戦いの後で
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「それで、今日はどこに行ってたんだ?」
奇跡的に無事だったカレーを食べながら、ルナに状況を確認した。
「うまっ!」
「美味しいですね!!」
「これは、美味しいさね。」
「うん、ありがとう。ってそうじゃなくてね!」
ルナが珍しく言いにくそうにしている。
仕方ない、先にこっちから聞いとくか。
「じゃあ、この人は誰なんだ?昔の知り合いって聞いたけど、もしかして、魔女リーフレットとか言わないよな?」
「また、懐かしい名前さね。魔術師の祖リーフレットが居たのはもう500年も前の話さね。」
「あたしゃ、ソフィア。ただの魔術師さ。」
「そこのお嬢ちゃん、いや、ザンとは、以前この国で出会ってね…。そうさね、あれも黒影がらみの時だったさね…。」
「この国の外れの森の中で、ちょうど今日のあの場所の近くで一人の少年が寝てたのさ。血だらけで、大事そうにおっきな剣を抱えてね。」
「あたしがまだ10代の頃さ。使える魔法も大したものがなくてね、傷をふさいぐのが精いっぱいだったさね。懐かしいさね…。」
「目を覚ました少年に話を聞いてみると、なんと黒影に狙われたなんて言うじゃないか。」
「あの頃の黒影は今と違ってもっとギラギラしていたからね。狙われて生きてるものなんていなかったさ。」
「普通なら子供の戯言だと笑うところだが、ただ、あたしにゃこの少年が嘘をついているようにも見えなかった。」
「そしてその後、黒影の盗賊団が半壊したという話を聞いた時は驚いたさね。」
「噂によるとその相手はたった一人の少年だというじゃないか。」
「何歳くらいの話だ?」
俺はルナに聞くと、「10かそこらだ。」と言われた。
その頃から、もう強かったのかよ…。
「それからも、何度かその森の中で見かけてね。また寝てるのさ。しかも決まっていつも傷だらけさね。」
「そして、その度に傷を治してやって、何となく色んな話をするようになってね。まぁ、そんなんが続くうちに何となく気になっちまってね。」
「ある時、少年が黒影のアジトに攻め込みに行くなんていうもんだから、つい付いて行ってしまったんだよ。」
「あの時のことは今も鮮明に覚えているさ。」
「残っている黒影のメンバーはもう10人もいなかったさ。元は100人以上もいたのにね。全部その少年にやられたって話さ。」
「アジトに着いたときは、もう生きた心地がしなかったさね。団長の黒影スールシャド、当時の副長エルフ族の緑雷レイクアート。この二人は明らかに他と違ったさ。あたしも高名な師の元で修行を積んできたし、S級の冒険者なんかと会わせてもらったこともあったが、その冒険者でもあたしの師でもとても相手にならなかっただろうさね。」
「あたしゃ彼らを見て付いてきたことを後悔したよ。ああ、ここで死ぬのかってね。」
「ただ、あたしがあまりに無力だったからか、奴らの目にはとなりに立っていた少年しか映っちゃいなかったよ。」
「そこで、あたしは見たのさ。【黒影】スール=シャド対【剣神】ザン=フィールドの戦いをね。」
「あの戦いを見て、あたしの今までの世界は一変したね。それから今まで、あたしも色々と努力はしてきたんだが、結局今回もあの時と同じ。何の役にも立てなかったさね。」
「おっと、そんな話はいいさね。歳を取ると話が長くなっていかんさね。」
「まぁ、そんな縁もあって、この子とは古くから知り合いなのさ。」
「そうだったんですね。それと繰り返しになりますが、今日は俺たちの命を救ってくれてありがとうございました。回復魔法なんて使える奴いないもんだからとても助かりました。」
「そうですよ!本当にありがとうございました。私はもう死んだと思いましたよ。」
ドリーも続けて言った。
「あたしゃ特になんもしてないよ。」
「いや、本当に助かった。ありがとう…。」
ルナも言った。ちょっと気恥しそうにしている。
「ふふっ。いいさね。」
「あぁ、今日の昼間は、いきなりうちにこの子がやってきてね。アジトの行先を忘れたから教えてくれなんて言うもんだ。」
「どっかで見たことがある子と思ってたら、あの時の少年だっていうじゃないか。まぁ、驚きもしたが、確かにあの時の少年と全く同じ目をしていたからね。年甲斐もなく胸が躍ったさね。」
「考えてみてごらんよ。あの時の少年と同じような歳の少女が、一人で盗賊王のアジトに乗り込もうっていうのさ。面白そうじゃないさね。あたしゃ恐怖よりも興味が上回っちまって、案内がてらまたついてったってわけさね。」
