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特に何の違和感も持てない深森。……しかしちらりと横目で見た陽菜と言う少女は明らかに苛立ちを露にしていて反論やちょっかいは許されない形相だった。
震えている肩が露骨に怒りを表している。逢ったばかりで少女のことを露ほどしか知らない深森ではあるが、常に欠点を取り続け、教師のお怒りに触れてきた彼女には怒鳴る手前くらいは察することが出来る。ぎくりと冷や汗が額に滲んだ。
腰を降ろしていたことで皺になってしまっていた制服を正す。アイロンなんて学期のはじめと終わりにしかかけない、甘やかされた制服がそんなことで襟元を正すわけがなかったが、とりあえず気持ち的になんとなく違う。……あくまでも『何となく』であるけれど。
正しながらしゅばっと立ち姿を改めた。逃げる準備は万端である。幸い手荷物も何もない。
ざぁっとローファーを土に滑らせ、冬空気に土煙僅か漂わせ、びっと傾いた敬礼をしてみせた。陽菜から離れようと外側を向いている肩は既に逃げている。
「ほほぉ。それは大変なご様子……。あたしは邪魔したくはありませぬのでこれにて失敬っ!いやあ、ごめんよごめんよ~」
うひょー……と内に情けない悲鳴を発して深森は敬礼を手刀に変えて足を高くあげた。スカートの中が見えるか見えないかの瀬戸際まで。
女子力の低い彼女だから出来る技である。




