神の遺品
「ルナさんあなたは何者なんですか?」
翌朝、ドリーに聞かれたルナは、言おうか言うまいか少し悩んだ素振りをした後、ゆっくりと口を開いた。
「リダの商館のフレイ=レックナールを知ってるか?」
「そりゃぁ、知っていますよ。商館の初代館長ですから。私は直接はお会いしたことはありませんが、賢く、それでいてかなりの高齢であるにもかかわらず、非常に腕の立つ方だったようで、商館内外で起こる様々な揉め事を即時解決していたと聞いています。」
「ただ、先日急に行方知れずになったとのことで、旅に出る際に、受付のジルさんにどこかで会ったら『必ず』教えてくださいと言われましたよ。私は顔も知らないので、探しようがありませんけどね。ははは。」
うわぁ。『必ず』が強調されているのが、怖いな…。
「そうか…、実はな、俺がフレイ=レックナールだ。」
「え?」
ルナは、俺と出会ってから今までの経緯について説明した。
「ジルにはいうなよ。」
「そんなことが…。ルナさんは実はお爺ちゃんだったんですね!」
「あ、あと、ザン=フィールドの弟子と昨日言っていましたが、ルナさんはザンの弟子だったのですか?」
「んーー。実は俺はザン=フィールドでもあるんだ。」
「ええ!?」「ええ!?」
俺も驚いた。
「ミズキ、お前には言っただろ…。」と呆れられた。
そんなこと言ってたっけか…。
言ってたかもしれない。冗談かな?とか思って聞き流した気がする。
ていうか、ザン=フィールドって、かなり有名人だったような…。
「俺は、二十歳の時にとある事情で名を捨ててな。それ以来フレイ=レックナールを名乗ってた。このことは一部の者を除いて誰も知らん。その後、まあ色々あって、リダの街で商館を立ち上げたのが、二十五くらいの時だったかな。」
「昨日弟子を名乗ったのは、ちょっとばかし過去の清算がしたくてな。それに、『ザン=フィールドの弟子』として名が売れれば、昔の仲間とも接触できるかもしれないしな。」
「そ、そうですか…。背中の黒剣について聞いても?」
「そうだ。俺もそれについて聞きたかった。昨日狙われる原因となった雁字搦めのこの馬鹿でかい剣。それは一体何なんだ?」
俺も、ルナに尋ねた。
「これは、俺の愛剣だ。ガキの頃に拾ったんだが、ちょっと力が強すぎるんで封印してる。」
「シャドは昔からこの剣を欲しがっててな。俺の手から離れたと思って奪いに来たんだろう。」
「あいつは、これがどこにあるか、わかるらしいからな。」
はぁ~~。とドリーはあっけに取られている様子だった。
「えーっと、つまり、ルナさんは、元フレイ館長で、フレイ館長も偽名で、実はザン=フィールドってことでいいんでしょうか?」
「おお、理解が早いな。そういうことだ。」
「いやぁ、凄い話を聞いてしまいましたね。ザン=フィールドが生きていたなんて…。今から約五十年前に突如姿を消した伝説の剣豪が、今はこんな麗しい姿で生きているなんて、世に知れたら大ニュースですよ!」
「まぁ、誰も信じんさ。」
「私は信じますよ!昨日のあの強さは、尋常じゃなかったですから。伝説の剣豪ということなら納得です。いやぁ凄いですね。目ん玉飛び出ましたよ。その若さで、その強さ。キリン児ってやつですね!ふふ、ふふふ。」
ドリーは、相変わらずだ。
「ルナのその剣は、盗賊王に狙われるようなものなのか?」
「ミズキは知らないと思うが、この世界には神の遺品と言われる物がいくつかあってな。この剣はその一つと言われている。元々は金色だったが、神が死んだ途端、今のように真っ黒に染まったって話だ。」
神の遺品か…。聖遺物のようなものだろうか。
ドリーの方をチラッと見たが、もう驚くことに疲れたって顔をしている。
うーん、「ザン=フィールド」、「盗賊王」、「神の遺品」。
どれもよくわかんなかったので、簡単に教えてほしいとドリーに聞いてみたら、色々教えてくれた。
私も伝記や本等を読んだだけなので、詳しくは知りませんが、と前置きをしてドリーは話し始めた。
