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「っあのちびっこ竜王っ!また他所さまのお宅で暴れてるわっ!」
深森が幻聴にも近い、霞のような声音に顔を上げたのと同時、陽菜は陽菜の事情で空を強く仰いだ。
かぁっ、と鋭い日照りを思わせる揺れない怒りを空に注ぐ陽菜にも驚いたが、それよりも深森の中にぽつんと残ったのは霞の声。
切に切に。すがるような声音がしんと胸の中に降ってきて、それは深森の心の中に、確実に居場所を得た。
言葉にするのはとてもとても難しい出来事なのだけど、これは大きな雪のようなもの。
溶けてしまうまで、決してなくなりはしない。深森は苦いもの口に含んだような心地の悪さが胸奥で深く広がっているのがわかった。
経験上、わかる。これは根から取らないとどうしようもならない。
これらに関連付けてしまっているから、深森は冬が嫌いだ。溶かすまでいなくなってはくれないから。
払拭しなければならない。少なくとも目の前の少女には悟られないように。大丈夫。できる。
深森は己に強く強く命じた。
肩から消えた重みはないから立ち上がることが出来るようになる。ふくらはぎにぴん、と力を張って、膝に手を乗せ深森は屈みながら除きこむ形になる。
逆さまの柱が悠々と……しかしどこか他を寄らせぬ殺風景な外観を思わせるそれを日照りのように強く見据える陽菜。
まるで何かを待っているようであり……いや、待っているのだろう。陽菜は微動だにせず瞳を注いでいた。
話しかけることに何となく引け目を感じる……と言うか迂闊に話しかけたら火の粉が飛んできそうで(劣等生の優秀な直観)深森は陽菜の視線を倣い、柱の建つ空を仰いだ。




