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黒竜なんだとさ

 「修行しよう!」


 思い立ったら吉日という言葉がある。

 昨日の盗賊団からの襲撃を受け、自分があまりにも無力であることを痛感した。

 ルナがいなければ、盗賊に身包みを剥がされ、きっと俺は死んでいた。

 ここで生活する以上、この世界での最低限の強さが必要だ。

 かと言って、俺は別に格闘技を習ってた訳でもないし、運動神経もいたって平凡だ。


 だからこそ、修行なのだ。

 最強のルナが近くに居るうちに、せめて、自分の身くらいは守れるようにならなゃいけない。

 

 昨日は、あまりに突然の出来事で、自分のスキルのことすら頭になかった。

 

 『竜人化』

 

 まずは、これをモノにしたい。

 空を飛べれば、襲われても直ぐに逃げることができる。

 もっと直ぐにシュッと翼を出せるように練習だ。

 竜になりたいと強く思うことは意外に時間がかかるのだ。

 

 死ぬか生きるかの瀬戸際で、ああ竜になって空を飛びたいなぁ……。あはは、うふふ。なんてのんびり考えている暇はない。

 瞬間的に、竜人になれるようにならなくてはいけない。


 それと、竜人化と言っても、現状は翼が生えて眼が良くなる位だ。

 きっと、牙や爪、丈夫な鱗など竜にはもっと色々な強みがあるはずだ。

 

 「ということで、俺はもっと竜というものを知る必要がある。そうは思わないか、ルナ!?」


 俺は、馬車の中で寝転がっている人生の大先輩である十歳の少女にそう告げた。


 ルナはポカーンとしていた。


 うまく伝わらなかったかな…。


 「えーと、つまり、竜人化を使いこなせるようになりたいんだ。何かアドバイスをもらえないか?」

 

 「竜人化か!そうかそうか!!」  


 ルナは、ぱっと起き上がり俺に歩み寄ってきた。


 「ま、まずは、あれだな。見てみないことにはな。ちょっとなってみてくれよ!」

 

 眼がキラキラしている。竜人化に興味があるのだろうか。

 特殊スキルらしいからな……。


 ドリーも興味があるのか、馬車を運転しながらこっちをチラチラ見てくる。

 

 俺は、最初に竜人になった時のことを思い出そうとした。

 翼が背中から生えてきた時のイメージを強く頭に思い描いた。

 竜になりたいと思うんだ。竜になって空を自由に駆け回りたい。

 俺が心から愛する映画「トップガ●」と「風の谷のナウ●カ」を思い出す。


 (「うおおおぉおおおおぉおお!!竜になりて~~!!!」)


 俺は心の中で叫んだ。


 バサァッ!!と翼が生えた。そして、また服が破けてしまった。成長しない男だ。次買う服は鳥人用の服を買おう。カラス族の着ている服は黒くて格好良かったから、あれにしよう。


 「黒竜かよ……。」ルナが言った。

 

 「え??こ、黒竜って、黒竜ですか!?」ドリーも何やら驚いているようだった。


 む。なんだこの反応は…。

 大当たりなのか?「ふはは、ひれ伏せ、小僧ども!!」とでも言ってやろうか…。

 それとも外れだろうか。この世界では、黒は不吉みたいな慣習があるのかな。うーん。

 

 「黒竜っていうのは、あまり良くない竜なの?」

 

 俺は思い切って聞いてみると、ルナはぼりぼりと頭を掻いている。


 「いいか。まず、竜っていうのは、この世界で最高ランクの強種族だ。攻撃力、防御力が極めて高いことに加え、強烈なブレスを吐くことができる。」


 ふむふむ。


 「その竜の種類は基本4つに分類される。火竜、水竜、地竜、雷竜の基本種だ。それぞれがとてつもない力を持っている。」


 「そして、その他2種類の竜がいる。白竜と黒竜だ。」


 「白竜っていうのは、4つの基本種全てを統べる竜だ。この世界で最も偉大な神『ミスティア』の遣いとも言われている。」


 「百年前に死んだっていう神様だっけ?」


 「そうだ。その神が死んだ時に、天界から地上に降り、その数年後に行方知れずになっているから、俺は見たことはないがな。」


 「そして、黒竜は魔界にのみ生息する竜で、白竜と同じく一匹しかいない超希少種だ。その力は白竜と同等と言われてる。こっちの竜は一度見たことがある。お前の翼はそれと同じだな。」


 「魔界の黒竜…。これって凄い?何かいいことあるのかな!?」


 「体には何か変化はないか?力が強くなったとか、素早く動けるようになってるとか。」

 

 「特にはない、と思う。ただ空が飛べるのと、眼は凄くよくなるね。」


 「そうか!空が飛べるのはいいな!俺も空が飛べたらなぁ…。」

 

 ルナは羨ましそうにしていた。


 「うーん。飛ぶところも見たいな。何ができるか少し試してみよう。」


 「おーい、ドリー!ちょっとあの岩山の前で止めてくれ!」


 岩山の前につくと、俺たちは馬車から降りた。


 「よし、あの山の上くらいまで飛んでみてくれるか。」


 俺はルナに促されるままに空を飛んだ。


 ヒューン!!


