砂漠の王国(冒険者ギルド①)
砂漠の王国「moon night」に着いたときには、もう日は暮れかけていた。
だが、この国ではこれからが始まりだという。流石世界で最も夜の長い国だ。
「先ずは冒険者ギルドに行ってみませんか?」
そう言ったのはドリーだ。
冒険者ギルドでは、新しく冒険者になるものを募っていて、そこで登録することで冒険者ギルドのメンバーとして世界中のギルドで顔が利くようになるそうだ。
これから先、旅を続けるのなら冒険者として登録しておいた方が便利らしい。
まず、冒険者の証明書(通称ギルドカード)は、この世界の身分証にもなるという。
異世界から召喚されてきた俺は身分を証明するものがないから、これは願ったりだ。
それに、冒険者としての能力を高く評価された場合は、様々な機関への立ち入りが許可されるという。
研究施設や王立図書館、上級武器防具の取扱店など色々だ。
その中には、禁忌とされている召喚魔法を研究している施設もあるらしい。
その他にも、討伐したモンスターの素材を売却すれば金もできるし、魔術師など誰かをを雇ったりするときも、冒険者ギルドに加入していた方がいいようだ。
まぁ、加入しておいて損なことはほとんどないらしい。
たまにギルドから、緊急クエストなんて切羽詰まった依頼が来たときは、その地域にいるギルド員全員が強制参加させられるらしいが、ほとんどそういうことはないらしい。
ていうか、やっぱりあったんだな。ギルド。
全然出てこないから、そういうの無い世界かと思ってたよ俺は。
冒険者かぁ!やっぱり憧れるものはあるな。
旅人っていうのもいいけど、冒険者。響きがいいよね!冒険者!
まだ竜しか見たことないけど、モンスターもいるのかぁ。そうかそうか!
おっと、どうやら「ぐへへ」という顔をしていたようだ。いかんいかん。
ルナがジト目でこっちを見ているのに気付き、俺は気を引き締めた。
「私は、宿を探して馬車を置いてきますので、お二人は先に行ってきてください。」
「ドリーは登録しなくていいのか?」
「私はもう登録済みですよ!」
そう言って、一枚のカードを取り出した。
「へー!見せて見せて!」
ギルドカードには、ドリーの特徴と階級が書いてあった。B級の戦士とのことだ。
どうやら冒険者には、剣士、戦士、弓使い、回復魔術師、攻撃魔術師等様々なタイプ毎に、E~Aまで階級があり、その階級ごとに受けられる任務や立ち入りのできる施設などがあるらしい。
「Bランクって上から二番目じゃん!ドリーって凄いんだね!」
「いや、お二人にはとてもかないませんよ。それに、A級よりもさらに上のS級、SS級、SSS級なんて言う人もいるらしいですからね!ねえ?ルナさん?」
ドリーはニヤッと笑ってそう言うと、
「俺は初心者冒険者だぜ?E級の剣士だよ。」
とルナは苦笑していた。
「それではまた後で!」
「うん!ドリーも気を付けてね!」
「ドリー!卵ちゃんとお願いな!」
「さて、それじゃあルナ行ってみようか!」
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冒険者ギルド【砂漠の月】
大体の冒険者ギルドは、1階には、受付、クエスト依頼掲示板、酒場、集会場があり、2階には、商店と武器防具屋がある。
ここのギルドもそれと同じだった。
中に入ると、ガラの悪そうな連中が集会場でタムロしていた。
皆目付きが悪く、強そうだ。というかなんか怖い。ニコニコうふふみたいな人がいない。
特にさっきから俺たちの進行方向で、何やら怒鳴りあっている連中。
この人たちは、恐らく危険人物だろう。
あーあー、斧とか振り回してるもん。
これは、今日は出直そう。そうしよう。
と思ったが、ルナはずんずん進んでいく。
俺は「はぁ。」とため息をつき、なるべくその連中と目を合わせないように、受付まで進んでいく。
そしたら、案の定。本当に案の定、私不肖ハヤマミズキにお声がかかった。
「おい、そこの子供連れ!見ねえ顔だな!ああん?ここはガキの遊び場じゃねえぞ!?」
その中でも一番ガラの悪そうなスキンヘッドの男が俺に話しかけてきた。
「ったく、雑魚がどんどん増えてくと迷惑なんだよ。小銭が稼ぎたければ村で農業でもやってろよ!ああ?」
「なんだ、その目は?ああ?A級冒険者のこの俺に何か文句でもあんのか?おお?」
俺に近寄り、胸ぐらをつかもうとしたとき、ペキッと何か嫌な音がした。
男の手がぶらりーんっと良く無い方向に曲がっている。
「うぎゃああああ!!!」
あちゃ~。ルナの方を見ると、何やら怒っているようだ。
「うるさいんだよ、小僧。腕がくっついてるだけありがたいと思え。」
「てめぇ!この…」
そう言って襲い掛かってきた男を、ルナは蹴り飛ばした。
「A級?笑わせるな。E級から出直して来い。」
男は失神していた。
辺りは静まり返り、受付への道がさっと開けていった。
「あの~。冒険者登録をしたいのですが。」
俺がそういうと、受付の女性は
「え?あ!はい!えーっと。それでは、あちらに置いてある紙に必要事項を書いていただけますか?書き終わりましたら面接を行いますので、えーっと、声をかけてください!はい!」
大分怯えている。ならず者だらけの冒険者ギルドでも先ほどの自己紹介はインパクトがあったらしい。
俺たちは、ギルドの入会票に必要事項を記入して受付に渡した。
俺の出身地のところは、砂漠の街リダにしておいた。
何か言われたら、記憶喪失で最初にいた街がリダでしたと言おう。
ルナは、性別と年齢のところで首をかしげていたが、「女」、「10歳」と書いていた。
まぁ、嘘はついていない…か。
「あっ、お二人とも加入だったんですね!てっきり引率の方かと…。えーっと、それじゃあ、これから面接に入りますが、お時間はよろしいですか?」
俺はルナのお守りと思われていたらしい、まあそうか何せ見た目は10歳の少女だ。
「大丈夫です。」
そう答え、面接が始まった。