その話を聞いて、俺はルナを睨み付けた。
やっぱり勝手に、一人で危険なところに行ってたんだな。
あとでキツーク言っておかねば。
ルナは、俺の視線に気づいたのか、気まずそうにしている。
「しかし、今度はあの頃より少しは何かできるかと思ったが、やはり凡人には難しかったさね。結局道案内だけで終わりさね。」
「そしてアジトに着いたら、黒影とレイクアートのお出ましさ。」
「驚いたさね。二人とも、あのままの姿でいるんだから。過去にタイムスリップしたのかと思ったさ。」
「レイク=アートは、エルフだからね、50年程度では変わらないが、黒影も全く歳を取っていないとはね。噂には、神の使徒だからなんて話もあるが、そういうもんなのかね。」
「あいつは、神ミスティアの飼竜だった白竜の左目を持つものだ。白竜はミスティアが死んだ後、神の遺品を集めるために、その身を三つに砕きこの世界に散らばったと言われている。そして、白竜の一部を身に宿すものは、基本的に歳を取らん。ラック=ラダーもその一人だ。あいつは白竜の右目を持っている。実年齢は二人とも100歳程度だ。」
ルナは、しれっとそんなことを言った。
なんか凄い話だな、なんでそんなこと知ってるんだよ。
というか、その話が本当ならラックさんって凄い年上だったんだな…。
「初耳です…。」
ドリーも驚いている。
「話を続けようかね。」
「アジトに着いた瞬間、レイクがこの子を見つけると同時に襲い掛かってきたのさ。あたしゃ身動き一つできなかったさね。早すぎたのさ。」
「レイクは雷魔法の使い手でね。自分に魔法を打ち付けて、雷さながらの速さで動く。普通ならそんなのを受けた時点で即死なのに、それを自在に操れるのがレイクの強みでね。」
「ただ、そこはさすがさね。あたしにはピカッと光ったとしかわからなかったのに、気付けばレイクがこの子の足元に倒れていたんだからね。」
「その後、黒影に話をつけようとしたら、赤蟻があんたらの住処にこの子を探しに行ったなんて話をしたもんだから、飛んで帰ってきたのさ。」
「そん時のこの子の動きも、早すぎてあたしには見えなかったさね。」
「この子からあんたらの住処の位置を聞いてなかったから、見つけるのに中々苦労したさね。」
「ただそんな時に、物凄い火が巻き上がるのを見てね。」
「あれは、あんたの仕業かい?おかげで直ぐに方向がわかったさね。」
「まぁ、掻い摘んで説明するとそんな感じさね。」
「この子も、あんたらに被害が及ばないように、色々考えて動いたんだろうさ。あんまり責めないでやってくれさね。」
とソフィアさんにくぎを刺されてしまった。
「はぁ、まぁわかりました。」
「でも、俺たちは仲間なんだ。これからはもう変な気づかいはなし!」
「でなければ、カレーのおかわりは許しません!」
「ですね、水臭いってやつですよ。ルナさん!」
二人でルナをジト目で見る。
「うっ、わかった。悪かったよ二人とも。」
ルナも、反省してるようだ。
「わかればよろしい。さぁ、カレーおかわり欲しいやつはいるかい?」
「もちろん!」
「私も!」
「あたしもさね!」
まぁ、何にしろだ。みんな無事で何よりってことで、すべて水に流しちまおうか。
「そうだ、ソフィアさんは俺らと旅をする気はありませんか?」
「また、昔みたいに若返ることだってできますよ。命を救ってくれた恩もありますし、何か礼をさせてください。」
「あんたの持つ、若返りの薬かね?」
「やめとくよ、あたしに未練はないのさ。」
「最後に会いたい人にも会えたしね。まぁ、姿はすっかり可愛くなっちまったが、満足さね。」
「そうですか…。」
もしかしたら、この人はザンのことがずっと好きだったのかもしれないな。
何となくそんなことを思った。
「ああ、もし魔術師を探してるのなら、あたしの弟子にアリアっていうのがいるから、そいつを頼りにするといいさね。」
「まだ若いが、あんたの言ってた魔女リーフレットの血を引くものさね。きっと力になってくれるさ。あたしの紹介があればね。」
「感謝します。」
そう言うと、ソフィアさんは一筆書いて渡してくれた。
アリアは、魔法都市マジックフォレストにいるらしい。
「今日は、あー、部屋に風穴は空いてますが、良ければ泊まって行ってください。」
「酒もありますんで!」
「おっいいな、ジャンジャン持ってこーい。」
「調子にの・る・な!」
俺はルナの頭をぽかんと叩いた。
しかし疲れたな。
今日は、寝たらきっと2日は起きれない、そんな気がする。