 「おおおお!!!」「早いですねぇ~!!」二人の感嘆の声が聞こえる。


 俺は軽くひょいひょいと空を飛び、山頂付近をぐるりと回って戻った。

 ルナを見る。

 

 「ふむ…。それだけ速く飛んで、体は何ともないのか?」


 「あ、うん。全然平気だ。」


 「そうか、ちょっと、この馬車持ち上げてみろ。」


 おいおい、馬二頭で必死こいて引いているこの馬車を持ち上げろって?

 そんなの箸より重たいものを持ったことのない、このハヤマミズキさんにやらせようとは、無茶をおっしゃ…。


 ヒョイ。


 あれ?余裕で持てたぞ。しかも片手で…。


 「おお、腕力は相当上がっているようだな!」

 「よし、次はちょっとこの岩山を殴ってみてくれ。軽くでいいぞ。」


 おいおい、佐●助じゃねーんだから、岩を素手で殴るなんて修行をする奴がいるかよ。しかも、この岩山軽く数十メートルはあるぞ。

 まぁいい。俺の二重の極みを見せてやろう。

 

 「とりゃーーー!!!」


 『どがーーーーーーーーーーーーーーーん』


 岩山が崩れ去った。


 うわーー、すっごーい。俺、確実に人間を越えたな。

 ルナもドリーも驚きの顔だ。


 ドヤ顔で二人を見ると、ドリーが近寄ってきた。


 「あの、ミズキさん。これ、絶対、お、折れてますけど、痛くないんですか?」


 「ん?」


 俺は右手を見る。指が変な方向に曲がってて、皮膚が剥がれ血が出ている。

 あれ?なんか、骨もはみ出してね?

 てか、痛い。物凄く痛い。痛いよー。ううう…。


 涙目になっていると、ドリーが薬を塗ってくれて、包帯をぐるぐると巻いてくれた。

 やばい、めっちゃ痛い。


 「う、うむ、やはり攻撃力も黒竜並みだな。す、素晴らしいぞ。それに、あの速さで飛ぶことに耐えれるなら防御力も上がっているはずだ。ただ、黒竜の力を使った物理攻撃は、鱗に覆われていない状態で使うと反動を受けてしまうということだな……。うん。完全には竜の能力をモノにできてはいないようだが、戦闘能力はかなり高い方だと思うぞ。」


 なんて、ルナは言っている。


 「ルナ、凄く痛いんだけど。」


 ルナを涙目で睨み付けると、


 「悪い悪い、だから軽くって言っただろ?それに、次の街につけば、回復魔法を使える奴がいるはずだ!男は我慢だ!」


 と言われた。


 「しかしあれだな。黒竜の鱗があればな…。あれは魔法も効かんし、刃も通らないから鉄壁なんだが…。」


 そうなのか。ただ鱗はなぁ…。

 何かなぁ。蛇とか苦手だし…。トカゲもそんな好きってわけじゃないしなぁ。

 きっとこの心が、原因なんだろうなぁ。


 ルナからは、「竜の鱗は格好いいぞ!蛇とは全く違うし、トカゲには近いが、それよりもキラキラしている。いや、というか、トカゲって格好いいと思うんだが。」と言われ、ドリーもうんうんと頷いている。


 「そう言えば、ルナさん。この近くに、トカゲ族の住む町がありますよ。そこに少し寄っていきませんか?恐らく回復魔法を使えるものもいると思うので、拳も治るでしょうし…。」


 「おお!あの地下街はここら辺だったか!丁度いい、トカゲ族に会えば鱗に対する偏見もなくなるだろう。よし!しゅっぱーつ!!」


 あれよあれよと、話が進んでいた。

 トカゲ族かぁ~。好きだったゲームの一つロマンシング●ガのゲ●ハが頭に浮かぶ。

 うーん。まぁ、行ってみるか!強くなれるかもしれないし、それに早く手を治したい。

 てか回復魔法って、そんなに簡単に治るのか?


 取りあえず、街につくまでは、直ぐに竜人になる(翼を生やす)練習をしよう。


 (「竜になりたい……。」「…………。」「うぉおぉおおぉおお!!!」)

 ニョキニョキシュバッ!


 (「竜になりたい……。」「…………。」「うぉおぉおおぉおお!!!」)

 ニョキニョキシュバッ!


 (「竜になりたい……。」「…………。」「うぉおぉおおぉおお!!!」)

 ニョキニョキシュバッ!


 (「竜になりたい……。」「…………。」「うぉおぉおおぉおお!!!」)

 ニョキニョキシュバッ!


 (「竜になりたい……。」「…………。」「うぉおぉおおぉおお!!!」)

 ニョキニョキシュバッ!


 馬車の中で、俺は、バサバサバサバサと一人繰り返していた。

火竜〜基本群れで生活している。マグマの中に卵を産む。非常に気性が荒い。

水竜〜知性が高く、中々人前に姿を出さない。

雷竜〜雲の中に住み、電流を身体に蓄えている。

地竜〜他の竜に比べて非常に身体がでかい。比較的大人しいが、力は他の3種に比べて最も高い。基本単体で生活。

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