備が欲しいなぁ。と呟いていたら、ドリーから、この先は砂嵐が酷くなるから、ゴーグルは用意しておいた方がいいですね。とのお言葉があった。


 するとあら不思議、再び顔のひきつった笑顔で、サービスで差し上げますとお揃いのゴーグルが三つ出てきたのだ。

 まるで魔法だね。


 まぁ、これ以上怖がらせてもまずいし、ここら辺で勘弁してあげよう。


 それから先は、ドリーの名前は出さずに買い物を楽しんだ3人でした。


※ この日の人気商品

 ① 魔力を込めることで伸縮する槍

 ② 喋る鎧

 ③ 足音のしないブーツ



【各人装備一覧、呼称】


 ミズキ(冴えない黒髪)

  銀月

   魔界の名工「ラスト=ハルシオン」作

   四十四の魔剣の一つを

   火の精霊「フレア」が鍛えし曲刀

   素材は、銀狼の血、骨、魔界の黒砂

  赤血

   魔界の名工「ラスト=ハルシオン」作

   四十四の魔剣の一つ

   刃渡りは非常に短く、形状はナイフに近い

   素材は火竜の牙と鱗

  魔除けのネックレス

  飴色のゴーグル

  カラス族の服


 ルナ(傷の少女)

  聖剣ファブリーズ

   世界で最も偉大な神「ミスティア」の遺品 

  水晶の剣(2対)

   ルナの愛剣、水晶の洞窟の最深部にて入手

   別名「シヴァニール」 

  十字のネックレス

  飴色のゴーグル

  白輝樹のマント  


 ドリー(運び屋ドリー、地竜殺し)

  蛇皮のムチ

  銀のナイフ

  腕輪(複数)

  指輪(複数)

  赤の弦楽器

  飴色のゴーグル

  茶色のスカジャン


 ロック

  革の首輪(ネーム入り)

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