ロック
流れ星がまた一つ流れた。これで3つ目だ。
私はミズキさんとルナさんのリクエストを受けて、大好きなあの曲を歌っている。
旅の途中でも良く歌い、二人が好きだと言ってくれた曲だ。
ミズキさんは、この曲を「ロックだ!」と言っていた。
ちなみに、ロックと言うのはロックンロールの略で、最高に格好いいという意味らしい。
ミズキさんは、時々私達の知らない言葉を使う。
前の世界の言葉のようで響きも独特なモノが多いけれど、私はそれが結構好きだ。
中でも、『ロック』と『ドンマイ』という言葉は特に好きだ。
私が何かミスをしてしまったとき、ミズキさんは良く笑いながらドンマイといって励ましてくれる。
「ドリー、大丈夫大丈夫!ドンマイドンマイ!」って。
不思議だけどその言葉を聞くと落ち着いてほっとする。
文化が違うというのは面白い。
流れ星に願い事をすると叶うなんていうことも生まれて初めて聞いたことだ。
もし願いが叶うなら、
まずは、この楽しく愉快で優しいお二人との旅がこのまま素敵なものであってほしい。
あとは、美味しい草がいっぱい食べたいなぁ…。
他には、子供の頃からの夢だった『虹の音』でこの曲を弾いてみたい。
あの人のように、私も誰かに音楽を好きになってもらえるような演奏がしたい。
「ドリー、やっぱりそれいい歌だね。」「だな…。」
そんなことを思っていると、お二人がお褒めの言葉をくれた。
私の歌はまだまだ下手くそで、演奏もおぼつかないのにありがたいことだ。
少し調子に乗って、ロックでした?と聞いてみたら、ロックだったと言ってくれた。
この二人はどんな願い事をしたのか気になったので、聞いてみようと思ったら、ミズキさんに先を越されてしまった。
「ねえ、ドリー。ドリーはなんてお願いした?」
ルナさんも興味ありの顔でこっちを見ている。少し恥ずかしい。
「一つ目の流れ星には、皆さんと無事に楽しく旅ができますようにと。」
「あっ、俺と同じ!」「ふふ、俺もだ。」
二人も同じことを考えていた。これは嬉しいことだ。
「二つ目の流れ星には、美味しい草がお腹いっぱい食べれますようにと。」
「あっ、それは俺と違う!」「ふふふ、俺はそれも同じだ!ドリー気が合うな。」
「え?ルナも草が食べたいの?」
「いやいや、草はいらん。俺は旨いものが腹いっぱい食えるようにって願ってみた。」
ルナさんは、何だか嬉しそうだ。
「そして三つ目の流れ星には、…。」
あれ?ミズキさんが、まだあるの?って少し驚いた顔をしている。
そんなにたくさん願い事をしてはいけないものなのだろうか…。
心配な表情がばれたのか、ミズキさんは「大丈夫、ドンマイドンマイ」の時の顔をした。
やっぱり不思議とほっとする。
「七音楽器『虹の音』って知ってます?」
「虹の音?」
「ええ、虹に見立てた七色の弦楽器で、それぞれの弦に込められた言葉を音に表すと言われています。」
「1弦の赤は『慈愛と博愛』、2弦の橙は『信頼と友情』、3弦の黄は『希望と勇気』、4弦の緑は『大地と自然』、5弦の青は『空と自由』、6弦の藍は『海と悲哀』、7弦の紫は『死と絶望』を。」
「楽器の色は、白と黒で、白は『光』、黒は『闇』を意味するとか。」
「へぇ、何か凄そうな楽器だね。」「ふんふん。」
二人とも目がキラキラしてきた。
やっぱり私含めて3人とも歌が好きっていうのはいいとつくづく思う。
「そうなんですよ。私が子供の頃に出会った音楽家が使っていた楽器なんですが、とても綺麗な音だったのを覚えています。それを一度でいいから触って演奏してみたいなぁと。」
「へぇ、いい願い事だね!」
褒められてしまった。えへへ。
いつか、虹の音を手にすることができたら、最初にこの二人の前で演奏しよう。
ミズキさんにロックと言ってもらったあの曲を、ルナさんが若返る(?)と言ってくれたあの曲を、
私は強く、そう思った。
「ねぇ、ドリー。もう一回、さっきの歌って!」
「ご希望とあらば…。」
私はそう答え、『虹の音』を真似て作った私の相棒をかき鳴らした。
『パキパキ…』、『ピィ…』
と、その時、私の楽器とは違う音が鳴った。
周りを見ると、ルナさんの抱きかかえていた地竜の卵が『パカッ』と音を立てて割れた。
そしてその中からは、青白い色をした竜の雛が姿を現した。
「う…産まれた!!産まれた!産まれた!ミズキ!ドリー!!おい!!!」
ルナさんの驚きようが凄い。
「うわぁ~、おいパパだぞ~!!」
「いや、ルナはママでしょ!」
「むっ、そうか…。ほら、ママだぞ~!」
「ぷっ。」
ルナさんのデレデレした顔が面白くて思わず吹き出してしまったが、そんなこっちの様子を気にする暇もなく、ルナさんは雛の前で自分がママだと精いっぱい伝えている。
「ぴぃ。」
雛も何となく、ルナさんを親と思ったのか、ちょこちょことルナさんの膝の上を歩いている。
「かぷっ。」
「「あっ。」」
ルナさんの手を噛んだ。血が出ている。でもルナさんはまったく気にしていないでなでなでしている。
本当にこの人は凄いと思う。
「こいつに名前を付けてあげないとね。」
ミズキさんが言った。
「名前か…。そうだなぁ…。何かいい名前…。」
「『ロック』なんていうのはどうでしょう?」
これしかないと思った。私はこの言葉が好きだし、あの曲を歌い始めたときに産まれるなんて運命を感じた。
「いいね!」
「『ロック』っていうのは、俺の世界では岩って意味もあるし、地竜の名前としてはぴったりだ!」
「『ロック』か…。うん!文句のつけようがないな!」
「よし!それで行こう!最高に格好いい奴になるんだぞ!!」
ロック、そう呼ばれた地竜の雛は、「ピピィ」とどこか嬉しそうな声をあげた。
ドリーの七弦楽器も弦の色は『虹の音』と同様です。
楽器本体が赤色なのは、ドリーの好みです。