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【ザン=フィールド】
ご本人の前でお話しするのは、大変恐縮なのですが、非常に有名な話だけ掻い摘んで話しますと……。
驚くべきことに、彼はこれだけ有名であるにもかかわらず、彼が登場するのは、今から60年前から50年前までのたった10年間ということです。
年齢にして、10歳から20歳。このたった10年の間で、彼は『伝説の剣豪』と呼ばれるようになります。
まず、彼はわずか10歳の時にS級冒険者になっています。しかも、一年足らずという異例の早さでです。最年少で最速でS級冒険者となったことで世界中に名が広まることとなります。
これは、魔界に一番近いと言われる竜の巣で、火竜数十匹を一人で倒したという功績が高く評価されたためと言われています。ちなみに、火竜一匹退治するのに、普通はA級冒険者が五人は必要と言われています。
次に彼の名が、出てきたのはその二年後の武道大会です。世界中から武芸者が集まるその大会の前優勝者である戦神「ガンズ=スターツ」を素手で打ち倒してしまったこと。
それ以来、『神を超えた男』と呼ばれるようになります。
そして、最も有名なのが、魔王クラリスとの戦いでしょう。
戦いの理由や結果は謎に包まれていますが、ザン=フィールドは漆黒の大剣で魔王と互角に戦い、その戦いの衝撃で、魔界の三分の一が消失。さらに残りの三分の二は、ザンの一撃により二つに切り裂かれたとされています。
その後は消息不明、以後『伝説の剣豪』と呼ばれる。といったところですね。
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【盗賊王スール=シャド】
彼も相当の有名人ですね。
彼は、盗賊団を作る前は、「死神殺しの少年」と呼ばれていました。
生後間もなく砂漠で捨てられ、その際に自分の命を奪いに来た死神を殺したことで、以後死ねない体になったと言われています。
彼は、殺した死神から鎌を奪い、砂漠の街で殺戮を繰り返していたことから、その街はいつしか『殺戮街』と呼ばれるようになります。
そんな死なない男が作った盗賊団が『黒影』です。
ただ、副長が加入してからは、人を殺すことは極端に少なくなり、義賊のようなこともやっているとか…。
そして、この副長もまた有名なのですが、長くなりますので、またの機会にしましょう。
また、冒険家『クロス=マーシャル』の著書にはこう記されています。
満月の夜に必ず現れる伝説の盗賊団『黒影』
五大貴族の没落、孤児院の独立、三大戦争の鎮圧、その全てに大きくかかわっており、彼の率いる盗賊団は、千ある盗賊団の頂点に立つと言われている、と。
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【神の遺品】
今から約百年前に、世界で最も偉大な神「ミスティア」が死に、彼の遺品が世界中に散らばったと言われています。
そして、ちょうどその時を境に世界各地で様々な異変が起こっています。
過去と未来を行き来する島。願いを叶える流れ星が振る島。
人の心を持つ機械。特異な能力を持つ生命体。
大地を切り裂く剣。彼のペットの白竜。
等が地上に出現したと言われています。
また、神の遺品は、あまりに強大な力を持つため、神の意志を継ぐ者がそれらの遺品を集めて旅をしているとも言われています。
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「と、まあ、簡単に説明させていただくとそんなところですかね。」
「もちろん、ルナさんの方が色々とご存じとは思いますが…。」
なんか物語を聞かされたような気分だ。
うーん…。
俺は、物語の登場人物である生きる伝説の方を見ると、
クロスのネックレスの十字架の部分を指ではじいて遊んでいた。




