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第41話 お姉ちゃんは、感情的

「ぐるぐるって、要は混乱してるってこと?」

 自分の思いも整理が付いていないのだから、概ね間違ってない気はするけど。

「そうね、でも友達として言うなら、とりあえず混乱していてでも先輩に思うがままに話をしたら?……って思う」

「でも……。話したら例えば……」


 夜空の下、波の音が聞こえる。

 誰もいないビーチは1歩進むだけで互いのその足音がサク、サクとよく聞こえる。

「それで、なんの用だい?」

 少し先を行く多賀先輩が歩みを止めたのが、合図のようで。

「あの、先輩、私……!」

 私は意を決して思いのままを告げ——。

「ああ川田さん。前も言ったけど君とはまだ付き合えないよ」

 そ、そんなあああ!?

 

 ——だめじゃない!

 ああ、そうよ……。

「だめだよ、多賀先輩は私が誠実じゃ無いからって付き合えないって言っていたわ」

「理香が誠実じゃ無い……?そうかなあ」

 咲恵が否定してくれるけど原因を私は知っているし、なんなら原因の切っ掛けは目の前にいるし。

「ほら、綾ちゃんと付き合うってなってた頃あったでしょ……、あれの理由がね」

「だったらもう一度私と付き合えばいいのでは?」

「いや、それで誠実さを維持したらもうずっと綾ちゃんと一緒じゃない!?」

 それじゃ何の意味も無いよ?

「……それでいいじゃないですか、私じゃ駄目ですか?」

 う~ん。完全に駄目って言えないのよね……。だって綾ちゃん可愛いから。

「駄目じゃないけど駄目というか、……駄目じゃないのが駄目」

 そんなこと思ってるから自分の思いが定まらないのかなって。

 そうよ、好きって言わった2人と居るとさらに揺れてしまう。揺れる前に、先輩がどう思ってるかは置いて、とりあえず私から言いに行こう。

 ……先輩の想い?

 そういえば。

「多賀先輩、保留って言ってるらしい、私のこと」

「え?らしいってどういうこと理香」

 私は先輩のお母さんから聞いた話を説明した。

「……保留ですかあ。それなら今言ってもそのまま返されちゃうかもしれませんね。やめときましょ、理香先輩」

 そうとも考えられるか……。

「まあ、ごめんなさいされるよりマシだと思うけど、面と向かって保留なんて言われたら、どこまで待てばいいのよ!ってなるよね。だったら私にしない?」

 もう!

「二人して私の心をかき乱さないでよ!もういい、行ってくる!」

「えっ!?」

 いきなりの決断に綾ちゃんが驚きの声を上げた。

「行ってくるって理香、副会長がどこに居るか知ってるの!?」

 見つかるまで、探すのよ。


 とりあえずこの旅行に参加している人の全ての部屋を回る。

 どこかの部屋にいるかもしれない。

 一部屋目、二部屋目、三部屋目……。

 誰も居なかったり、居ても先輩は居なかったり。

 途中で関係ない部屋を訪ねて怒られちゃったり……。

 そしてついに最後の部屋、理久達の部屋……。いやあ、ここには居ない気がするんだけど。

 この短時間の間に何度も聞いた『ブー』という呼び鈴を押す。

「はい?」

 理久の声とともに扉が空いた。

「ねえ!多賀先輩居る?どこに居るか知らない!?」

「お姉ちゃん、私に聞いても分かるわけないでしょ?」

 無理矢理荒っぽい言葉を使っていたのから、元の口調に戻っていて安心する。

 いや、今そんなのはどうでもいいわ。

「そっか。佐々木さんは?」

「今シャワー浴びてるけど……」

 ……シャワー?夕方に?

「理久……?もしかしてあなたまだ……」

「ち、違う!ヤってないよ!?単に外出て熱いからってシャワー浴びてるだけらしいから。……お姉ちゃんの方がやらしいんじゃないの?」

 絶対そんなこと無いわよ、昨日までの理久見てたら私がそう思っても仕方ないでしょ。

「それに、もう付き合ってないから。……佐々木先輩は諦めてないみたいだけど」

「えっ!そうなの?……まあ今後は、流されないようにね」

 はあ、それにしても全部回って空振りならどこ探しに行こうかなあ。

「ねえお姉ちゃん、もしかしてこうやってあちこち探し回ってる?」

「そうだけど。もう全部の部屋回ったから、次はどうしようかなって思ってるの」

 そう言うと、理久は大きくため息をついた。

 ……なによ。

「あのさあ、お姉ちゃんって連絡先貰ってなかった?多賀先輩の」

「あっ!?」

 そうよ!メッセージ送るなり、通話掛けるなりすればよかったじゃない!

 私は慌ててスマホを取り出し、メッセージアプリを開いた。

「そういうところ見ると、お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんになってるんだなって」

「どういうこと?」

 理久の言葉に手が止まる。

「お兄ちゃんだった頃なら、そんな考えにはすぐに至ってたし、何にしてももっと論理的で具体的だったよ。でも今はなんていうか感情にまかせて動いてる感じ」

「そうかな……」

「そうだよ。世のお姉ちゃんがみんなそうって訳じゃないとおもうけど、少なくともお姉ちゃんはそう変わってると思うよ」

 そう言われた私がまだ納得出来ず考え込んでいると、理久が『感情豊かなお姉ちゃんも、悪いことじゃないと思うよ』と付け加えてくれた。

 私自身はここ最近、その感情とやらにずっと振り回されているのだろうなと思ったので、むしろ冷静さも欲しいと思った。

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